JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「長期保存用記録メディアのあれこれ」



現在、我々が記録メディアとして認識している媒体は、マイクロフィルム、磁気テープ、光ディスク、磁気ディスク、SSD、USBメモリなどですが、最近では、ユーザーから見ればクラウドも記録メディアとの認識でしょうか。
この中で長期保存用記録メディアとしては、文書・図面保存用のマイクロフィルム、画像・映像アーカイブ用の光ディスク(BD/DVD)、ビッグデータや画像・映像アーカイブ用の磁気テープに絞られてきているのではないかと思います。 以下、主な記録メディアの状況について考えてみます。

■マイクロフィルム
長期保存用の記録メディアとしてのマイクロフィルムは、省スペース化、改竄が困難で法的証拠能力がある、期待寿命が100年から500年と長期保存に適している等により、多くの企業や団体が使用してきました。しかし近年では、文書・画像管理システムの普及やe-文書法の施行などによりデジタル化が進み、長期保存用記録メディアとしてマイクロフィルムが用いられることは減少しておりますが、図面や公文書・古文書等の重要な情報を安定的に保存する手段として一定の需要を保っていると思われます。
マイクロフィルムの期待寿命は約500年、将来マイクロフィルムリーダーが全く手に入らなくなっても、拡大すればそのまま読み取れるという見読性の維持が期待されており、長期保存に優れている記録メディアといわれております。
現在、マイクロフィルムのリーダーやスキャナを入手することは可能ですが、マイクロフィルムライターは製造されなくなってきており、今後は、新しいデータをマイクロフィルムに記録することは困難になっていくと思われます。
これから先のマイクロフィルムは、記録されているデータを全てスキャンし、電子データとして記録メディアに移行する方法か、記録されている情報をマイクロフィルムのままで保管し続けるという方法の選択肢になるかと思います。

■光ディスク(CD/DVD/BD)
光ディスクが登場してから30数年、音楽や映像用の記録メディアとして、取扱いの便利さ、大量生産の容易さ、製造コストの安さなどで、従来の媒体を置き換える形で普及してきました。
 一般的に使用されているCD/DVD/BDは、下位互換性があり、ディスク自体の寿命も長いのが特長と言われておりますが、長期保存用記録メディアとして使用する場合、JIS Z6017 2013年版「電子化文書の長期保存方法」では、初期の書き込み品質の確保と、検査周期5年を目安にした定期的な品質検査が必要とされております。最近ではドライブメーカーや光ディスクメーカーから、長期保存用としての品質が確認されているドライブと長期保存・アーカイブ用光ディスクを使用することが推奨されております。

■磁気テープ(AIT、DAT、DLT)
ドライブ、記録メディアとも製造が終了し、一部の記録メディアはまだ販売されているものの市場での入手が困難な状態となってきております。なんとかドライブが入手できてもコンピュータとのインタフェースの違いや、OSで認識させるためのドライバーソフトウェアが新しいOSでは採用されていない恐れもあります。一部のベンダーがメディアマイグレーションサービスを提供しておりますが、サービスが終了する前にできるだけ早い時期にマイグレーションすることをお薦めします。

■磁気テープ(CMT、OMT)
メインフレームのデータストレージとして一世を風靡した感があります。メインフレームユーザーではまだまだ現役で使用されているところもあり保管数量も大量にあります。メインフレームメーカーによりいろいろな記録手法、媒体フォーマット、文字コードがあるため、メディアマイグレーションができても情報を利活用するためには文字コード変換が必要となる場合があります。一部のベンダーにより専用のドライブとデータ変換ソフトウェアを使用し、文字コード変換を含むマイグレーションサービスを提供しているところもありますが、記録メディアの寿命や既存システムの延命期間などを考慮して、マイグレーション時期を検討することが必要になると思います。

■磁気テープ(LTO、エンタープライズテープ)
世の中のデータ量が爆発的に増加しており、大容量のバックアップやアーカイブ用途としての需要が高まっています。これまでは義務的なデータアーカイブやリスク対応が主な目的でしたが、将来の新たなビジネスに繋げる利活用を目的として、安価で長期保管が可能な記録メディアの一つと注目されております。
将来的な性能向上と製品発売に関するロードマップが公表されており、もっともビットコストが安く、エラーが少なく信頼性が高い可換媒体、保存に電力を必要としないグリーン媒体である等のメリットがあります。2018年1月にJIS Z 6019「磁気テープによるデジタル情報の長期保存方法」としてJIS化され、重要な情報を長期保存するための方法として明確化されました。
これにより、定期的なマイグレーションによって、複数の旧媒体を新しい世代の媒体1巻にまとめることができるため、保管管理の費用も圧縮することができます。最近ではライブラリシステムを使用し、基幹業務の空き時間を活用した自動マイグレーションソフトウェアやLTO単体装置によりオフラインでマイグレーションができるソフトもあり、マイグレーションの工数も減ってきています。


<まとめ>
デジタル情報を長期間保存する場合の記録メディアの選択や継続的な運用方法とコストに対する正解は、どなたも持っておられないのが現状ではないかと思います。
長期保存用記録メディアの選択は、容量と保存期間、用途、リスク回避の観点から、それぞれの記録メディアの特長を活かした選択をすることですが、異なる種類の記録メディアへアーカイブするハイブリッドアーカイブも選択肢の一つではないでしょうか。

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最後に「保管していた光ディスクや磁気テープ、フィルムなどもカビにやられてしまうことがある」件ですが、長期保存の大敵は、「物理的な損傷」、「温度、湿度、紫外線等による化学的な変化」、「カビや腐食による損傷」等です。記録メディアが物理的に損傷したままやゴミやカビが付着したまま読み取らせますと、読取装置のヘッドや駆動機構部の故障に繋がりますので長期保存する記録メディアは、それぞれの性質に合った適切な環境で保管管理しましょう。

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会

http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292

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