JEITAテープストレージ専門委員会コラ
「ビッグデータは本当にビッグになるのか?
メディア業界4Kの次は8K?それとも?」その2

 

今回50周年を迎えたInterBEE、来場者数も3日間で約3万8千人と昨年よりも6千人も増えた。当委員会も展示をしたが、テープが浸透してきていることもありかなりの盛況であった。50周年という節目であるだけでなく、おそらく2020年のオリンピックを目指しての期待の高まりも来場者数の増加を後押ししているのだろう。

 

■8Kの実力

今回8K関連の展示もいくつか見られたが、最もインパクトがあったのは8K-3Dのデモ上映ではなかっただろうか。8K映像を見たのも初めてだが3Dである。 実際素晴らしく高精細で、シャボン玉の光沢感や花びらの細やかな動きも十分表現できていたと感じた。パブリックビューイングでは明らかに8Kは必要だろう。
一方撮影する機材はまだ少ない。撮像するデバイスは半導体技術なので高解像度化は比較的容易だが、レンズの製造が困難だということだった。やはり最終的に画質を決めるのはインプットとアウトプットのアナログ部分なのだ。日本の研磨技術は極めて優れていておそらく世界屈指だと思っているが、8Kレベルのレンズ加工は難しいらしい。8K用レンズを現在提供できているのはたった2社である。このようなキーコンポーネントの製造技術が向上し、より安価にカメラ、表示装置が製造できると普及も加速するのではないかと感じた。

 

■4Kはどこで使えるのか?

4Kはさすがに展示も多く、実用化ももう見えているという印象を受けた。家庭用テレビにはハイスペックすぎると感じられる4K画像だが、いくつか有効活用ができそうなデモが行われていたので紹介したい。

 

1.デジタルサイネージ

やはり2020年の東京オリンピック、多くの外国人選手団だけでなく観光客も訪れる。以前から海外ビジターから、日本、東京でさえ英語表記が少なく非常に不便だとの指摘を受けていたが、最近地下鉄の表示も含め、かなりよくなってきたと思う。しかしデジタルサイネージは情報量が一気に飛躍する。さらにインタラクティブにもできるし、最近では見る人に合わせて、表示内容を変えることができるソリューションも出てきている。なんだか監視されているようだが、国籍、性別、年齢、もしかしたら嗜好までも分析されて、ほしい情報が表示されるようになるかもしれない。話が脱線したが、これくらいのサイズだとやはり文字が読めるのは4Kクラスだろう。間違いなく4Kは有効だと感じた。また4kでも一般のラップトップPCで表示できる程度のデータ量だという点も、普及が進むと感じられる大きな要因でもある。

 

3.4K-3D外科手術撮影システム

脳外科手術というのは最も困難な手術の一つであることは言うまでもないが、非常に微細な画像と奥行きがわかる画像というのは、記録用、教育用だけでなく、将来的には遠隔手術にも活用できるのではないか。実際の3D画像は少し気持ち悪いと思いつつも、きわめてリアルに視覚化出来ていて驚いた。微細加工やゲームなどにもとても有効だと感じた。

 

■IoTここにも

会場でかなり人気を博していたのはウェアラブルカメラである。もともとアウトドア用に開発された、非常に小さく衝撃にも強いこれらのカメラ群は、オプションも非常に多く、人はもとより、自転車、バイク、自動車、潜水服、ペットにまで取り付けられるオプションがある。それがネットにつながりクラウドに保存されるのだ。
どれだけのデータ量になるのだろう。世界の人口60億人のどれくらいの人が画像を撮影するようになるのだろうか? グーグルグラスももっとファッショナブルになれば本当に24時間365日映像が撮影される時代が来るのかもしれない。当然画像だけではなく位置情報、温度湿度、標高、身に着けている人の健康状態といったセンサーデータもおまけについてくる。所謂IoT時代はもうそこまで来ている。

 

■8Kでストレージはどうなる?

さてウェアラブルから8Kまで、リッチメディアの代表である動画を保存するのはもちろんストレージの役目のだが、果たしてこれだけの生成量に耐えられるのか? データ容量だけでなく、撮影するデバイスの種類も爆発的に増加するのは想像に難くない。
ではどれくらいの容量が必要なのか?7680×4320(8Kスーパーハイビジョン解像度)だと2TBで12分しかない。スポーツなどでは100分以上必要だろう。それで16TBである。オリンピックゲーム期間だけでも途方もないデータ量になる。フラッシュディスクが安くなったといっても長期に保管するにはいささかお高い。というよりもフラッシュはその特性上長期には保管できないのだが。やはり一時的なキャッシュで、現地からの輸送はテープを使うのが理想的なのだろう。ただ、まだ16TBのテープは存在しない。複数のテープカートリッジに分散して記録するアプライアンスが必要かもしれない。

 

■JEITAブースは盛況

今回当委員会でブース展示をしたが、かなりの来場者であった。やはり放送映像業界では、LTO、LTFSといったコンピュータ磁気テープが浸透してきているのだと感じた。今回展示したのは各社のテープカートリッジ、テープドライブ、そして複数のカートリッジが収納でき、自動的にカートリッジを移動してくれるテープライブラリー。手のひら大のカートリッジ1巻に非圧縮で2.5〜10TBまで記録できるのだ。さらにLTOのロードマップが10世代目まで拡大された。10世代目はなんと圧縮で120TBにも達する。今の調子でデータ量が増えていっても、記録するストレージメディアのほうは、なんとかなりそうだ。


一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
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