JEITAテープストレージ専門委員コラム
「2009年度委員会活動報告と今後の活動」

先日LTOの第8世代までのロードマップが公開されました。 なんと第8世代では1つのカートリッジで32TB(圧縮比2.5:1)ものデータが記録可能になることになります。また転送スピードは1180 MB/s(圧縮比2.5:1)にも達します。

以下は最新のLTOロードマップです。


(出典:http://www.ultrium.com/technology/roadmap.html

今回は、このように進化し続けるテープストレージ技術について、本委員会で2009年度に行ってきた活動内容を簡単に説明してみたいと思います。

さて、2009年度当委員会では大容量、低コスト、低消費電力、そして高信頼性な可般媒体であるテープストレージの特徴を生かした運用を前提として、以下のテーマで活動を行ってきました。

・長期デジタルデータ保存
・暗号化
・グリーンストレージ

それぞれのテーマについて以下活動内容と成果を説明していきたいと思います。

・長期デジタルデータ保存
1940年代に最初の実用デジタルコンピュータが登場して以来、増加の一途をたどるデジタルデータをいかに後世に正確に残せるかという大きな課題に対して、テープストレージ技術の見地から研究を行っています。
前年度は、データを永続的に保存するメディアの代替として、継続的なマイグレーションが現実的であることを前提とし、100件以上の論文、ウェブ公開文書等を調査し、データマイグレーションを長期的に実現するための必要要件の抽出を行いました。
今後は、その必要要件の議論を進めそれを定義し、その後論理フォーマットを策定します。最終的には論理フォーマット案を完成して、その案の標準化を目指します。
また今年設立された、電子記録マネージメントコンソーシアム(ERMC)に参加し、意見交換を行っていきます。

・暗号化
情報漏洩に対する危惧が高まる中、データ暗号化の要求はますます増加してきています。テープは、記憶容量、低コスト、パフォーマンス、可搬性といった側面から見ても暗号化に非常に適したテクノロジーと言えます。
前年度はテープを使った暗号化の必要性/優位性の整理を行い、ガイドライン作成の検討を行いました。 またIEEE、KMIPなど、国際標準化の動きも調査しました。
今後は暗号化に対する注意事項等をまとめてチェックリストを作成します。

・グリーンストレージ
国連の演説で、温室効果ガスを1990年比で2020年までに25%削減することを目指すと鳩山首相が表明した日本にとどまらず、世界中で進むCO2削減の流れはIT・ストレージ業界にも影響が及んでいます。一方データは増え続け、コンプライアンス等の要求から保存期間は長くなっている昨今、データの階層管理が重要度を増してきています。
前年度は、データの階層管理をする上で一部のデータをより省エネルギーなテープに保存することで、どれだけCO2排出量が削減できるかを試算しました。具体的にはデータ容量をディスクシステムとテープシステムに配分するシナリオを複数想定して全体のCO2排出量を計算しました。また、メールアーカイブ、監視カメラ映像、図書館電子データ、放送局映像の4つを運用サンプルとしてデータ量を計算し、上記の結果にプロットすることで、運用形態別のCO2排出量削減効果も確認できました。

2010年度は継続して「長期デジタルデータ保存」と「暗号化」を柱として活動し、またそれらの成果や、テープストレージに関する新しい情報を発信していきたいと思います。




(社)電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会 (※)
日本ヒューレット・パッカード(株) 井上 陽治
※:旧名称:磁気記録媒体標準化専門委員会