JEITAテープストレージ専門委員会コラム「デジタル・アーカイブを推進するデジタル・テープ技術」

 

一昔前のTV放送は、ビデオテープを再生したベースバンド信号をそのまま電波に乗せて、各家庭の受像機へ送出していました。しかし、21世紀に入り、映像・音声を機器間やシステム間でやりとりする際のデータの持ち方が規格化(MXF)され、ファイルベース化による作業の効率化、映像資産管理の容易さから、放送業界のワークフローがファイルベースに移行し始めています。また、カメラの収録環境のテープレス化、編集・フィニッシング環境のファイルベース化移行にともなって、ファイルベース化が加速する環境にあります。さらに、ビデオ資産のメインフォーマットであるD2ドライブの2015年保守終了を受け、放送業界では過去のビデオ資産のファイルシステム化も重要な課題となっています。

放送業界はビデオ資産のファイルベース化として、どのような媒体を検討しているのでしょうか?
少し前までは、テープレスがもてはやされ、HDDが主役として検討されていましたが、コスト、維持、管理費、信頼性などの観点から、現在ではデータ用テープ(LTOフォーマット)が有力候補として浮上してきています。
何故、LTOが検討されているのでしょうか?
放送業界向けアーカイブ媒体として求められる要件は、安い、早い、便利といったことが上げられます。
それでは、LTO 5は、この要件をどれほどミートしているか見ていきましょう。

安い
記憶容量も1.5TBと約2日分のHD放送のデータを記録することが出来、D5フォーマット比で1/4~1/6のコストで運用できるという試算結果も出ています。

速い
最新フォーマットであるLTO 5は、転送レートが140MB/s(1,120Mbps)とHD放送(32~64Mbps)の約20倍の高速でデータの転送を可能にします。この転送レートは、FC/SAS対応の最新HDDの最大転送速度には達していませんが、SATA/USBインターフェースのHDDの転送速度をはるかに凌いでいます。

便利
データ用記録メディアのため、フォーマットの制約はなく、HD/SD放送、グラフィックデータなど混在して記録できます。
LTO 5からは、ファイルシステム化が採用され、映像ファイルとの親和性も向上しています。

また、テープですので、保管時には電力は不要であり、管理費や環境にもやさしく、特に二酸化炭素排出量はHDDに比べて最大1/30に削減できるという試算結果もあります。
さらに、最近のテープでは、長期保管においてテープの巻き直しは不要であり、磁気転写の発生もありません。また、JEITAで実施した加速試験では、LTO 3の保管寿命は19年以上であることを確認していますので、長期保管を前提にした運用にも安心して対応できます。
将来性を考えたときも、LTOでは第8世代(LTO 8)までマイグレーションが発表されており、今後のデータの増加にも対応することが出来ると考えられています。

CEATEC資料は、近日中にJEITAテープストレージ専門委員会Webページの最新情報にアップします。
(URL: http://home.jeita.or.jp/is/committee/tech-std/std/com02.html)を参照下さい。



以上

(社)電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
イメーション株式会社 西田 博光