JEITAテープストレージ専門委員会コラム

環境意識の変化とテープストレージ



人間一人が生活の中で1年間に排出する二酸化炭素の量がどのくらいかご存じでしょうか。国立環境研究所の発表によれば、近年の日本の一人当たりの二酸化炭素排出量は、年間およそ9~10トンだそうです。これは日本全体の二酸化炭素排出量を日本の人口で割って算出しており、25mプール10面分の体積に匹敵する量になります。一方、年間でこの量の二酸化炭素を吸収するには、杉の木が約710本も必要になります。毎年花粉の飛ぶ時期になると悪者扱いされますが、実は無くてはならない存在なのです。

さて、最近カーボンニュートラルという言葉をよく耳にするようになってきました。これは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などの吸収量を差し引いて、全体として実質的にゼロにすることを意味します。2020年10月に、日本政府は2050年にカーボンニュートラルを達成し、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。今のペースで温室効果ガスの排出が続くと、2100年には、平均気温が最大4.8℃上昇してしまうといったことが背景にあります。このような気候変動と個々の気象災害を関係付けることは容易ではありませんが、気候変動により、豪雨や猛暑のリスクがさらに高まると予想されています。

このような中、例えば、節電という観点でカーボンニュートラルを意識してみてはいかがでしょうか。日本の電力は、2020年度時点で7割以上が火力発電により供給されています。消費する電力を減らすことが、火力発電で発生する温室効果ガスを削減させる一つの手段となり得ます。節電というと、使っていない部屋の明かりをこまめに消すことや、エアコンの使い過ぎに気を付けるといったことがすぐ思いつくかもしれません。もちろんそれらも大事なことですが、デジタル化が進む今、スマートフォンやパソコンを利用することも電力の消費につながっています。これは端末のバッテリーによる電力消費ということだけでなく、例えば、検索エンジンから言葉の検索を実行するだけで、世界のどこかにあるデータセンターのサーバで微量の電力が消費されます。そして数兆件の検索が積み重なれば、結果として膨大な電力が消費されることになります。また、写真や動画をSNS等にアップロードすると、やはりどこかのデータセンターでサーバやストレージが電力を消費します。日本におけるデータセンターの延床面積は年々増加していますが、将来的に、日本全国の消費電力の10%がデータセンターで消費されることになると言われています。そのため、デジタル化を進める中でも、環境を意識した取り組みが必要となってきています。

今後、全世界で1年間に生成されるデータ量はさらに増大し、2025年には約180ゼタバイト(1ゼタ=10の21乗)になると言われています。増え続けるデータの中には、利用後はほとんどアクセスされない、いわゆるコールドデータというものがありますが、こういったデータの保管のために、サーバやストレージを常時通電しておくことは、環境のために良いこととは言えません。そこで、データ保管時に通電しておく必要のない記録媒体としてテープストレージがあります。USBメモリやHDDに比べて普段あまり目にする機会はないかもしれませんが、テープストレージは官公庁や企業のデータセンター等で広く使われている記録媒体です。テープストレージは主にデータの書き込み・読み出し時にしか電力を消費せず、使用しないときは装置から取り出して保管することができます。そのため、オフライン保管によるサイバー攻撃の回避や、遠隔地保管による災害対策ができるといった特徴があります。

カーボンニュートラルへの意識が高まる中で、大容量化するデータをより省電力で保管することは一層重要になってきており、テープストレージは今後もその役割を担っていくと私たちは考えています。

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292
本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。

 

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