JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「ビッグデータは本当にビッグになるのか?
- ダボスより 自動運転はどこまで進むか - 」

 

今後5年で過去50年以上のイノベーションが起こる

代表的な自動車メーカーGMのチェアマンでありCEO、メアリー・ベラ曰く、「自動車業界は、今後の5年から10年に間に過去50年に経験した変化以上のものを経験するだろう」と言っています。5年と10年では幅がありすぎだろうとも思うのだが、おそらく彼女の見方に異を唱える人は少ないだろう。 世界でも早くITのアウトソーシングを進めてきたGMであるが、近年はAWSの活用を含め、アウトソーシングから内製化に切り替えてきている。 これはGMが、今後IT技術の活用が自身の成長にとって非常に重要なものだと考えているからに他ならないのではないか。

 

IT企業の参入が続く自動車分野

シリコンバレーの企業でありながら、自動車産業に進出して成功してきているテスラモータースのイーロン・マスク氏曰く、「将来的には自動車は所有するものではなくなるだろう」。彼が引き合いに出したのは、従来は移動手段として使われていた「馬」である。確かに今馬を移動手段として使っている人は極めて少ない、所有するだけでもコスト高だ。 ニューヨークなどではいまだに警官が馬を使っているが、これはノスタルジックな側面が極めて強いのだろう。

テスラのみならず、アップルが電気自動車への参入を示唆しているのも、「移動手段」の自動車、というよりは「移動するIoT端末」としての自動車が、極めてIT業界にとって魅力的だからなのかもしれない。

 

2030年には15%が完全自動運転に?

以前も取り上げたが、マッキンゼーのレポートによると完全自動運転自動車の商用化は、2020年より後になるだろうと見られている。しかし一方同社は、技術的、法規制の課題が解決さえすれば、2030年には世界の15%の自動車が自動運転自動車になるとも予測しているのだ。さらに「部分的:状況によって人間の操作を介在」という条件付きであれば普及率は60%になるとみられている。と言ってもこれも「高ディスラプティブ:破壊的」という条件付きだ。世界が極めて保守的に動けば、全自動はおろか、部分的な自動運転も2030年には実現しないと見られている。 これはちょっと考えにくいが。

 

世界の意識には格差が

しかし自動運転の普及には、それを社会的に受け入れる土壌が必要であろう。World Economic Forumが2015年夏に、5000人以上を対象に実施した意識調査によれば、世界平均では58%の人が自動運転を容認している。しかしこの意識も地域や国によっても様々である。最も高いのはインドの85%、次いで中国75%、UAEが70%となっている。やはり経済成長が著しい国は新しい技術を受け入れる意識が高いように思える。一方対象10各国で最下位は日本で36%、その次にオランダ、ドイツと続く。自動車産業で世界をリードしているドイツであってもこの結果である。成熟した社会はどうしても保守的になりがちなのかもしれない。

 

自動運転で得られる果実

単に渋滞緩和、事故率低減、人件費削減などから自動運転を含む自動車がIT産業から注目を浴びているわけではない。 前述したように自動運転できる自動車は「移動するIoTデバイス」である。ここで重要なのはIoTとM2Mの違いである。M2MつまりMachine to Machineはパーキング、ごみ回収、地図作成、パトロール等、単に機械と機械の通信から知見を得たり、コントロールしたりというのに対して、IoTは機械だけでなく人間の情報も介在する。人間の意志はもちろん、健康状態、精神状態も測定して、それに合わせたサービスを提供する、これは移動手段として世界で一番使われる自動車が最も利用できる分野なのでは無いだろうか? すでにシートに多数のセンサーを埋め込み、座っている人の健康状態を測定、ある意味遠隔医療のようなことができるコンセプトカーも発表されている。これがさらに進化して、センチメンタルな気分の時には、エイミーワインハウスの曲が流れて、海岸線へのドライブに誘ってくれる自動車も出てくるかもしれない。もちろん渋滞もなく、次の大事な予定にも遅れないことは織り込み済みだ。

忘れてはいけない… タイトルにもあるようにこのような健康データ、センチメントを測定したデータはデータレイクにプールされ分析される、とはいっても分析に使われるのはそのほんの一握り、それ以外はどこかに保存しておく必要がある。人間のセンチメンタリズムデータは、どれくらい貯めれば完璧に分析できるのだろう?当分は「永遠」と言っておこう。マシンに人の感情まで100%理解されたら、なんだか立場がない

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
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