JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「平成から令和に。記録メディアはどこまで進化するのか」



いよいよ令和の時代が始まりました。
平成の時代は技術的進歩が加速度的に発展し、我々社会活動は大きく変化しました。今回は、記録メディアを主体に平成時代を振り返ってみたいと思います。

平成が始まった年(西暦1989年)、日本はバブル絶頂期で華々しい時代でした。
この頃、室内で視聴するのが当たり前だった音楽を、ラジカセや携帯音楽プレイヤーにより街に持ち出し「いつでも好きなときに視聴へ」と利用シーンは大きく変化しました。
この時代、音楽はコンパクトディスク(CD)またはカセットテープ、携帯型となるとプレイヤーの大きさからカセットテープが主流だったと思います。
映像はというと、VHSやBeta規格のビデオデッキ、8mmやVHS-Cハンディ型ビデオカメラなど、テープ製品がコンシュマー市場で普通に使われている時代でした。

それからわずか30年、音楽を聞くため・映像を撮るため/見るための記録メディアのほとんどは半導体メモリに置き換わり、また近年ではインターネット配信やクラウドと、ある意味メモリレスに変化してきています。平成が始まった時代に主流だったテープを使った記録メディアは、コンシュマーの世界で目にすることはほとんどなくなっています。

コンピュータシステムの世界ではどうでしょう。
企業や教育機関でパソコンの導入が本格的に進んでいた頃です。当時パソコンの記録メディアといえばフロッピーディスク(FD)、円盤状の薄い5インチ型からプラスチックケースに入った小型の3.5インチ型が主流になっていった頃です。このときの記録容量は1.44メガバイト/枚。
現在では当たり前のハードディスクドライブ(HDD)も当時は非常に高価で容量も数十メガバイト/台の時代でした。
光メディアのCD-ROMがパソコンに搭載されたのもこの頃。記憶容量は650メガバイト/枚、当時では大容量でした。
マシン室に設置されている計算機システムでは1/2インチオープンリール型のテープ装置やケースに格納された1/2インチカートリッジテープ(CMT)が主に利用されている時代。当時のテープメディアの記憶容量は約200メガバイト/巻の時代です。
それから30年、FDは半導体メモリのUSBメモリに置き変えられました。
HDDは容量増加、低価格化が進み主力ストレージメディアとなっています。記憶容量は14テラバイト/台を実現しHAMRやMAMRと言ったアシスト技術で16テラバイト/台の製品化も目前です。
そんなHDDに対して近年目覚ましいのはやはり半導体メモリを利用した平成生まれのソリッドステートドライブ(SSD)。高速の特徴に加え、大容量・低価格化が進み一部HDDを置き換える存在となり注目されています。
光メディアはCDからDVD、BDと進化をし、近年ではアーカイバルディスク(AD)と進化し300ギガバイト/枚を実現しています。
コンシュマーの世界ではすっかり見なくなったテープですが、コンピュータシステムの中ではまだまだ現役で技術進化も続いています。昨年製品化されたTS1160では20テラバイト/巻を実現しました。 なんと平成の間にメガ、ギガ、テラと10万倍の進化を実現しました。

新しく始まった令和の時代。
5Gや光インターネットなど高速通信網が整備され、そこを流れるデータ量も加速度的に増えデータ自体の価値も高まり、データ主導社会が足音を立てて近づいてきています。そのデータ増加に耐えうる記録メディアの大容量化は重要です。
HDDは2023年頃に40テラバイト/台の製品を実現する見込みとのこと。半導体メモリも大容量、低価格化が進んでいます。ADは1テラバイト/枚のロードマップが公表されています。
テープもLTOで192テラバイト/巻がロードマップとして公表されており、研究の世界では2015年に220テラバイト/巻、2017年には330テラバイト/巻の実証検証を、また400テラバイト/巻を可能にする新磁性体(SrFe)の開発にも成功しています。

大容量化という点では、テープが一歩リードしている状況ですが、今後しばらくは各記録メディアの特徴を活かしつつ棲み分けながらそれぞれが進化していきそうです。

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会

http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292

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