JEITA磁気記録媒体標準化専門委員会コラム 「転写と巻き直し」

最近はグリーンストレージのキーワードで、テープストレージはビット単価が安い(経済的)ということだけでなく、保管時には電力を消費しない(CO2の排出がない)という地球環境の面から見直されています。一方、オープンテープを使用していた時代の人たちの中にはテープの使用に不安をもっている方々がまだまだいらっしゃるようで、時々次のような質問を受けます。それは、磁気転写と巻き直しという問題です。CD/DVD世代の方々には何のことかわからないかもしれませんが、二昔前のテープストレージ(オーディオレコーディングを含め)では結構大きな問題となっていたんです。

まず、磁気転写について、「テープストレージの製品動向―2008年度版-(PDF)」のP15に図がありますので、参照ください。磁気転写がどんな問題だったかというと、磁性層から発生する磁力が、巻かれているテープの上下の磁性層にまで影響を与えるという現象です。オーディオテープでは、何秒か前や後ろの音が小さく聞こえてくるあの現象です。オープンリールテープはテープの厚みが40μm程度でしたが、記録波長が長いため磁力は100μm以上にわたって上下のテープ層に影響をあたえ、磁気転写の問題が発生していたんですね。しかし、現在のLTOに代表されるデータテープでは、テープ厚がオープンテープに比べ1/6程度の薄さになっていますが、それ以上に記録波長が短波長化(高記録密度化)され磁力の影響は1μm以下となっているので、転写の問題ははっきり言って発生しません。

次は巻き直しについてです。オープンリールテープを使ったことがない人も、オーディオカセットやVHSカセットを使ったことはあると思います。こういったテープを長持ちさせる一つの方法として一年に一回位テープを巻き直して空気に触れさせる。そうすることでテープ同士が張り付いて走らなくなるとか、磁性層が劣化してはがれることを避けることができると言われていました。最近のテープシステムでは、大きく分けて次の三つの技術的進歩により、テープの 巻き直しは必要無くなっています。

一つ目は、テープの走行テンションが低くなっているということです。昔のテープドライブは、テープテンションを高くしてテープをしっかり張っていないと、テープとヘッドの接触がうまく取れないという問題がありましたが、最近のドライブはオープンリールテープの時代の1/4位の低テープテンション化を実現しているので、テープの巻き圧を大きく下げることができています

二つ目は、磁性層の化学的安定性の向上です。テープメーカーの技術屋さんは、テープの高記録密度化と信頼性の改善に向けて日夜努力をしてきました。その成果として、最近のテープでは、昔のテープに比べ大きく長寿命化が達成できています。昔みたいに、磁性層に粘着性が出てきて張り付くなんて事は気にしなくて大丈夫です。近々LTOテープメーカー5社で実施した、テープの保管寿命試験結果をご紹介できると思います。期待していてください。

三つ目は、バックコーティング技術です。バックコーティングとは、磁性層(記録層)の反対側の面に塗布する技術です。このバックコートを施すことにより、テープが巻かれた状態での磁性面への影響を小さくしてくれます。細かいことを言うとちょっと違うのですが、バックコート層がクッションの役割を果たしているみたいな感じでイメージしてください。以上の説明は、「テープストレージの製品動向―2008年度版-(PDF)」のP16にありますので、参照ください。

こういった技術の向上により、テープは長期保管をする場合、巻き直しを行う必要はなくなっています。但し、保管環境は、高温多湿やごみ/ホコリの多いところを避けるのは今も昔も同じですので、テープ保管環境はあまり手を抜かないようにしてくださいね。

次回は、データ保管法制・規制への対応の最新版のご紹介を予定しています

※JEITA磁気記録媒体標準化専門委員会からのお知らせ

今回紹介しました「転写と巻き直し」の詳細は「テープストレージの製品動向」の2008年度版に追加されています。

資料は、以下のURLからアクセスできます。
http://home.jeita.or.jp/is/committee/tech-std/std/com02.html
「テープストレージの製品動向―2008年度版-(PDF)」

[参考]
電子情報技術産業協会 磁気記録媒体標準化専門委員会のホームページ
http://home.jeita.or.jp/is/committee/tech-std/std/com02.html




(社)電子情報技術産業協会(JEITA) 磁気記録媒体標準化専門委員会
イメーション(株) 西田 博光