JEITAテープストレージ専門委員会コラム

「変わりゆくテープストレージを取り巻く環境」



新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、世界各地で未曾有の危機的な事態に陥りつつあります。
皆様におかれましても、感染拡大防止策である在宅勤務等のテレワークにより、ワーキングスタイルの変革が急速に進んでいるのではないでしょうか。
各クラウド事業者においても、サービスやツールが期間限定で無償提供されており、今後さらにクラウドサービスの活用が進むと想定されます。
さて今回はこのクラウドサービスでも重要な課題であるデータ管理について考えてみたいと思います。

今では一般的となったクラウドサービスですが、本格的な普及が始まったのは2006年ごろと言われています。これはAmazon.comがAWS EC2/S3のサービス提供を開始した年です。その後Microsoft AzureやGoogle Cloud Platform等のサービスがリリースされ、クラウドサービスの普及はより一層加速しました。

昨年末には米国防総省が総額100億ドル(約1兆円)規模でMicrosoft Azureのクラウドサービス導入を決定するまでに至りました。日本においても、政府は今秋から、人事・給与・文書管理向けの基盤システムにAWSを導入することを決めています。このようにクラウドサービスが急速に普及した理由として、大規模な初期投資がいらないことや、深い専門知識が無くても始めやすいといったことが挙げられます。

最近では、クラウドサービス利用者が、複数の異なる事業者のクラウドサービスをワークロードに応じて使い分ける、「マルチクラウド」が広く浸透してきています。各クラウドサービスの良いところを使えるというメリットがあります。

ただしこれは、利用者にとって必ずしも効率的になっていると言えないケースもあるようです。企業や組織の中で、部署やグループ、拠点ごとに使っているシステムが異なる場合では、各システムごとに最適なクラウドサービスが導入され、「結果としてのマルチクラウド」になっていると言われています。つまり、一つの企業や組織の中でサイロ化されていたデータは、クラウドサービスを導入したところで、結局は各クラウドサービスごとにサイロ化されている状況だということです。従来型オンプレミスのシステムも含め、複数のクラウドサービスを利用する際は、最適なデータ管理をいかに実現できるかが重要だと考えられます。

データをクラウドで管理することのメリットとして、例えばAIを活用したデータ分析等、クラウド事業者が提供するサービスをスムーズに利用できることが挙げられます。しかし、データをクラウドでのみ管理することは、果たして最適な方法なのでしょうか。
IDCのレポートによると、多くのクラウド利用者がクラウドサービスに対する課題として挙げているのは、
① 大容量データの保存に想定以上のコストがかかる
② 機密情報を含むデータの損失が不安である
③ データのダウンロード時に課金される
といった点です。

データ保管コストに着目すると、例えば保管したいデータが極めて大容量であった場合、それをクラウドに預けることは、本当にコストに見合ったものでしょうか。万が一、緊急で全データをクラウドからダウンロードしなくてはならなくなったときに、どのくらいの時間とお金がかかるでしょうか。

そういった観点から、データ保存はクラウドサービスとオンプレミスを併用させるのも一つの手ではないかと考えます。オンプレミスで大容量データを低コストで保管したい場合、テープストレージは有効な選択肢の一つです。

上で述べた通り、テープストレージの大きなメリットは、大容量データを低コストで保管できるという点です。テープ媒体には常に通電しておく必要がないため、ディスクといった他の記録メディアに比べ、より省電力でデータ保管ができます。また、テープ媒体は持ち運びも容易なことから、棚置きでの保管や、遠隔地での保管も可能です。これはデータをネットワークから切り離して保管できるので、コンピュータウイルスなどのマルウェアに対して非常に有効な対策手段と言えます。また当然ですが、テープからのデータダウンロードに課金されることはありません。

実はテープストレージはクラウドサービス事業者も利用しています。クラウド利用者には全く意識させませんが、Microsoft Azureは、主にアクセス頻度の低いデータが格納されるアーカイブ層において、データセンター内でテープストレージを利用しているのです。

例えば、ダウンロードにかかる時間やコストが懸念されるデータはオンプレミス、そうでないデータはこのようなクラウドサービスといったような使い分けをすることで、今よりさらに効率の良いデータ保管が実現できるのではないでしょうか。

技術の進歩は雲(クラウド)の流れのように留まることを知らず、日進月歩で新たなIT製品やソリューションが生まれています。それらをどのように活用し、いかに効果を最大化させるかは自身で見極めていかなくてはなりません。私たちテープストレージ専門委員会は、目まぐるしく変化する環境の中で、テープストレージをどう活かすべきか、今後も情報を発信していきます。

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292
本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。

 

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