ソリッドステートストレージの最新動向

著者:Jacob Gsoedl
Storage Magazine 2009年9月号より


ソリッドステートストレージは、現時点ではまだ主として、強力なパワーを必要とするアプリを使い、また資金に余裕のある企業が採用するのみではあるが、新技術の開発によって、近いうちにより身近なものとなる可能性がある。

 ソリッドステートストレージは今年に入って大きな注目を集め、ストレージベンダの大多数が自社の製品ラインアップにソリッドステートドライブ(SSD)をオプションに追加し、その結果、エンタープライズ向けのSSDコンポーネントの販売台数は急増している。米国コネチカット州スタンフォードを本拠とするGartner Inc.によると、2008年中の販売台数は世界全体でわずか59,000台であったが、2013年までに合計販売台数は510万台、収益にして20億ドルに達すると予想されている。NAND型フラッシュメモリの価格は昨年以来約30%下落し、今後も毎年同じペースで下落し続けると予測されているものの、それでもまだハイエンドのディスクドライブに比べて10倍程度も高価である。その価格の高さから、顧客は依然としてNAND型フラッシュメモリの採用に慎重な態度を見せており、レイテンシー(回転待ち時間など)を許容できないアプリケーションや非常に多くのIOP数が必要なアプリケーション用途が大半である。さらにそれより以前は、スピンドル数の多い高価な大型アレイが唯一の代替選択肢だった。

 このような環境の変化により、ソリッドステートストレージが脚光を浴びてくるようになってきた。ハイエンドのファイバチャネル(FC)ドライブを収容した1台分のラックに代えて、SSDを収容した1つのエンクロージャを置くことで、総コストの削減、パフォーマンスの向上、所要電力とスペースの大幅な削減、またデータセンターの大幅なスペース縮小や運用の簡素化も可能となる。また、アクセス頻度の高いデータ用に小規模のソリッドステートストレージを持つディスクアレイを補完する形で追加することにより、アレイとアプリケーションのパフォーマンスを向上させることも可能である。ソリッドステートドライブは、SAPやOracle ERPといったOLTPアプリ、データベース、電子メールサーバ、トランザクションの多いWebサイト、さらには仮想化プラットフォームにも、大いにメリットをもたらす可能性がある。ハードディスクのI/Oとレイテンシーが制限要因となっている場合は、ソリッドステートストレージを代替選択肢として考えることができるが、SSDはギガバイトあたりのコストが高いため、大容量が必要とされるケースでは、依然としてハードディスクがストレージメディアとして選択され続けることとなるであろう。

 ソリッドステートストレージはDRAM、NAND型フラッシュメモリなど、いくつかのメモリテクノロジーに実装することが可能だが、ソリッドステートドライブで現在最も多く使用されているメモリテクノロジーはNAND型フラッシュメモリだ。エンタープライズ向けのSSD製品は通常、不揮発性メモリに加え、書き込みバッファおよびキャッシュとして機能する小容量のDRAM、ストレージインターフェース(FC、SATA、またはSAS)を備えたコントローラ、およびソフトウェアで構成される。近年、NAND型フラッシュメモリの制約が克服され、NAND型フラッシュメモリがエンタープライズ分野で現実的な選択肢となってきているのは、コントローラのインテリジェンスと独自アルゴリズムによるところが大きい。Gartnerのテクノロジー・サービスプロバイダグループのリサーチ担当ディレクターであるJoe Unsworth氏は次のように述べている。「STECは、NAND型フラッシュメモリを管理するコントローラのテクノロジーとアルゴリズムが優れていることから、今日のエンタープライズストレージ分野において圧倒的に多くの契約を獲得している。」

SSD関連用語集
ソリッドステートドライブ(SSD):回転ディスクではなく、メモリチップ、多くは不揮発性NAND型フラッシュメモリを使用したデータストレージデバイス。機械的な部品を必要としないことから、ディスクドライブに比べてレイテンシーが小さく、消費電力が低く、また耐障害性に優れているという利点がある。
フラッシュメモリ:書き換え可能な不揮発性メモリ。DRAMと異なり、書き込みの前にデータブロックを消去する必要があるため、読み取りに比べて書き込みの性能は劣る。使用されているテクノロジーにより、フラッシュメモリの書き換え回数は一定数に制限される。フラッシュメモリにはNOR型とNAND型があるが、NAND型のほうがNOR型に比べて耐久性が高く、安価で、セル密度が高く、また書き込みと消去の速度が速いため、SSD製品では一般にNAND型が使用される。
シングルレベルセル(SLC):SLC NAND型フラッシュメモリでは、1つのセルにつき1ビットのデータを保持する。その耐久性の高さ(1つのセルにつき約100,000回の書き換えが可能)の反面、コストも高いことから、SLCはエンタープライズ向けのSSD製品で最も多く使用されている。
マルチレベルセル(MLC):MLC NAND型フラッシュメモリでは、1つのセルにつき2ビット以上のデータを保持する。耐久性はSLC NAND型の約10分の1であるが、SLC型に比べると非常に低コストなため、主にコンシューマ向け製品で使用される。最近開発された1セルあたり3ビット(1,000~5,000回の書き換えが可能)や1セルあたり4ビット(200~300回の書き換えが可能)のNAND型フラッシュメモリは、書き換え回数がきわめて限定されたアプリケーションを対象として使用される。

NAND型フラッシュメモリとSSDの課題

DRAMと異なり、NAND型フラッシュメモリは不揮発性であり、ハードディスクと同じようにデータを保持できるが、ハードディスクのように故障しやすい機械部品は存在せず、また消費電力も一般にハードディスクよりはるかに低い。しかしこれらの利点が帳消しになってしまうほどの欠点もあり、ストレージ業界は数年間にわたりこの欠点を改善しようと努力してきた。その欠点とは、次のようなものだ。

・NAND型フラッシュメモリの耐久性の課題
・NAND型フラッシュメモリの書き込み性能の低さ
・ソリッドステートドライブを効率的にサポートできるソフトウェアの不足
・機械的なディスクを想定して設計されたストレージシステムのアーキテクチャ上の問題

NAND型フラッシュメモリの耐久性の問題

NAND型フラッシュメモリの最も深刻な課題は、セルの摩耗だ。これによりセルの耐用年数が限定され、書き換え可能回数が非常に限定される。コンシューマ向けのマルチレベルセル(MLC)フラッシュメモリでは1セルあたり約10,000回の書き換えが可能である一方、エンタープライズ向けのシングルレベルセル(SLC)フラッシュメモリでは1セルあたり100,000回の書き換えが可能である。この上限を超えるとそれ以上の使用はできない。摩耗の問題は、密度が高くなるほど深刻化する。コンシューマ向け製品に使用される1セルあたり2ビットのMLCフラッシュメモリでの10,000回という書き換え可能回数も、新しく開発された1セルあたり3ビットのフラッシュメモリの1,000~5,000回や、1セルあたり4ビットのフラッシュメモリの200~300回という数字に比べればまだ余裕があるように見える。データストレージ業界はこれまで、この「密度が高くなるにつれてコストも耐久性も低くなる」というNAND型フラッシュメモリの単純な法則に対抗しようと奮闘してきた。

SLC NAND型フラッシュメモリがエンタープライズストレージの要件に対応できるようになり、エンタープライズ分野で受け入れられた今、ストレージベンダ各社は、MLC型フラッシュメモリをエンタープライズ分野に投入することによって、さらにコストを下げようとしている。具体的には、SLC型フラッシュメモリの競合製品として1セルあたり2ビットのMLC型フラッシュメモリや、またデータアーカイブなど、書き換えが少なく、読み取り機能に重点を置くアプリケーション向けに1セルあたり3ビットや4ビットのフラッシュメモリを投入しようとしている。

「問題は、MLC型フラッシュメモリがエンタープライズストレージシステムで使用可能かどうかということではなく、受け入れられるコストでそれを実現するにはどうすればよいかということだ」と米国マサチューセッツ州ミルフォードにあるEnterprise Strategy Group(ESG)のアナリストであるMark Peters氏は述べている。現在、エンタープライズ分野でMLCフラッシュメモリが使用されている例は既にいくつかある。最も顕著な例は、Hewlett-Packard Co.(HP)のHP BladeSystem c-Class向けのStorageWorks IO Acceleratorだ。これは直接接続型ソリッドステートストレージアレイの拡張カードで、Fusion-ioのioDriveをベースとしており、容量に応じてSLCフラッシュメモリとMLCフラッシュメモリの両方を使用できる。

エンタープライズ向けのソリッドステートドライブを製造するベンダ各社は、さまざまな手法を駆使して、現在の機械的なディスクドライブの耐用年数と耐久性に匹敵する、さらにはそれを凌ぐ製品を提供することを目指してきた。SSDドライブの保証期間が3~5年(SSDベンダによる)、平均故障間隔(MTBF)が100万時間超となった今、エンタープライズ向けのSSDドライブは少なくともハイエンドのディスクドライブと同等の耐久性を備えているといえる。

「今のSSDドライブにはハイエンドのFCドライブと同等の信頼性があると考えている。」Hitachi Data Systemsのストレージアーキテクチャ担当最高技術責任者(CTO)であるClaus Mikkelsen氏はこうコメントしている。このように高度な耐久性を達成できたのは、書き込み回数を減らすとともに書き込みをフラッシュメモリのセルに均等に分散する数々の高度なウェアレベリングアルゴリズムを考案し、これらのアルゴリズムをソリッドステートドライブのコントローラに実装したためだ。空き領域(一般的には使用可能領域の20%~100%)を利用して、セルが一定期間に書き換えられる回数を減らし、さらに機能不良となったセルと置き換えるための余剰領域を確保したことで、耐用年数の延長を実現した。また、効率を最大限に高め、1セルあたりの書き換え回数を減らすため、圧縮アルゴリズムやデータ重複排除アルゴリズムも使用している。さらにハイエンドのハードディスクと同様、高度なエラー訂正アルゴリズムを使用して不良ブロックの検出、修正、および隔離を行う。「エラー訂正符号(ECC)は以前は512バイトのブロックにつき4~5ビット占有していたが、今は6~8ビットが一般的であり、12ビットになる日も近いだろう」とGartnerのUnsworth氏は説明している。

NAND型フラッシュメモリの書き込み性能の低さ

NAND型フラッシュメモリのもう1つの重大な短所は、読み取りと書き込みの性能の比率が偏っていることだ(下記の「NAND型フラッシュメモリを使用したソリッドステートドライブとディスクドライブの比較」を参照)。エンタープライズ向けSSDでは、持続して1秒あたり40,000 I/Oを超える読み取りが可能だが、それに対し書き込みはその3倍から4倍遅い。このような差が見られるのは、NAND型フラッシュメモリでは、書き込みの前にブロックを消去する必要があり、その結果オーバーヘッドがかなり増えるためだ。NAND型フラッシュメモリを採用しているストレージにおいて、消去されたセルが使用できる間は高い書き込み性能が見られるものの、消去されたセルが使用できなくなっていくと、書き込み性能が2倍~3倍低下してしまう原因はここにある。

NAND型フラッシュメモリを使用したソリッドステートドライブとディスクドライブの比

  NAND型フラッシュメモリ使用SSD ディスクドライブ
1秒あたりI/O(連続) 読み取り: 45,000+
書き込み: 15,000+
数百
レイテンシー(ミリ秒) 読み取り: 0.2+
書き込み: < 1
4+
GBあたりのコスト 高い 低い
IOPSあたりのコスト 低い 高い
耐障害性 高い 低い(機械部品が原因)
電力消費 低い 高い


Texas Memory Systemsの社長であるWoody Hutsell氏は、「NAND型フラッシュメモリを使用したSSD製品では、最初の15分から20分は高い書き込み性能が見られるが、そのような一時的に短時間だけ高くなる性能ではなく、持続的な性能を比較することが重要だ」と注意を促している。 STECのZeus IOPSソリッドステートドライブは、同社によると読み取りIOPS最大52,000、書き込みIOPS最大17,000を持続的に達成可能で、現在エンタープライズストレージ分野で他のSSD製品との比較対象として使用されるようになったという。HPのストレージプラットフォーム部門のHP StorageWorks担当マーケティングディレクターであるKyle Fitze氏は、「STECの最新ドライブでは、書き込み性能もエンタープライズに対応できるレベルとなったが、まだ読み取り性能と肩を並べるほどには至っていないのは事実だ」と指摘している。残念ながら、エンタープライズ向けのSSD製品に関する独立した第三者機関によるテストは現時点では行われていないため、ベンダが主張する性能の数値は多少割り引いて考える必要がある。

読み取り性能と書き込み性能のギャップを克服するため、大半のベンダは、書き込みバッファとして機能する小容量のDRAMキャッシュを採用している。つまり、データはまずキャッシュに書き込まれてから、NAND型フラッシュメモリに書き込まれる。「DRAM書き込みバッファによって、読み取り性能とのギャップが完全に解消されるわけではないが、読み取り性能に近づけることはできる」と、IBM System StorageのチーフテクニカルストラテジストであるClod Barrera氏は述べている。DRAMは、ギャップの解消に役立つとはいっても、電源障害に備えてキャッシュ内の揮発性データをバックアップしなければならないという複雑さが増し、貴重な容量スペースにも影響が出る。「1.8インチのドライブとカスタムフォームファクタに移行すれば、ユーザはセル密度を最大限に活用したいと考えるだろう。DRAMは明らかにその妨げとなる」と、SSDプロセッサを開発するSandForce Inc.のマーケティング担当バイスプレジデントであるThad Omura氏は述べている。

このような欠点があることと、NAND型フラッシュメモリの書き込み性能の問題を完全には克服できないことから、最近の革新的なソリッドステートドライブの開発では、DRAMを書き込みバッファとするアプローチを避ける傾向にある。読み取り・書き込みともに100,000超のIOPSを達成すると断言しているPliant Technology Inc.のEnterprise Flash Drives(EFD)、既に市場で入手可能なTexas Memory SystemsのRamSan-620(同社のHutsell氏によると、読み取り・書き込みともに持続して250,000のIOPSを達成可能)では、DRAMを書き込みバッファとして採用してはいない。同じようにMLCデバイスとSLCデバイス両方のインターフェースを備えるSandForceのSSDプロセッサファミリSF-1000でも、DRAMは採用していない。この3社のベンダはみな一様に、書き込み性能のギャップの克服、サポートするIOPS数の増加の鍵を握るのは並列処理だと口を揃えて強調している。

Pliant Technologyのマーケティング担当バイスプレジデントであるGreg Goelz氏は、次のように説明している。「当社では、カスタム並列処理プロセッサとして設計されたASICによって、未使用ブロックの事前消去などの多くの事前処理機能を実行することにより、読み取り性能と同等の書き込み性能を実現できた。」

SSDをサポートするソフトウェアの不足

NAND型フラッシュメモリは目覚ましい進歩を遂げ、その問題点は克服、あるいは少なくとも軽減されているが、ソリッドステートストレージを管理し効率的に活用するためのソフトウェアサポートのほうの開発が遅々としてなかなか進まず、このことがエンタープライズ分野でのSSDの採用が急速に進まない原因の1つとなっている。ソリッドステートドライブの価格の高さという障壁に対抗するには、ストレージシステム内において、高速なSSD層と低速のディスク層の間で自動的かつ透過的にデータを振り替えることにようなSSDを最大限に活用できる機能が必要である。アクセス頻度の高いデータはソリッドステートストレージに格納し、また比較的静的なデータをディスクに格納して、高速だが高価なSSD層とディスク層の間で、ポリシーベースでデータを移行させることの必要性と重要性は、大半のストレージベンダが認識しているものの、実際いはこれら自動化されたソリューションを提供できているベンダはわずか数社だ。

その先頭に立っているのが、Compellent Technologies Inc.のストレージエリアネットワーク(SAN)製品Storage Centerである。この製品では、Dynamic Block Architectureが、すべてのデータブロックの特性と使用状況を追跡する。このメタデータ情報をData Progression機能が利用して、ブロックへのアクセス頻度に応じてSSD層からディスク層に、またはディスク層からSSD層に自動的にデータを移動する。

「当社のData Progression機能は、SSDのキラーアプリとなる。ユーザは既存のシステムにドライブを追加し、あとは自動化を有効にするだけで済むからだ」とCompellentのプロダクトマーケティング担当ディレクターであるBob Fine氏は述べている。エンタープライズストレージベンダの大多数の製品では、Compellentと異なり、ソリッドステートドライブ層とディスク層の間のデータ移行は2段階の手動プロセスに依存している。つまり、まずI/Oアクティビティを分析してから、次にSSD層またはディスク層にデータを移行する、というプロセスだ。今までこの手動プロセスを採用していたEMC Corp.は、先日Fully Automated Storage Tiering(FAST)という機能を発表した。2009年中に同社のSymmetrix V-Maxシステム向けに提供開始される予定である。FASTでは、ビジネスポリシー、予測モデル、およびリアルタイムのアクセスパターンに基づき、複数のストレージ層間のデータの移行が自動化される。IBMでは、Data Facility Storage Management Subsystem(DFSMS)によりSSDへの自動データ移行をサポートしているが、この機能はメインフレームのz/OSプラットフォームとDS8000ストレージでしか利用できず、他のシステムでは依然として2段階の手動プロセスである。

Sun Microsystems Inc.のSun Storage 7000 Unified Storage Systemsと、NetApp Inc.のPerformance Acceleration Modules(PAM)搭載ファイラーはいずれも、NAND型フラッシュメモリをディスクの代用としてではなくキャッシュとして使用することによって、ソフトウェアの課題をストレージアーキテクチャのレベルで回避して解決している。その結果、SSDは両社のストレージアーキテクチャとファームウェアに緊密に組み込まれ、2つの層の間でデータを振り替える必要がなくなり、すべてのデータとアプリがソリッドステートドライブのメリットを享受できるようになった。「当社では、Storage 7000をお使いのお客様の稼働データがすべて、フラッシュメモリに格納されるようにしたいと考えている」と、Sunのフラッシュメモリ担当主席技術者であるMichael Cornwell氏は語っている。

SSDのアーキテクチャ

現行のストレージシステムは、機械的なディスクドライブの限界を乗り越えること、特に機械的ディスクのレイテンシーの高さとサポートされるIOPS数の少なさの影響を解消することを目指して設計されてきた。SSDの出現とともに、この基本的な理念は変化し、今度はストレージコントローラの容量の限界が制限要因となってきた。ディスクドライブを単にSSDに置き換えるだけでは、追加するソリッドステートドライブが多ければ多いほど、ストレージシステムに過大な負荷がかかるおそれがある。米国ミネソタ州スティルウォーターにあるStorageIO Groupの創業者でありシニアアナリストであるGreg Schulz氏は、「ストレージコントローラはまだSSDという新たな性能要件に適応しようと動き始めたばかりであり、顧客はどれくらいの数のSSDを追加できるかについて、ストレージベンダの推奨事項やガイドラインに注意を払う必要がある」と述べている。

ストレージシステムをソリッドステートストレージで補完する方法として、現時点では次の4つの方法がある。

1. ディスクドライブの代わりにSSDドライブを追加する
2. ストレージコントローラでキャッシュとしてNAND型フラッシュメモリを使用する
3. ストレージコントローラではなくサーバでNAND型フラッシュメモリを使用する
4. スタンドアロンのSSDアレイを使用する

ディスクドライブの代わりにSSDドライブを追加する:既存のアレイにソリッドステートドライブを追加するという最も簡単かつ一般的な方法であり、ファイバチャネル、SATA、またはSASインターフェースを介してSSDを追加するという方法である。この方法では、厳密なテストと適格性確認は必要であるものの、ベンダは既存のものを活用できるため、ストレージシステムへの変更がほとんど必要ない。SSD層とディスク層の間の自動データ移行ができない、現行のストレージコントローラではパフォーマンス上制約があるというのがこの方法の2大欠点ではあるが、大半のストレージベンダがこの方法を採用している。EMCを始めとして、Compellent、富士通、HP、Hitachi Data Systems、IBM、LSI Corp.、Pillar Data Systems、Sunその他多数の小規模アレイベンダが、自社のアレイの一部で、ハードディスクに加えてSSDドライブを提供するようになった。これらのベンダの圧倒的大多数は、第1世代のSSDとしてSTECのドライブを採用しているが、これはおもにSTECがエンタープライズストレージの要件に対応できた最初のベンダだったことによる。Seagate Technology LLCのようなディスクドライブベンダ、Pliant TechnologyやSandForceのような前途有望な新興企業、およびIntel Corp.がエンタープライズストレージ分野に狙いを定めるようになっており、STECの優位性は今後試されていくことになるだろう。

ストレージコントローラでキャッシュとしてNAND型フラッシュメモリを使用する:NetAppとSunは、NAND型フラッシュメモリをキャッシュとして利用している。これにより、両社はSSD層とディスク層の間の自動データ移行に関するソフトウェア上の問題を克服した。NAND型フラッシュメモリを組み込むためにストレージアーキテクチャの変更を行うことで、追加するソリッドステートドライブ数が多い場合でもアレイに過大な負荷がかかる可能性を排除した。ディスクドライブをなくす代わりにNAND型フラッシュメモリをディスクドライブのフロントエンドに置くことにより、SSD層内にあるデータだけでなく、すべてのデータとアプリがSSDの利点を享受できるようになった。
NetAppは、利用可能なPCI Expressスロットを備えたあらゆるNetApp製ファイラーに追加できるPerformance Acceleration Module(PAM)を提供している。コントローラに応じ、最大5個のモジュールを統合キャッシュとしてインストール可能で、現時点では80 GBが上限となるが、2009年中に高密度PAMカードが発売されれば512 GBまで可能になるという。PAMはメタデータのキャッシュにのみ使用される予定で、「メタデータのコピーをストレージコントローラ上のフラッシュメモリに格納することにより、一般的な作業負荷については30%から50%のパフォーマンス向上が見られる」とNetAppのソリューションマーケティング担当バイスプレジデントであるPatrick Rogers氏は述べている。さらに、「PAMやSATAドライブを備えたファイラーは、FCドライブを備えたファイラーに代わる現実的な選択肢となりつつある。格段に低いコストで、同等のパフォーマンスが得られるからだ」と同氏は述べている。

NetAppと異なり、SunのSun Storage 7000 Unified Storage Systemでは、メタデータだけでなくすべての読み取りと書き込みをキャッシュするものとしてフラッシュメモリが使用されており、その結果フラッシュメモリをサポートするアーキテクチャとしては特に先進的な内容となっている。

Sun Storage 7000 Unified Storage Systemは、x86プラットフォーム上で、最適化されたストレージスタックと、DRAMキャッシュ、SSD、および機械的ディスクを組み合わせたHybrid Storage PoolをサポートするZettabyte File System(ZFS)を備えたSolarisを実行するものだ。ソリッドステートドライブは、DRAMベースのAdaptive Replacement Cache(ARC)とSATAドライブの間に配置されている。ファイルシステムがシステム障害からリカバリするための書き込みジャーナルを保持するZFS Intent Log(ZIL)は、書き込み用に最適化されたSSDに書き込まれる。L2ARCキャッシュは、読み取り用に最適化されたSSDで構成され、DRAMベースのARCキャッシュを拡張して読み取り処理に対応する。L2ARCの目的は、稼働データをメモリに保持し、ディスクへのアクセスを減らすことであり、数百ギガバイトのサイズになることもある。このようなHybrid Storage Poolにより、Sun Storage 7000 Unified Storage Systemは、Sunによれば800,000を超えるIOPSに対応可能だということである。

ストレージコントローラではなくサーバでNAND型フラッシュメモリを使用する:Sun Storage 7000 Unified Storage Systemはスタンドアロンのストレージシステムであるが、フラッシュメモリはストレージコントローラではなくサーバに属するものだと主張する人々の言い分を代弁するシステムであるといえる。「L2キャッシュがCPU上のメモリを拡張し、DRAMがL2キャッシュを拡張するのと同じように、フラッシュメモリはDRAMの拡張を意図したものだ」とFusion-ioの最高技術責任者(CTO)であるDavid Flynn氏は説明している。Fusion-ioのioDriveとioDrive DuoというNAND型フラッシュメモリPCI Expressカードは、サーバのための直接接続型ストレージ(DAS)を構築する。ストレージも販売するサーバベンダであるSunは、サーバこそがフラッシュメモリに適した場所であるという意見に同意している。「フラッシュメモリは、サーバアーキテクチャの世界に大きな変革をもたらすものだ。次世代サーバはフラッシュメモリでDRAMキャッシュを拡張することになるだろう」とSunのCornwell氏は述べている。

スタンドアロンのSSDアレイを使用する:従来型のストレージアレイと並行して稼働するSSDベースのストレージシステムでディスクアレイを補完する方法は、ソリッドステートストレージをストレージ環境に追加する方法としては最も悪影響が少ない。スタンドアロンSSDアレイのベンダとして先行しているのはTexas Memory Systemsである。DRAMベースとNAND型フラッシュメモリベース両方のSSDアレイを提供する同社は、RamSan製品ファミリを、直販またはBlueArc Corp.、NetAppなどのOEMパートナーを通じて販売している。スタンドアロンのソリッドステートシステムの短所は、既存のアレイコンポーネントを利用できないため、コストが高くなりがちであることだ。さらに、他のアーキテクチャによるアプローチに比べてディスク層との統合が弱いため、ソリッドステートドライブ層とディスク層の間のデータ移行の課題を克服することがいっそう困難になっている。

ソリッドステートの今後の展望
ソリッドステートストレージは、エンタープライズレベルのシステムにおいて役割を担い始めたばかりだが、その勢いはもはや誰にも止められない。エンタープライズストレージシステムは、トランザクション系の変化の多いデータを格納するソリッドステートドライブ層と、比較的静的なデータを格納する大容量のSATAディスク層という2層構造のアーキテクチャへと移行しつつある。NAND型フラッシュメモリの限界の一部を克服した技術革新が継続され、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)などの新興メモリテクノロジーがやがてNAND型フラッシュメモリに取って代わるにつれて、今度は、ソリッドステートドライブをシームレスに統合し効率的に利用することのできるストレージアーキテクチャがないことが、SSDの急速な普及を妨げる真の課題として浮上してくるだろう。

略歴:Jacob Gsoedlは、フリーランスのライターで、ビジネスシステムを取り扱う企業の取締役も務める。連絡先はjgsoedl@yahoo.com。

ストレージマガジン 2009年8月号

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