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活動内容
セルフ・カウンセリング学会会長
渡辺康麿

『人生の再発見』のために

 この学会の会長講演の主題として、私は『人生の再発見―人間形成の危機とその克服―』という題を選びました。なぜ、私が『人生』というような、古めかしい言葉を取りあげたい、と思ったかについて、お話ししたいと思います。そもそものきっかけは、昨年おこなった、ある講演会です。

実戦的カウンセリング

私に講演を依頼してきたのは、二十年以上の実績を持つという、ある講演サービス会社です。その会社では、いわゆる一流上場企業と契約して、それらの企業を相手に講演サービスをおこなっています。講演会の聴衆は、それらの企業の取締役や、部課長クラスの人たちです。

電話で依頼された題名は、『実践的カウンセリング』というものでした。その時、私は、いわゆる理論に関わる話ではなく、実践的な話が聞きたいのだな、と思いました。折しも、セルフ・カウンセリング学会で、昨年から、『セルフ・リクリエ−ション』という講座名で、会社員向けの通信講座も開設したばかりでした。ですから、私は、職場でのカウンセリングというテ−マに関心がありました。

 けれども、郵送されてきた依頼書をよく見ると、講演の題名は、『実践的』ではなく、『実戦的』カウンセリングだったのです。戦うカウンセリングです。これには、少なからず驚かされました。

 同封されていたパンフレットに紹介されている、講演の題目の一覧表を見て、さらに驚きました。そこには、『会社のなかで勝ち抜くには』とか、『人事部に好かれる法』といった題名が並んでいました。私の理念からは、およそかけ離れています。

私は、主催者に、『実戦的』という題名では講演はできない、と言いました。もし、この題名で話をしても、全然違うことを話すだろう、とも言いました。すると、主催者は、この題名なら人が集まるので変えたくない、そのかわり、話の内容は、題名と違っていても構わない、と言いました。私は、これにも、大いに驚かされました。なぜ、このような講演依頼がきたのか、不思議に思いました。

 主催者は正直な方で、講演者として私を選んだ理由は、講演料が安かったからだ、と教えてくれました。

 日本実業出版社から『セルフ・カウンセリングの方法』という本を出版したことが縁で、同じ出版社から出ている『有名講師・講演料600 人情報』という本に、講師の一人として、私の名前も紹介されています。後で調べてみると、確かに、私の講演料が一番安かったのです。普段、私に講演を依頼してくるのは、公民館などがほとんどですから、その枠で、講演料を設定していたからです。

 
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