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活動内容
近代化の淵源を探る (2/6)
 

 精神文化とは、主として、人間の生存価値の確認に関わる活動次元であり、物質文明とは、主として、人間の生存条件の確保に関わる活動次元である、と言うことができるでしょう。

 精神文化の次元に属する領域としては、宗教・道徳の領域と、学問・芸術の領域を挙げることができるでしょう。

 物質文明の次元に属する領域としては、政治・経済の領域と、科学・技術の領域を挙げることができるでしょう。
ヨーロッパの近代化は、内発的な仕方で生まれてきたものです。
それに対して、日本の近代化は、内発的なものではなく、外から伝来してきたものを受容する、という形でなされてきました。この違いをここで、改めて指摘しておきたいと思います。

日本の近代化をふり返る

それでは、近代化という観点から、日本の歴史をふり返ってみたいと思います。日本の近代化をリアルに捉えるためには、日本史だけではなく、世界史の中での日本史を、ふり返る必要があります。

日本は、世界史と三度、出会っています。
第一回目の世界史との出会いは、16世紀半ばのキリスト教の布教です。第二回目の世界史との出会いは、18世紀半ばの黒船の来航です。第三回目の世界史との出会いは、20世紀半ばのアメリカ軍の占領です。

一回目の世界史との出会い ―キリスト教布教―

 日本人が、初めて、ヨーロッパの精神文化と出会ったのは、16世紀の半ばです。それは、イエズス会の創始者の一人、フランシスコ・ザビエルによる、キリスト教の布教です。

 しかし、徳川幕府は、禁教令を出して、多くのキリスト教徒を国外に追放し、隠れキリスト教徒を徹底的に弾圧します。ついには、鎖国令を出して、日本人の海外への渡航も、海外からの帰国も禁止します。さらに、徳川幕府は、鉄砲や大砲の輸入、および使用を厳禁します。

 日本の権力者は、ヨーロッパの精神文化も、物質文明もとり入れようとはしなかったのです。このように、日本と世界史との出会いは、日本の側の全面的拒否という形で終わりをとげました。

 言いかえると、日本は、「近代化」の可能性を失ったのだ、と言ってよいでしょう。

 それでは、なぜ、日本の権力者たちは、キリスト教が日本の民衆に広まってゆくのを、それほどまでに恐れたのでしょうか。それまで、農民は、家族や村落という共同体の中で、魔術的な世界に生きてきました。その人たちに対して、宣教師たちは、教理問答を通して、すべての人びとが神の被造物として救われること、言いかえると、個人の人格は、全世界の富や権力にまさる、尊い存在である、と教えたのです。この、まったく新しいキリスト教的ヒューマニズムの思想に触れた人びとは、自ら進んで殉教してゆきました。これを見て、日本の権力者たちは、キリスト教を深く恐れるようになった、と言ってよいでしょう。

 
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