JEITAテープストレージ専門委員会コラム「Information Storage Industry Consortium (INSIC)」

 

今回はINSICについて説明します。
INSICの正式名は"Information Storage Industry Consortium"であり、急速に拡大を続けるディジタル情報を保管する将来システム(HDD、光ディスク及び磁気テープシステム)開発に必要な要素技術研究を産学協同で行なっている団体です。メンバーは米国を中心にした団体で構成されていますが、日本国内のストレージに関わる団体・企業も多く参加しています。現在はWWに籍を置く18社の企業及び50以上の大学、ユーザー及び研究機関等で構成されています。

 

磁気テープシステム分野に関して言えば、テープシステム、メディア、ドライブに関わる会社や研究団体が、3年毎に10年先までの将来テープ技術のロードマップを策定し、そのロードマップを達成すべく必要な要素研究テーマ(媒体ノイズ研究、新ベースフイルム研究、ヘッド研究、ドライブ内のテープ挙動研究等)を協議し研究課題を決定しています。研究課題は研究委託先である大学や研究機関に資金を提供し、その成果物を資金を提供した企業間で分かち合うシステムになっており、現在も磁気テープ要素研究が活発に行なわれています。

 

これまでのINSICの活動とその成果はストレージ業界に対して多大な影響を及ぼしてきました。創造的な技術ロードマップや研究戦略は業界全体の指標となり業界の発展を促がしてきました。また、技術間のコラボレーション、大学と企業のコラボレーションを実現することで技術の発展を加速する役割も担っています。

 

2010年11月4~5日の二日間、INSICによる Tape Technology Forumが東京・富士フイルム本社で開催されました。普段は米国を中心に行なわれるINSIC研究活動の報告会ですが、少しでも多くの日本の企業及び大学に在籍する研究者も議論に参加できるように、数年前から一年半に一度の割合で報告の場を日本に移しての開催となっています。今回も世界各国から120名を超える多くの技術者、研究者の方々が参加されました。報告内容はテープドライブやメカニクス、先進的なコード&チャネル技術、ヘッド・メディアインターフェイス、テープメディア、HDD技術に加えて、ユーザーや市場の将来展望と計20件に及び、活発な議論が展開されました。この二日間はストレージ技術に関心を寄せる人たちが一堂に会して共に技術を磨き、情報を交換し、ネットワークを作り、研究開発を進める実りのある機会になりました。

 

残念なことに現在は、世界的な景気後退やHDDの攻勢によりテープ・ストレージ業界は厳しい状況に追い込まれています。この状況を打破し明るい未来を描く上でINSICの役割は今まで以上に重要なものなるものと期待しています。

 



以上

 (社)電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会