JEITA連載寄稿

テープ媒体とデータ保管法制・規制への対応

ご存知の通り、日本でも日本版SOX法とも言うべき金融商品取引法が2006年6月に成立し、2008年4月以降に始まる会計年度から実施されています。他にもe-文書法、個人情報保護法、会社法などITを利用した情報の保護、管理や内部統制が義務付けられる時代になりました。

では情報の保護、管理や内部統制においてITが果たせる役割にはどのようなものがあるでしょうか?今回の法規制で課題となると考えられる3つの内部統制として、業務プロセス統制、IT業務処理統制、IT全般統制が上げられます。その中で具体的にIT部門が取り組まなければいけないものの一つが、子会社やグループ会社を含めた情報共有のための全社的なITインフラの構築とそれらを実現するためのITサービスの提供です。全社的に情報を共有するためには、その情報の元となる”データ”が保護、管理されている事、さらにその情報に常にアクセスできる事がとても重要となります。

一方ではe-文書法によって保管を義務付けられている文書の電磁化(電子的、磁気的)が認められるようになりました。それによって電子的、磁気的に記録されたデータを如何に安全且つ確実に保管するかが大きな課題となってきています。そのような課題の解決に大きな力を発揮するのが磁気テープです。

磁気テープの特徴として、
1) 容量あたりの価格が比較的廉価である。
2) 容量あたりの消費電力が小さいこと。
3) 長期保管可能なアーカイブ媒体として適している。
4) WORMの機能によってデータの改竄が防止できる。
5) 暗号化の機能によってデータの機密性を強化できる。

などがあります。特に環境や地球温暖化の問題が注目を浴びエコという言葉を聞かない日がないくらいな昨今、一度データを記憶させてしまえばテープのカートリッジを棚に置いておくだけでエネルギーを消費しない磁気テープはとても魅力的な記憶媒体と言えます。

日本版SOX法の実施により全社で共有されるべき重要なデータのバックアップを取ることは当然ですが、確実を期すために記録媒体の二重化や災害を考慮に入れた記憶場所の二重化も必須となります。更に言えば、万が一の際にバックアップを取ったデータを即時に復旧できるリカバリー体制も確立しておく必要があります。これらの二重化を考える際に磁気テープは記録媒体を考える上で有力な候補になりえます。

社内のデータのバックアップだけではなく、お客様に関するデータの長期保存という観点も年々重要度を増しています。お客様に関するデータを改竄される事なく、安全に長期的に保管する事が求められているわけですが、そこでも磁気テープの特長を生かしたデータ保管が効力を発揮すると考えます。

次回は「テープドライブの最新技術(テープ走行速度の動的コントロール)の紹介となります。



(社)電子情報技術産業協会(JEITA) 磁気記録媒体標準化専門委員会
日本アイ・ビー・エム(株) 尾関 和弘