JEITAテープストレージ専門委員会コラム

「磁気分野の国際学会INTERMAGのFactory Visit開催から感じたこと」

2023年5月に磁気分野での世界最高位の国際学会であるINTERMAGが18年ぶりに日本で開催されました。場所は宮城県仙台市です。世界各国から磁気関連の研究に携わる多くの参加者が集まりました。コロナも落ち着いてきたせいか、開催事務局によれば、参加者は1,500名近くにもなり、大変盛り上がったようです。

このINTERMAGの活動の一環として、Factory Visitというイベントがあります。これは、主にINTERMAGに訪れた学生を対象として、磁気に関連する工場などの見学を行う企画です。今回は仙台近郊にある電機メーカーの事業所が対象となりました。この事業所には半世紀以上続く磁気テープ開発・製造拠点があり、学生が先端技術に触れる機会が得られることが選定の理由となったようです。

工場見学には予定人員を超える応募がありFactory Visit企画の上限数いっぱいの学生が参加していました。これら学生は、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、のべ15か国から集まったメンバー構成で、磁気記録技術についての関心の高さが伺えました。工場見学では磁気テープの製造工程についての説明を受け、実際の生産設備の一部を見たり、磁気テープ素材となる磁性粒子やベースフィルムを実際に触ったりして、技術への理解を深めていました。

今回の参加者は普段ソフトウェア系の勉強をしている学生が多かったようで、自分たちが扱うデータをストレージする物として、初めて実際の磁気テープを見たり、触ったりして、磁気テープ実物の薄さや、数滴の塗料で大面積に薄く塗り拡げる技術紹介を聞いて、新鮮な驚きがあったようです。
また、工場見学時に、学生たちは様々な質問をしていました。その一部は次のようなものでした。

  • ベースフィルムは透明だけど、塗布後は色がついてるのは何故?
  • 初代の磁気テープと、最新の磁気テープの違いは?
  • 1つのカートリッジのテープ長はどのくらい?
  • 実際に記録に使う磁性層の厚みはどのくらい?
  • 最新の記録方法は?どういう磁性材料を使用しているの?
  • HDDに比べて、磁気テープのメリットは何?

こうした質問内容や、工場見学時の反応などから、若い世代にとっては、磁気テープ技術というのは普段触れることのない未知の世界なのだということが分かります。
工場見学という短い時間ですが、世界各国の学生の方々に、磁気テープの現物を見て・触れてもらう機会があったことは、世の中にテープストレージの認知度を深める意味で、非常に有意義だったのではないかと思われます。
学生たちがそれぞれの国に戻って、日本で工場見学した経験を周囲に伝えてもらうことで、少しでもテープストレージの技術に関心を持つ人が増えてくれれば喜ばしいことです。

今回はINTERMAGでのイベントという限定された場のお話でしたが、JEITAテープストレージ専門員会ではホームページにテープストレージの各種技術資料をアップしています。また、毎年秋に開催されているCEATECやInterBEEなどで、テープストレージ関連技術に一般の方が触れることができるような機会を設けています。
ブラックボックス化している磁気テープの技術を身近に感じていただければと思います。

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
https://home.jeita.or.jp/standardization/committee/tape_storage.html

本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。

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