ネットワーク・ストレージの選択肢となる
iSCSIソフトウェア
Storage Magazine 2008年12月号より
成長著しいiSCSIソフトウェア市場により、ネットワーク・ストレージは新たな境地を開拓しつつある。それは、ブレード・サーバのマーケットや、今までならSANを買う余裕のなかった小規模な企業のマーケットである。
2008年の夏から秋にかけて2件の企業買収が行われた。Double-Take SoftwareがiSCSI SANブートとSAN仮想化のソフトウェアを提供するemBootを960万ドルで買収した。さらに、Hewlett-Packard(HP)がiSCSI SANソフトウェアを提供するLeftHand Networksを3億6000万ドルで買収した。
Double-Take SoftwareとHPは沢山のベンダーがいるマーケットに飛び込んだ。 そこでは、スタートアップ企業から経験豊富な企業までが、コモディティとなったハードウエアをネットワーク・ストレージに変えてしまう安価なiSCSI SANターゲット・ソフトウエアを提供している。ベンダーとしては他にDataCore Software、Microsoft、Open-E GmbH、Seanodes、StorMagicがいる。
Double-Take Softwareのソリューション・エンジニアリング部門ディレクターのBob Roudebush氏は次のように述べている。「中小企業向け市場はiSCSIが実際に根付いている場所だと見ている。当社の考え、およびiSCSIに注目している顧客から聞いた、その大きな利点はコストにある。ソフトウェアは非常に安価に市場に提供できる。
Roundebush氏は、ホストベースのレプリケーション・メーカーであるDouble-Take SoftwareがemBootに最も注目していたのは、同社がSANブート機能と、ストレージとサーバの負荷をネットワークに分散できる機能を提供していたからだと認めている。そこに、「SANストレージの新たな需要」が発生している。テスト、開発環境や仮想デスクトップのようなアプリケーションに注目した、新たな用途では、自由に設定したり削除できるような柔軟で簡便なiSCSIを必要としている。
HP StorageWorksのマーケティング・ディレクターのLee Johnsは、LeftHand NetworksのソフトウェアベースのiSCSIへのアプローチ(典型的には業界標準のサーバや仮想サーバ・アプライアンスに事前組込されて提供される)は 、今回の買収がまとまれば、HP製品のラインアップの中でももっとも柔軟性のあるものになる、と語っている。
Johns氏は、次のように述べる。「お客さまは沢山のディスク・アレイを持っている。iSCSIソフトウェアの魅力は、ブレード・サーバのように、これまでの投資をさらに活用出来ることだ。」
iSCSIは中規模企業向けと見なされていたが、ソフトウェアベースのiSCSIはハードウェアベースの製品には手が届かなかった小規模な企業にも手の届くものとなり始めている。
2007年末まで、米国アリゾナ州トゥーソンに本拠を置く害虫駆除会社、Truly Nolen of Americaはある問題を抱えていた。DASを備えた複数のサーバが合計で約3.5TBになる容量を使い果たしそうになっていたのだ。しかも会社のサーバをVMware ESXで仮想化するためにネットワーク・ストレージが必要とされていた。
価格が安いことに加えて、ソフトウェア型のアプローチであることも、システム・エンジニアのThemis Tokkaris氏がHPのMSAストレージハードウェアを選んだ理由だった。このシステムではHPのIntegrated Lights-Out(iLO)ソフトウェアを通じて遠隔からアクセスできる。さらにソフトウェアでSANを構築すると、容量を増やすときに柔軟になるとも思われた。「緊急なニーズに対して、すぐに容量を追加できるだろう」とTokkaris氏は述べている。
米国マサチューセッツ州ミルフォードに本拠を置くEnterprise Strategy Groupの創業者およびシニアアナリストのSteve Duplessie氏にとって、サーバ仮想化ソフトウェアとiSCSIのストレージ仮想化ソフトウェアはお互いに欠かせないものだ。「LeftHandのソフトウェアは(中略)実際のところVMware用のストレージといったところだ。 Ethernetベースのストレージ・ソフトウェアは(中略)特化したストレージ・インフラストラクチャの終わりを告げる兆しかもしれない。」と彼は電子メールに書いている。
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