JEITA磁気記録媒体標準化専門委員会からのお知らせPart 3

前回も書きましたが、2005年5月の経済産業省の「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」の報告[1][2]には文書の電子化により「業務コストの削減」「企業競争力の強化」「リスク管理」「その他(環境問題への対応向上、テレワークの実現など)」の効果が期待されるとあります。今回は、磁気テープの利用が、これらの効果を高めるのにどのように役立つのかを考えてみたいと思います。

電子情報技術産業協会の磁気記録媒体標準化専門委員会としてCEATEC JAPAN2007で行った全体の発表概要は、以下のURLから参照いただけます。
http://www.ceatec.com/2007/ja/visitor/co_track_is_detail.html?lectue_id=20702

そして今回と次回にご紹介する内容は、電子情報技術産業協会磁気記録媒体標準化専門委員会のホームページに第4章として掲載され、以下のURLからpdfをご利用いただけます。
http://home.jeita.or.jp/is/committee/tech-std/std/2007/CEATEC_4.pdf

本資料の目的は、テープストレージに対する根強い「誤解」を解いていただくとともに、理解していただきたい「テープストレージの実際」を解説する内容となっております。たとえば、いまさらテープなんて。転送レートが遅いでしょ。ディスクの方が安いよね。もう将来の開発もない廃れゆくストレージ。などと、皆様の中にはそのように考えている方が多いと思われます。その原因のひとつには、ハードディスクと比べると、テープに関する説明や情報量が少ないことがあるかと思います。 これまでの経験では、最新のテープテクノロジーや製品の現状などを紹介すると、エンジニアの方は、「なるほどテープってそんなに優れていたのか」と納得される方が多くおられます。 テープストレージに関係する各企業が参加している当委員会では昨年から議論を重ねて、そのような説明に利用していただくためこの資料を作成してきました。本資料で扱っている内容は大きく分けると、以下の項目となります。

○ データの保護と保存
○ バックアップとアーカイブの違い
○ バックアップとアーカイブに求められるストレージとは?
○ テープの大容量化動向
○ ドライブの転送レート比較
○ ドライブの転送レート高速化動向
○ 高信頼性のデータ書込み(ヘッド構造)
○ 容量あたりの低価格性
○ ストレージの消費電力比較
○ 管理の容易性
○ 長期保存性
○ テープストレージの役割
○ テープストレージにおける日本の技術
○ 各種テープ規格のロードマップ

まず、バックアップというと、後ろ向きのような捉え方になりますが、本来はシステムの可用性を高める手法として捉える必要があります。アーカイブは、ここ数年の傾向であるコンプライアンス対応の必要性から、その重要性は日に日に増してきています。 このバックアップとアーカイブのシステム構築を考慮する場合、どのようなストレージが必要になるのでしょうか。大容量、高速データ転送レート、信頼性、容量当たりのコスト、管理の容易性、長期保存性などの特徴を持つストレージになるでしょう(本資料のp6)。

テープストレージの容量は、他のストレージ同様に年々大容量化しています。2007年現在、カートリッジ一巻あたりの非圧縮容量は800GB(2:1の圧縮比では1600GB)。大容量化傾向は将来も継続します(本資料のp7)。データ転送レートの比較については、公正にドライブ同士で比較されるべきです。本資料のp8のグラフでは、単体ドライブ同士の比較を行っております。決して、テープは遅いストレージではありません。ハードディスクドライブ(HDD)では最外周の数値が一番高くなりますが、その最速の箇所と比較してもテープドライブは決して劣りません。高速のテープドライブで、非圧縮時 120MB/秒。これはHDDの内周部にあるデータをやり取りすると、HDDの転送レートがボトルネックになってしまうくらいの性能です。その高速化傾向は、ここ数年かなり高まっています。この傾向を示したのが、本資料のp9となります。また、p10の図でデータを必ず正しくメディアに記録するテープのヘッド構造を示しています。テープドライブのヘッドの構造は、書いたデータをチェックし、誤っていれば書き直すことを可能にしています。HDDなどではこのような構造はとれません。

価格面の比較をすると、個人で使用するデータ容量のレベルでは、テープストレージの価格優位性は出てきません。しかし、企業で必要となる容量レベルでは、相変わらずハードディスク装置に比較してまだまだ差があります。その差は、約10倍程度といわれています(本資料のp11、テープの方が安い)。ストレージを構築するときコストを無視するのであれば、すべてを高価なディスク装置などでシステムを構築すればよいのですが、経済性を無視することは現実的には不可能です。ストレージの使い分けを行いアクセス性や保存期間などの面から考慮し全体的なコストを検討するときに、テープはその大容量性や単位容量当たりの価格、そして保存性によって、ストレージ構築に重要な役割を果たしています。この優位性は将来も継続すると思われます。

次回は、消費電力性、管理性、長期保存性などの面から、テープストレージの優位性を見ていきたいと思います。

【JEITA 磁気記録媒体標準化専門委員会のURL】
http://home.jeita.or.jp/is/committee/tech-std/std/com02.html

[1][2] 下記資料(PDF)の最終ページにURLを記載してあります
http://home.jeita.or.jp/is/committee/tech-std/std/com02_2_200608final.pdf





 (社)電子情報技術産業協会(JEITA) 磁気記録媒体標準化専門委員会
日本アイ・ビー・エム(株) 白鳥 敏幸