情報処理用磁気テープ及びテープ走行機構の生い立ち

 磁気テープは、1948年に情報処理用外部記憶装置(デジタル記録)に用いられるようになってから今日に至るまで最も長い歴史のある記憶装置です。

情報処理用外部記憶装置に磁気テープを最初に用いたのは、1948年にユニバック(UNIVAC)のユニサーボ(UNISERVO )Ⅰ型でした。当時の磁気テープは、録音用に用いられていたものと同じプラスティックベース上に磁粉を塗布した1/2インチ(12.7mm)幅、最長1200フィート(360m)のテープを今日まで用いられていた直径10.5インチ(約27cm)のリールに巻かれていました。

 テープへの情報記録は、縦に7トラック、長さ方向に100 cpi(Character Per Inch)の密度で、今日と同じく数千キャラクターのブロック単位で情報の記録をし、ブロックとブロックの間に数mmの空白領域(Inter Block Gap, IBG)を設けていました。

 この機種のテープ走行は、正方向走行用キャプスタンと逆方向走行用キャプスタンを持つピンチローラ方式が用いられていました。

 磁気テープ装置では、ブロックごとにテープの起動・停止をする必要がありますが、磁気テープへのデータ記録再生には、リード/ライト(R/W)ヘッドがブロックとブロックの間の非常に短い空間に停止する必要があり、慣性の小さいキャップスタンと慣性の大きなリールとの差によってテープに無理な力がかからないように緩衝機構が用いられています。初期の磁気テープ装置では記録密度やテープ走行速度が小さかったので、緩衝機構はテンションアーム方式が採用されていました。

 1955年に開発された第2世代の磁気テープ装置ユニサーボ ⅡA型は、記録密度が250 cpiでテープ走行速度も100 ips (Inch Per Second)に上昇されたことから、テープ走行系が最近までオープンリール形磁気テープ装置に採用されていた「シングルキャプスタン方式」、緩衝機構も「バキュウムループボックス方式」が採用されるようになりました。

 当時のテープのベース素材では、起動・停止のストレスによってテープが変形する障害が多発したことから1/2インチの燐青銅テープに「ニッケルめっき」を施した磁気テープが出現しました。このメタルテープの出現によってテープ変形によるトラブルは解消しましたが、重量が重くテープ交換を頻繁に行うオペレータには不評でした。また、R/Wヘッド磨耗が激しいための対策としてR/Wヘッドとテープの間にアルミ箔テープを設けてR/Wヘッド磨耗を防いでいました。やがて磁気テープのベース素材にポリエステルテレフサレートが採用されるようになり起動・停止ストレスに耐えられるようになり、かつ、テープの厚さも薄くなったことからリールに巻かれるテープ長も2400フィート(720m)となりメタルテープは使われなくなりました。

 その後、磁気テープは、各社から様々な記録方式、記録密度が開発されたことから使用者の利便性を図る目的で1968年に情報処理部門の国際標準化機構であるISO/TC97/SC4に磁気テープの標準化作業部会のWGが設けられ磁気テープに関する標準化が検討されだしました。(磁気テープ部門は1972年にSC4/WGからSC11に独立した。)

 SC11委員会では、IBM社が開発した記録密度200cpi NRZ1記録方式を標準化することが決議され国際標準化されました。続いて9トラック800cpi NRZ1記録方式、1600cpi PE記録方式、6250cpi GCR記録方式を標準化してきました。また、情報処理用磁気テープは、長い間使用されてきたオープンリール方式から小型高密度化された各種カートリッジテープへと移り変わり、今日普及されつつあるLTOテープへと発展してきました。

 

 



<つづく>

(社)電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
大石 完一