JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「スポーツとデータ」



アメリカの野球ではデータが重要視されているという話を聞いたことがあります。例えば、「バレルゾーン」と言われる野球の指標がアメリカで生まれました。バレルゾーンとは、大きなヒットになりやすい、打球速度(バットに当てた後のボールの初速)と打球の角度の範囲のことです。これは、球場に導入されているカメラやレーダーから取得したデータを解析することで求められました。この指標によって、日本の選手のプレースタイルも打球角度を意識した変化があったともいわれています。

野球に限らず、サッカーでも、我々がテレビ中継のハーフタイムで見るような「シュート数」「ボール支配率」はもちろんのこと、審判がゴールに入ったか入っていないかを決めるための補助として磁場センサーやカメラを活用している試合もあり、データの利活用が進んでいます。

スタジアムで取得されるデータは様々なものがありますが、一番データ量が大きいのは映像データでしょう。サッカーの場合、1チーム年間34試合を行うJ1リーグでは、1つのテレビ中継に9台のカメラが稼働しているそうです。映像のデータサイズは圧縮方式やビットレートによって異なりますが、仮に4K映像 H.265/HEVCでビットレートが35 Mbpsだとすると、年間34試合×9台のカメラ×90分×35 Mbps(4K映像) = 約7.2 TBにもなります。テラバイトと聞くととても大きなデータ量に聞こえるが、LTO-8には非圧縮でも1巻に12TB保存できるので、1チーム1年分の4K映像がLTO-8の1巻に充分収まる計算になります。

では、なぜ今のテープストレージは大量のデータを格納できるのでしょうか?面記録密度(データを記録できる細かさ)が細かくなってきているということはご存知かもしれませんが、もう一点の重要なポイントとしてテープの薄さが関連しています。テープは軸に巻かれてカートリッジに収納されていますが、薄ければ薄いほど長いテープを巻くことができるというわけです。この薄さも昔のテープと比べて進化してきました。テープカートリッジの中身を展示会等で見ることができますので、お見かけの際はその薄さにご注目してみてください。

スポーツに限らず、企業の意思決定にとって、AI(人工知能)やBI(ビジネス・インテリジェンス)などの分析の手段が進んできている今だから、戦略的にデータを格納することは企業の意思決定にとっても益々重要になっていくでしょう。JEITAテープストレージ専門委員会では、デジタル情報をいかに安全に後世に語り継ぐためにテープストレージがどのように貢献できるかということを考え、情報発信していく活動を行っています。本委員会のホームページではテープストレージのアーカイブに関する技術資料を公開していますので、是非ご覧になってください。

富士通株式会社 部谷 直大

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292
本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。

 

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