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活動内容
セルフ・カウンセリング学会会長
渡辺康麿

近代化の淵源を探る
- 2001年3月24日玉川大学退任記念講演会より その2-

はじめに

 先日、私は、都心の大きな書店をめぐり歩きました。どの書店でも、自民族中心主義的な文部省検定済みの教科書が平積みになっていました。また、ほかの書棚には、その教科書を批判する書籍も並べられていました。

 そこには、自己評価の危機に陥った一部の日本人の、なんとか自民族を正当化したい、という思いが現れているように思われました。

 つづいて、私は、<自民族の歴史を顧みることは、悪いことではない。けれども、彼らは、いったい、どのような日本人の未来像をもっているのだろうか。

 日本民族の自己評価を保つために、日本史を書き換えたいのだとしたら、それは、空しいことではないか。

 日本の子どもたちのために、という大義名分で、自分たち大人の自己評価を満足させるために、歴史的事実まで歪曲するのだとしたら、日本の子どもたちが歴史に対して責任を負うことができなくさせてしまうのではないだろうか。

 21世紀を迎える、国際社会の中の一日本人として、私なりの視点で、簡単な日本史の見取り図を描いておかなくてはならない>と思いました。

ヨーロッパの近代化をふり返る

 ここで、もう一度、ヨーロッパの近代化をふり返っておきましょう。

 西欧の人たちは、皇帝の政治的権力と、教皇の宗教的権威によって支配されていた中世の封建社会を、内側から一歩一歩打破してゆきました。その段階を、大きく三つに分けることができるでしょう。

まず、第一に、カトリック教会による、宗教的権威の支配から、宗教改革を通して自由になり、第二に、国王による政治的権力支配から、市民革命を通して自由になり、第三に、農業社会にもとづく家父長制の支配から、産業革命を通して自由になりました。

 『近代化』を自由への道と捉えるならば、西欧の人たちは、自力で、既成の伝統支配と闘って、内面的自由を獲得してきたのです。

 第一段階として、宗教改革を通して、人々のうちに内面的決断を重んずる人格主義の精神が生まれました。第二段階として、市民革命を通して、対話によって合意を求める民主主義の精神が生まれました。第三段階として、産業革命を通して、新しい市場を開拓する創造主義(生産主義)の精神が生まれました。

 ヨーロッパの「近代化」においては、新しい精神文化が、新しい物質文明を生み出したのです。

 
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