JEITAテープストレージ専門委員会コラ
「ビッグデータは本当にビッグになるのか?
空からのデータが世界を変える!? 」

 

グーグルアースを使ったことがある人は、その使い勝手だけでなく、意外なほどの解像度の高さに驚いたことだろう。
ところがなれというのは恐ろしいもので、今ではグーグルストリート並の解像度を期待している自分がいる。
一方プライバシーの面からも、データ帯域幅の面からも、意図的に解像度を下げているという憶測もおそらく筋違いではないはずだ。
映画とかでは、軍事用には使用可能な高解像度画像から、車のナンバープレートや顔の認識までもできるようになっている。
ところが最近、米国で発表されたニュースによると、従来まで一般に提供することができる衛星画像の解像度は50cmだったのが、今後は25cmにまで解禁されるという。実力的には10cm単位の画像も入手できるという意見もあるが、ここまで来ると一般には開放しないだろう。
このような衛星が多数打ち上げられ、それらがネットワークでつながれば、ほぼリアルタイムで世界中の空からの画像が見られる日が来るのではないだろうか?
ちなみに最新の民間画像衛星WorldView-3 の仕様では、ストレージはEDAC(エラー訂正機能)付き半導体メモリーで容量は2.199 Tb 、イメージ転送帯域は: 800 Mbpsである。約1日に8.6TB、年間3.1PBのデータが転送される計算になる。これらのデータはどれくらい保存されるのか?おそらくほぼ永久だろう。二度と同じ画像は取れないのだから。
とはいっても3トンもあるこのような大型の衛星は、多額の費用がかるため、そうそう打ち上げられることもないだろう。そう思う人も少なくないはずだが、中には違った考えの人たちもいる。

 

スタンフォード大学出身で、現在Skybox Imaging社のexecutive vice presidentと、chief product officerを兼務するダン・バーケンストック氏は、リアルタイムで地上を撮影可能な新型の小型人工衛星を提案している。従来ジャンボジェット機3機分もしたコストを1/100にまで引き下げ、画像スキャン方法も、従来から使われてきたコピー機用の高画質ラインセンサーから、次世代の低画質エリアセンサーと画像処理技術の組み合わせに変えた。トラッキングの精度が求められるラインセンサーのスキャンよりも、ノイズが多くても多くの画像から画像補正によって得られる画像のほうが良いとの判断だ。これも画像処理技術と、それを実現するコンピュータパワーの向上が背景にあると考えられる。

 

衛星からだけではない、飛行機やヘリコプターからの地球上生態系観測を試みている科学者もいる。地球生態学者で探検家のグレッグ・アスナー氏は、2つの特殊機材で空から大自然の詳細な3Dマップを作成している。その機材の1つは植物の化学組成を計測する画像分光計、もう1つは高出力 レーザーで、高解像度3Dで1秒間に50万回スキャンする。この測定手法のすごいところは、植物の成長速度や詳細な 熱帯林の炭素蓄積量を知ることができることだ。このようなデータは、地上や人工衛星のセンサーからは得られないデータである。森林伐採から生じる 、世界の炭素排出量の増加に警鐘を鳴らしているアスナー氏は、熱帯林の炭素蓄積量を可視化する活動を続けている。

 

これらのデータはそれぞれ個別にデータ処理、保存管理されていくことだろう。そしていつの日かそれらの個別のデータを合成、再分析することで、新たな発見があるかもしれない。問題はそれまでデータを安全に低炭素つまりは低消費電力で保存できるかどうかだ。 今後ますます増加するセンサーデータアーカイブ、超低消費電力メディア、テープストレージへの期待値は高い。


一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
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