JEITA磁気記録媒体標準化専門委員会コラム 「デジタルデータの長期保存のために」

テープストレージは大容量でビット単価が低く、カートリッジを追加することで容量の拡張も容易であり、さらに保管時にはエネルギーを消費しないという、アーカイブ用途のストレージとして優れた特性を持っています。
テープメディアにデータを記録し適切に保管しておけば、10年後にデータを再使用することが可能です。では、100年後にはどうでしょうか?

 100年を超えるような長期に渡るデジタルデータの保存には大きくわけて二つの壁があります。最初の壁は、ストレージメディアに記録したビットの列をメディアから読み出すことです。メディアからビット列となったデータを読み出すためには、そのメディア用のドライブやドライブを使用できるOSやPCなどの環境が必要となります。それらのうちどれが欠けても、メディアからビット列を読み出すことはできないでしょう。

 もう一つの壁は、読み出したビット列を人間にわかるように解釈することです。よくある例が、昔のワープロ専用機で作成した文書データです。仮にデータを読み出すことに成功しても、そのデータから文書を作成することは、当時の専用機がなければ殆どできない相談です。人間が使うことができなければ、デジタルデータを保存する意味がありません。

 テープストレージの専門委員会である私たちは、前者、つまり、デジタルデータのビット列を長期にわたって読み出し可能とすることを活動対象範囲として捕らえています。 そのためには、ストレージメディアに記録されているデータを、新しいストレージメディアにコピー(データ移行:マイグレーション)する作業を、継続的に繰り返す手法が有効であると考え、昨年度(2008年)から、継続的マイグレーションによる長期保存を念頭においた活動を開始しました。

  すでに世の中では多くの長期保存に対する活動が行われています。中でも、国際標準のISO規格となる、OAIS(Open Archival Information System)参照モデル(ISO 14721:2003) は、数多くの長期保存システムから参照されています。OAISでは次のような事が定められています。

・情報を長期保存するためにはどのような機能を備えているべきか
 

情報を作る人や使う人など、使用者も含めたアーカイブシステム全体をカバーしています。

 
・保存する情報はどのような形でまとめられているべきか
 

情報が作られた理由・再生の方法など、長期保存ならではの項目を一緒にまとめておくことを求めています。


 「参照モデル」であるOAISはこのようなことを定義していますが、どうやって実現するかについては何も述べていません。 世の中にあるアーカイブシステムを評価したり比較したりする際の指標として使われたり、OAISをベースとした新しい関連標準が作られていくことなどを想定しているようです。

 OAISを参照している活動としては次のようなものがあげられます。

・CASPAR(Caltural, Artistic and Scientific knowledge for Preservation, Access and Retrieval)

 

EUで行われているOAISをベースとしたプロジェクト
 
・DSpace
 

BSDライセンスで利用可能なデジタル情報保存のソフトウェア
 
・DIAS(Digital Information Archiving System)
  オランダの図書館で使われているシステム

 一方、日本でも長期保存関連のJIS規格である「電子化文書の長期保存方法(JIS Z 6017:2006)」があります。これまでの紙文書やマイクロフィルム文書をスキャンし電子化した物を長期保存(10~30年)する方法を定めた規格です。特徴として、ストレージメディアのエラーレートを定期的に測定して、メディアが劣化してデータが読めなくなる前にコピーをする、などのルールを定めています。

 また、国立国会図書館はそのホームページで、電子情報の長期的な保存と利用についての、数々の研究成果を報告しています。ホームページに掲載されているリンク集は、この記事の中であげた物も含めて、世界中の様々な長期保存関連活動をリストアップしています。

 当分科会では、このような活動を参照しながら、「継続的マイグレーションによる長期データ保存」に注目し、マイグレーションのことを考えに入れた「長期保存フォーマット」の標準化を最終的なゴールとして定めています。そしてその活動を通して、より良いデジタルデータの長期保存システムの実現に貢献することを目指しています。






(社)電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会

日本アイ・ビー・エム(株) 板垣 浩