JEITA連載寄稿

JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「ビデオデコーダーとLTOの違いとは?」

-JDSF・JAVCOM・JEITA 2011年夏季技術交流セミナーでの講演概要-

従来の放送用ビデオレコーダーのサポート収束に伴い、大量のビデオアーカイブデータの格納先として注目を集めているLTO。今回JDSF、JAVCOM(日本ビデオコミュニケーション協会)間で定期的に行っている技術交流セミナーで、最新のLTO技術についてビデオレコーダーとの違いを中心にプレゼンした。その違いとは?

 

 

LTOとは?

 

HP社、IBM社、Seagate社(現Quantum社)により規格化されたコンピュータ用テープで2010年の全テープドライブ出荷数の70%を占めるIT業界のデファクトスタンダードである。2000年に第1世代ドライブが出荷されてから現在第5世代、第8世代までのロードマップが公開されている

 

 

 

 

LTOとビデオテープの違い

 

最大の違いは製品の要求仕様にある。 元来リアルタイムで放送映像を記録、送出する為に作られた放送用のビデオレコーダーはリアルタイムで書き込み、読み出しをする必要がある。いわばリアルタイム性保証型である。一方コンピュータ用テープであるLTOは1ビットの間違いも許されない。そのためリアルタイム性を犠牲にしても正確なデータを書き込み、読み出しできるようにリライトという機能がある。こちらはいうなればデータ完全性保証型といえる。
その他、LTOの特徴を列記してみる。

 

 

ヘリカルスキャンとリニアサーペンタイン

 

一般的なビデオレコーダーがヘリカルスキャンであるのに対し、LTOはリニアサーペンタイン方式を採用している。

 

 

 

リードアフターライトとリライト

 

LTOでも書き込んだデータをすぐにその場でチェックするリードアフターライト機能がある。更に正常に書かれていな場合は同じデータを再度書き直すリライト機能がある。
また必要に応じてリライトのデータを異なるトラックに書き込むため、特定のヘッドに問題があった場合でも大丈夫なのだ。

 

 

ECCとインターリーブ

 

1ビットたりともエラーが許されないLTOでは強力なECC(エラー訂正符号)を採用しているが、更にECCを含めたデータを分散して記録するインターリーブ方式も採用している。この機能によりより信頼性の高い読み取りが可能になる。

 

 

 

 

トラッキング - サーボパターンとサーボヘッド

 

トラッキング時の信頼性を確保しているのが、カートリッジ製造工程であらかじめ記録されているプリサーボパターンとサーボヘッドの採用。数μmのトラック幅でも正確に追従することが可能で、鹿児島〜札幌間の直線距離(約1,600km)をテープ長に例えると、道路上の直線でのブレは約1cmという精度を誇る。

 

 

テープ走行速度の動的コントロール

 

LTOではデータをテープに詰めて書き込むため、データの受信速度が遅くなる場合、テープを巻き戻して書き込むことがある。これをリポジションというが、これを低減するためにバッファ量の増減にあわせてテープスピードを調節する機能がある。

 

 

カートリッジメモリ

 

LTOカートリッジに内蔵されている非接触の半導体メモリはカートリッジメモリ(CM)と呼ばれ、その中にはカートリッジの製造情報、フォーマット情報、テープのディレクトリ情報などが記録されている。さらにディレクトリ情報を書き込むことでテープ先端部への負荷を軽減すると共に、信頼性の向上に貢献している。尚、CMの情報と同じデータ(Format Identification Dataset (FID))はテープ上にも書かれるため、CMが故障した場合でもカートリッジからデータは読み出せるのである。

 

 

LTO 5の便利機能

 

その他便利な機能として、暗号化機能、改ざん防止のWORM機能、さらにパーティション機能とLTFSでテープのファイルシステム化を実現している。 ファイルシステム化を実現することによりアプリOSに依存せず、交換媒体としても便利に利用できる。また自己記述型であるため長期保管、オフサイト保管にも適しているといえる。

 



一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会 (※)
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
※:旧名称:磁気記録媒体標準化専門委員会