JEITAテープストレージ専門委員会コラム

「宇宙とテープストレージ」



子供のころには宇宙飛行士になりたかった。
映画「アポロ13」から大いに影響を受けていたのかもしれない。アポロ13号はアポロ11号と12号と同様に月面着陸を目標に打ち上げられた。しかしアポロ13号は月に向かう途中でトラブルが発生して月には着陸できなかった。映画では宇宙飛行士たちと地上のスタッフとが協力して困難を乗り越えていく様子が描かれていて、その当時、私の目にはとても格好良く見えたのである。大人になった今でも見るたびに新しい発見がある映画だと思う。

アポロ計画は1975年に終了したが、アポロ計画が終わった後も、人類の宇宙への興味は尽きない。宇宙探求の歴史をたどると、古くは星の明るさを分けるところから始まり、望遠鏡で星の動きを観測したり、実際に小惑星のサンプルを取得したりするところまできている。宇宙初期の状況の現象を模擬するのも宇宙探求の方法のひとつである。

とある研究所では陽子を光速近くまで加速して衝突させることで物質・質量・宇宙の成り立ちを探るプロジェクトが行われている。その研究所ではその衝突で観測された様々な実験データのアーカイブ用途としてテープストレージが使われていて、そのデータ量は2010年から2012年に行われた実験の分だけでもナント70PBにもなるらしい。

研究機関において、研究データは重要な資産であり、その大容量なデータの最終的な預け先として信頼性・コストパフォーマンス等を考えてテープストレージが採用されることがある。扱うデータが大容量になってくると重要なのが転送速度である。テープストレージに対する意見のひとつに「遅い」といわれることがあるが、それはデータにアクセスするまでのアクセス速度を指していることが多い。それに対して、一旦ヘッドを位置づけてからの転送速度はその他のデバイスに引けを取らない。その特性から、コストを下げたい、一度に使うデータが大容量にある、というアーカイブシステムのデバイスとして検討されることが多い。そのテープストレージの転送速度の裏側には「リニア・サーペンタイン方式」という書き込み方式が一役買っている。

リニア・サーペンタイン方式とはテープに沿って直線的にデータを書き込むシンプルな方式であり、近年のエンタプライズ向けテープストレージには幅広く採用されている方式である。リード/ライトの速度が速く。耐久性に優れている。この方式では「テープ走行速度×線記録密度×ヘッドチャネル数」に比例しており、理屈上は、テープ走行速度を上げるとデータ転送速度を高めることができる。しかし、実際は消費電力の増加、制御の難しさ、テープメディアやヘッドの磨耗と損傷、リポジショニングヘの影響も加味して速度が制限される。そこで、転送速度を増やすためにデータを読み取るチャネルを複数持たせるということを行う。LTO8では32チャネルも持っている。そうすることで、テープの速度を上げずともデータ転送速度を高めることができるのである。

「大容量・低コスト」のメリットがあるテープストレージ。大容量のデータ活用の保存先として検討してみてはいかがだろうか?

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292
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