JEITAテープストレージ専門委員会コラム

「3年目エンジニアが解説する,テープストレージを使ったSDS!」


~スキットパート編~

テリー「やってられるかってんだ!」
マイク「おいおい,日本酒でショットガンしようってのか?どうしたんだ?先月は『新しい職場でストレージ管理の仕事をする!』って張り切ってたじゃないか」
テリー「どうしたもこうしたも,月曜日までにデータ管理コストの削減策を考えつかなきゃならないんだ!もちろん上司には相談したさ,そしたらなんて返ってきたと思う?『アレックス,ぼくはPhDを持っているんだ.だからぼくがやるのは簡単だけど君にチャンスをやろうと思う.君はどうしたいんだい?来週のプレゼンは失敗できないけど,君を信頼しているから任せるんだ.頑張ってくれ』だとよ!やつのディスプレイのマイアミのリゾートはとても楽しげだったよ.しかもデュアルでな!チャンスをもらった"アレックス"は幸せ者だな!」
マイク「そいつは困ったな,どんなデータが多いかは調べたのか?」
テリー「ああ,データは『あまり使われてないけど取っておかなきゃいけないもの』ばかりだったよ」
マイク「"コールドデータ"ってやつだな.今現在の社内のストレージ状況は?」
テリー「どうやら,ストレージ容量が足りなくなる度,そのときに安かったベンダーのストレージを買って増築するのを繰り返していたみたいなんだ.おかげで運用もデータのやりとりも難しくなっている.他の部署のエンジニアからは"九龍城"なんて言われてたんだぜ?」
マイク「ふむ,解決できるかもしれないぞ.鍵は"ソフトウェアディファインドストレージ(SDS)"と"テープストレージ",そして"LTFS"だ」
テリー「なんだそのSDSってのは?テープストレージって磁気テープか?そんな大昔の技術使って,洞窟に住んでマンモスでも狩ろうってのか?」
マイク「…じゃあまずテープストレージから話そうか,磁気テープはまだまだ現役だ.大容量かつ低コストが特徴の優れものなんだぜ」
テリー「本当か?じゃあ全部テープストレージに置き換えればいいのか?」
マイク「そういうわけにもいかないんだ.例えば,ランダムアクセスはディスクストレージのほうが速いから,よく使うデータはディスクストレージに保存しておく必要があるな.ただ,おまえのとこの大量のコールドデータはテープに置いておくといいと思うぜ」
テリー「でも,また新しいストレージを買うってのはどうなんだ?ディスクとテープだと勝手が違うだろうし,これ以上"九龍城"を増築するのもごめんだぜ」
マイク「そこを解決するのがSDSなんだ.『ストレージの機能をハードウェアから分離して,ハードウェアに依存しないストレージを実現する,ソフトウェア主導のストレージ』のことさ.こいつを導入することで,異種混合ストレージを一元管理することができるんだぜ!」
テリー「そいつはいいな!最後の"LT"なんたらってやつは何者なんだ?」
マイク「"LTFS"だな,この技術を使うことで,テープストレージをディスクストレージやUSBメモリと同じような感覚で使えるようになるんだ.データのやりとりをする際,OSやハードウェアの違いを考慮しなくてもいいんだぜ」
テリー「つまり,テープストレージ,そしてそのLTFSを使ったSDSを導入することで,『あまり使わないけど取っておかなきゃいけないデータはテープに,よく使うデータはディスクに』といった風にデータを適材適所で配置できるから,データ管理コストを削減できるんだな!」
マイク「その通りさ!理解が早いな!」
テリー「伊達にエンジニアやってないぜ,助かったよ!今日は奢らせてくれ!」
マイク「ロマネ・コンティ!ボトルで!」

あくる月曜日,テリーが提案した「テープストレージを用いたSDSの導入」は,会議でCTOに大いに注目された.この活躍により,その後テリーは上司と一悶着起こすことになるが,それはまた別の話である……


~解説パート編~

"テープの啓蒙をテーマに記事を書いてくれ!"とソウルフルなお願いを受け,"テープストレージを使ったソフトウェア・デファインド・ストレージ(SDS)"について,スキットを書かせていただきました.本稿で,簡単にその解説を書いていきたいと思います.

1. SDSとは
スキットでマイクが言っていたように,SDSとは「ストレージの機能をハードウェアから分離して,ハードウェアに依存しないストレージを実現する,ソフトウェア主導のストレージ」のことです.つまり,
1. ベンダーやモデルごとに運用・管理方法が異なる
2. 性能や拡張性がハードウェアによって制限される
3. データが分断される

といった問題を解決し,

1. 異種混合ハードウェアを使用可能にする
2. データを適切な場所に適切なタイミングで配置する
3. 高いスケーラビリティを得る

といったことを実現してしまおうというソフトウェア主導のストレージのことをいいます.つまり,SDSを使う事で,様々なストレージ(SSD,HDD,テープストレージなど)を,一元管理する事ができます.


2. テープストレージを使ったSDSとLTFS
テープストレージを用いたSDSは,"LTFS (Linear Tape File System)"という技術を用いる事によってより簡単に構築できます.
LTFSとは,テープストレージをハードディスクやUSBメモリなどのメディアと同じような感覚で扱えるようにする機能です.
かつてテープストレージは,専用のソフトウェアで運用するのが主流でした.すなわち,"ハードウェア依存"のストレージでした.コンピューターのディスクストレージからテープストレージにデータを移行する際に複雑なコマンド操作が必要な他,OSやハードウェアの違いも考慮する必要がありました.それが,LTFSを使ってデータを記録することで,OSやハードウェアによる垣根が取り払われ,テープストレージとその他のストレージとのデータのやりとりが容易になりました.
そんなLTFSを用いて,テープストレージを使ったSDSを構築することで,データを適切なストレージに適切なタイミングで適切な場所に配置できるようになり,テープストレージのメリットである「大容量・低コスト」を活かすことが可能となりました.つまり,あまり使わないデータはテープ,頻繁にアクセスするデータはディスクストレージへ……などの運用を行って,データ管理コストを削減することが可能となったわけです.

データの量が増え続けているこの時代,スキットのテリーの会社のように,データ保管コストの削減に迫られている企業も多いと思います.是非一度,テープストレージを自らもしくはお客様の課題の解決策として,検討してみてはいかがでしょうか.

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292
本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。

 

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