JEITAテープストレージ専門委員会コラム

ビッグデータやIoTの発展により、収集・保管されるデジタルデータは以前にも増して爆発的に増え続けています。近年では、こういったデジタルデータの長期保管を目的として磁気テープを選択いただく方も増えてきました。
磁気テープはメディア1本あたりの記録容量が非常に大きく、またテープドライブから取り出し外部保管できるという可搬性のメリットもあって、長期保管用途に適している記録メディアです。この「大容量」「可搬性」という特長に加え、大切なデータの長期保管を考える上でもう一つ知っていただきたい磁気テープの特長があります。 それは「高信頼性」です。

たとえば、LTO規格の最新世代LTO8では、テープメディア1本に12TBのデジタルデータを保管できますが、これはビット数に換算すると約96兆個にあたります。当然、その96兆個のうち1ビットたりとも間違えずに正確に記録できなければなりません。
さらに前述の通り、磁気テープはその可搬性を活かし別地へ輸送し、倉庫棚など外部での長期保管といった使われ方をします。このような使用環境下においても、ユーザーからはデータを保持し、再びデータを確実に読み取れることが求められるのです。
これらの要求を達成するため、磁気テープストレージには高い信頼性を支える多くの技術が活用されています。今回はこの信頼性を支える技術について、一例をご紹介いたします。

まずはデータの書込みについて考えてみましょう。
データの書込みにおいて最も重要なのは、データが記録メディアに、読取りが可能な状態で確実に書き込まれることです。これを実現するため、データの書込みを行うLTOテープドライブには「Read While Write」と「Rewrite」という2つの技術が実装されています。

「Read While Write」はテープにデータを書き込んだ直後に、書いたデータがテープから読み取れるかを確認する機能です。LTOテープドライブの磁気ヘッドモジュールには複数の書込み用ヘッドが並んでおり、それぞれの書込み用ヘッド直後には読取り用ヘッドが備え付けられています。書込み用ヘッドがテープへデータ書込みを行った直後に、読取り用ヘッドがテープからそのデータの読取り確認を即時に行う仕組みになっており、書き込んだデータが確実に読み取れることを確認した上で”書込み動作完了”となるのです。

では「Read While Write」の動作で書込みデータが読み取れない場合はどうなるでしょう。そこで行われるのが「Rewrite」です。文字通り書き直しを行う機能ですが、単にデータの書き直しを行うわけではありません。先ほど書き損じをした書込み用ヘッドとは別の書込み用ヘッドを使い、テープ上の別の場所にデータを書き直します。
たとえばテープ上の一部箇所が物理的なキズなどで書込み不可となっていたとしても、異なる場所に書込みを行うことによりデータの書込みは確実に行える、これが「Rewrite」機能の特長です。
「Read While Write」と「Rewrite」によってLTOテープドライブはテープへの確実なデータ書込みを実現します。

続いてデータの読取りについて考えてみましょう。
確実にテープメディアに書き込むことができたデータですが、長期間に渡る保管や高温・高湿・埃などの外的要因により、記録された磁気信号の読取りが困難になる可能性は捨てきれません。

そのような場合でも、LTOテープドライブは記録したデータを正確に読み取ることができます。そのための機能の一つが「ECC (Error Correction Code)」です。
「ECC」はテープに記録されるデータから計算したパリティと呼ばれる値をデータと一緒にテープに書き込んでおき、データの一部が読めなくなった場合にはこのパリティと残ったデータをもとにデータ再生を行う機能です。LTOに限らずデータを保管するストレージには様々な種類の「ECC」が採用されていますが、中でもLTOの「ECC」は極めて強力で、データの約15%が読み取れなくなってもデータを再生ができるほどのエラー訂正能力を備えています。
あわせて「ECC」を補完する「インターリーブ」という手法も適用されています。 これはパリティ計算元となるデータをテープメディア上に分散させて書き込むことで、 テープの部分的な物理的ダメージ等により「ECC」でも訂正できないような連続したエラー発生の可能性を低減するものです。

このようにテープドライブは、書込みデータを確実にテープメディアに書き込むための 機能と、書き込まれたデータに多少の損傷が生じていても正しくデータを読み取る機能を備え、高い信頼性を提供することを実現しています。

今回ご紹介しました、「高い信頼性を支える技術」はJEITAテープストレージ専門委員会のホームページでより詳しい情報をご覧いただけます。

 

図解もあり、わかりやすく解説されておりますので是非一度ご覧ください。
・JEITAテープストレージ専門委員会ホームページ
https://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292
・テープシステム技術資料 「第5章 ライト・リードの高い信頼性を支える技術 (PDF)」
https://home.jeita.or.jp/upload_file/20110908181308_34jzwpY2GE.pdf

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。

 

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