JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「テープオートメーション」



磁気テープ装置の歴史から顧みると、磁気テープ装置が初めて登場したとき、アプリケーションが使用するデータが入ったオープンリールテープ(直径・約30cm、厚さ・約3cm)をオペレーターが収納棚から探してきて、ケースから出してテープ装置にセットしていました。やがて、自動ローディング機構が開発されケースに入ったままセットすることができるようになりましたが、棚から人力で運んでくるのは変わりませんでした。1984年にシングルリールのカートリッジ型テープ (以下カートリッジテープ)が登場すると、大きさは縦・約13cm、横・約11cm、厚さ・約2.5㎝と小さくなったことで利用の仕方が変わり、あらかじめ使用する複数のカートリッジテープをテープ装置に積み上げておくと、下から順に自動的に処理していくオートローダが登場しました。
オープンリールテープに比べ取り扱いが簡単になったカートリッジテープの登場により、さらなる自動化が進みました。テープの取り扱いをオートメーション化したテープライブラリ装置の誕生です。テープライブラリ装置は、主にカートリッジテープを収納する棚、データを読み書きするテープ装置(テープドライブ)、カートリッジテープを搬送するロボット機構/コントローラで構成されています。ライブラリ装置はロボット機能に内蔵したCCDやバーコードリーダで、棚に収納しているカートリッジテープに貼付されたバーコードラベルを識別します。アプリケーションは、このバーコードラベルで媒体を管理し、指定したカートリッジテープをテープドライブにセットします。このテープライブラリ装置の登場により、通常のテープオペレーションは無人で運用することが可能になりました。

テープライブラリ装置の登場からしばらくの間は大規模化が進み、1台の装置で4万8千巻超のカートリッジテープを収納し、全長が30m超の装置も登場します。この種の大型テープライブラリ装置は放送局のアーカイブ用途やデータセンターのバックアップ/アーカイブ用途などで今でも利用されています。しかし、一般的なテープライブラリ装置は、テープ規格の大容量化により小型化していきました。今から20年以上前の1995年の4万8千巻超のテープライブラリ装置の総容量は116TBでしたが、今ではLTO 8テープ10巻に収まります。

LTO規格が登場した2000年代には「論理ライブラリ」という機能が登場しました。これは、1台のテープライブラリ装置を論理的に分割する機能です。異なるOS間(メインフレームとOpen System、WindowsとLinux等)や異なるソフトウェア間でテープライブラリ装置を共用できます。例えばカートリッジテープ100巻4ドライブのライブラリ装置を、カートリッジテープ50巻2ドライブの装置2台に分割して、それぞれを別のサーバ/別のソフトウェアに接続して使うことができます。
この機能により、分散された個々のシステムを一台のライブラリに統合してバックアップすることができるようになり、低コストのバックアップ基盤としてテープライブラリ装置は地位を確立していきました。

2006年に登場したLTO 4以降のドライブには、暗号鍵をドライブに与えると自動的にデータを暗号化してテープに書き込む機能が標準実装されています。それまでは、サーバ内でソフトウェアにより暗号化したり、サーバとテープドライブの間に暗号化するアプライアンスを入れたりしてカートリッジテープ上のデータを暗号化していました。これらは、サーバのCPUやメモリなどのリソースを余分に消費したり、アプライアンスの導入費用が掛かったりして、なかなか普及するまでにはいきませんでした。また、データがドライブに来る前に暗号化されるため、ドライブのデータ圧縮機能が使えず、テープの大容量、転送性能を活かせることができませんでした。テープライブラリ装置の暗号鍵管理機能は、テープライブラリ装置で暗号鍵を生成/管理し、カートリッジテープがテープドライブにセットされたところで、暗号鍵をテープドライブに送付して暗号化を有効にします。このため、サーバのリソースやアプライアンスを使用することなくテープ上のデータを暗号化することができます。また、ドライブでデータを圧縮した後、暗号化するため、データの大容量化、転送性能にも影響を与えません。

これまで、テープライブラリ装置は主にデータをバックアップするために利用されてきましたが、今後のデータ利活用によるデータ量の増加やデータの長期保存の義務化、また環境問題への対応が重要となる中で、データをアーカイブするために、大容量で省電力型ストレージでもあるテープストレージへの期待が高まっています。
データの分析や編集など、高速処理が必要な場合には、SSDやディスクシステムを使用し、生のデータや分析結果など、アクセス頻度はほとんどないが、将来の再利用やコンプライアンス対応等で長期に保管したいデータはテープライブラリ装置に保管するなど、データを適材適所に保管するデータマネジメントが必要になってきます。
このようにテープ運用を自動化するテープオートメーションを組み合わせた低コストで大容量のアーカイブ基盤で爆発的なデータの増加時代に立ち向かいましょう。

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292

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