JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「ビッグデータは本当にビッグになるのか?
- 農業とIoT 最先端米国から学ぶ - 」

 

2050年には世界人口90億人、食糧供給が不安なわけ

医療とグローバルサプライチェーンの進歩とともに、世界人口は2050年には90億人に達すると見られている。食文化のグローバライゼーション、最新サプライチェーン、インターネット、SNS経由での情報の拡散スピードなどから、「世界総中流食」時代が来るのもそう遠くないと思われる。実際最近ではパン食が浸透した中国の「大人買い」により、バターや小麦粉等の値上げなどがニュースで取り上げられるようになってきた。この流れは止まらないだろう。人間は常に「良いもの」、「楽なこと」、「おいしいもの」を求め続けるようにできているからである。一方、度重なる気候変動、農業従事者の低下、農地の削減など、ネガティブな要素は山積している。そこで最新IT技術の活用というわけだが、近年IoT、Big Data、ドローン等の要素が出そろったきたところで、俄然IT農業が現実味を帯びてきた。

 

意外とIoT技術の集約系?

考えてみると、農業はIoT技術を有効活用できる代表的なものではないか?サプライチェーンへのIT活用はもとより、農業に必要な農地の監視はドローン、分析はIoTからのデータとBig Data分析技術、気象情報の活用も気象用センサー群のIoTとBig Data分析で可能だ。このような技術を使ったものは、Precision Agriculture(以下PA)と呼ばれ(日本語では精密農業と訳されている)、世界全体では2015年のPA関連ベンチャー企業への投資は、前年から2 倍以上増加し6億万ドル以上に達している。活用される技術別投資額ではドローンの50%を筆頭に、衛星画像解析、ソフトウェア、ロボット、灌漑水関連、センサー、気象サービスと続く。特にドローンへの投資は2014年から2015年にかけて約3 倍に拡大している。一方、より低位置で監視ができる農作業ロボットなんてのも今後期待できそうだ。分光計による地質分析等、空からのデータでは補完できないデータも多いだろうし、もちろん重労働の農作業も代わりにやってくれそうだ。

 

ロボットの活用で無農薬農法も夢ではない?

PA等によるITの活用、効率を求めるあまり農薬バンバンではいただけない。せっかくのIT活用であるから効率よくだけでは無く、安全な食物を生産したいものだ。有機農法の一つに合鴨農法というのがあって、害虫を合鴨が食べてくれるので、無農薬でお米が栽培できるというものである。将来的には合鴨ロボットのようなものが太陽光発電で自律的に害虫駆除や農作物の健康診断、成長度合い等の報告をしてくれるようになるかもしれない。

このようなデータはデータセンターに蓄積され、長期スパンで分析されるだろう。さらにこれらのデータと気象データ、人口データや食品の消費データなどを掛け合わせて、より効率の良い食糧生産、管理、流通が可能になる。データの長期保存が必要な理由の一つは食物の成長スピードである。デジタルの世界とは違い、生物も野菜も1年に100歳年を取るなんてことは当分起こりえそうにないからだ。

 

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一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
日本ヒューレット・パッカード(株)  井上 陽治
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