JEITA磁気記録媒体標準化専門委員会コラム 「磁気テープ用磁気ヘッドについて」

磁気ヘッドは、磁気テープと共に磁気テープドライブを構成する最も重要な部品です。その基本構造、基本動作や特徴について簡単に説明しましょう。

磁気ヘッドは小さな電磁石のようなものであり、磁性材料で構成されたコアと巻線から構成されています。(図を参照下さい)


 書き込み時:コアの先端部には非磁性の材料で隔てられた狭いギャップがあります。磁気ヘッドの巻線に電流を流しますと、コアに磁束が誘起されてギャップの内部に磁界(ギャップ磁界)が発生します。ギャップ磁界は磁気テープ表面にも漏れて伝わりますが、この漏洩磁界を用いて磁気テープにデータ(信号)を磁気的に書き込みます。

 読み取り時:磁気テープに書き込まれたデータ(信号)には、NとN、あるいはSとSなど磁化が向き合う領域(磁化遷移領域)があります。この領域からは磁気テープ表面に向けて急峻な磁束(表面磁束)が発生します。この領域に前述の磁気ヘッドが走行しながら近づいてきますと、表面磁束はコアに取り込まれ、その一部はコアの背部を回って巻線と鎖交します。この鎖交した磁束が再生電圧に変換されて、書き込まれたデータを読み取ります。
以上が磁気ヘッドの記録再生の基本動作です。

 現用の磁気テープドライブには機能の分離した3種類のヘッド(サーボヘッド、記録ヘッド、再生ヘッド)が搭載されています。

 サーボヘッドは、磁気テープに前もって記録された特殊なサーボパターンを読み取るために用いられるもので、いわゆる再生専用のヘッドです。読み取られたサーボ信号はサーボ制御回路に入力され、次に説明する記録、再生ヘッドを予め決めた位置に精密に位置決めします。

 記録ヘッドは、冒頭に述べたような書き込み動作に機能を特化した磁気ヘッドです。強い漏洩磁界を発生させるために、コア材料を酸化物のフェライトに替えて、特性のより優れたパーマロイ、センダストなどの金属薄膜材料が使われています。コアの製作にはスパッタリングなどの薄膜技術と精密なリソグラフィー技術が使われています。

 再生ヘッドは、読み取り動作に機能を特化した磁気ヘッドです。磁気テープに書き込まれたデータの記録面積を小さくして記憶容量を増してゆきますと表面磁束も小さくなり、取り出せる信号電圧はどんどん微弱になります。 そのためギャップの中に再生専用の磁気抵抗効果素子を形成したMRヘッド(Magneto Resistive Head)が用いられるようになりました。

 MRヘッドには異方性磁気抵抗効果を用いた AMRヘッドと、巨大磁気抵抗効果を用いたGMRヘッドがあります。いずれの再生素子も、厚さ数ナノメートル(1ナノメートル=10-9メートル)程度の極めて薄い薄膜材料を何層にも積層して作ります。

 これらの新技術の適用により磁気テープの大容量化が進みましたが、現在主流のAMRヘッドからGMRヘッドの採用により再生感度を更に上げることにより、更なる大容量化が約束されています。また、将来的にはハードディスク用のTMRヘッド等、更なる高感度ものを応用することにより、飛躍的な大容量化も期待されます。

 特にハードディスク用ヘッドと比較してテープ用ヘッドでは、最新のLTO3、LTO4ドライブを例に取ると、前述の3種類のヘッド群が一体モジュール化されており、モジュールの両端に配置された上下のサーボヘッドにより磁気テープ上の記録トラックを全長にわたり安定して追従可能です。また、対になった記録、再生ヘッドが16チャネル搭載されており、同時に記録、再生が可能であり高転送レートを実現しています。将来的には、更なる多チャネル化も計画されており、容量だけでなく転送レートについても確実な進展が約束されています。





(社)電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会

TDKテクノ(株) 佐藤 勇武