2010年の「ホット」なストレージ技術>

著著者:Rich Castagna、Todd Erickson、Chris Griffin、
Ellen O'Brien、Beth Pariseau、Carol Sliwa、Sue Troy
Storage Magazine 2009年12月号より


VMwareバックアップ、ソリッドステートストレージ、シンプロビジョニング、8 Gbpsファイバチャネル、プライマリストレージのデータ重複排除――これらの項目が2010年のストレージ関連課題リストに入っていないなら、入れるべきだ。

エンタープライズ向けデータストレージ技術を指して「ホット」な技術という場合、この言葉はさまざまな意味に解釈できる。「ホット」な技術は、エンジニアが研究所で実現しようと取り組んでいるが、多くの場合実際の製品が出現する(実現するとして)までには何年もかかる、という壮大な夢の可能性もある。また、まだ成熟への過渡期にあるが、現在のストレージ環境に大きな影響を及ぼす可能性のある新興技術を指して、「ホット」な技術と呼ぶ場合もある。

筆者らとしては、後者の定義を採用したい。なぜなら読者の皆さんが戦うことになるのは未来の宇宙戦争ではなく現実のストレージの戦争であって、利用可能な限りの最新の技術で武装したいだろうと考えるからだ。2010年に「ホット」な技術となると筆者らが考える5つの技術は、なじみのあるものに感じられるかもしれない。しかし、実用的となる程度には進歩しつつあると同時に、現時点ではまだ最先端といえるものだ。

データバックアップは依然として大半のストレージ組織において困難な作業の1つであり、サーバの仮想化によって従来のバックアップ業務のバランスが崩れたことで、ますます困難になった。既に本格的に波に乗っている仮想マシンバックのアップ技術の勢いは、新製品や機能強化された製品が出現するにつれてますます加速していくと筆者らは予測している。バックアップの領域から転用されたプライマリストレージシステムのデータ重複排除は、今後さらに普及して、ストレージ管理者が増加の一途をたどるストレージ容量に対応するのに役立つだろう。そしてシンプロビジョニングのような容量管理ツールを提供するベンダ(そして実装する組織)が増えるにつれて、ディスクシステムの効率向上が実現するだろう。

多くのベンダが磁気メディアの論理的な進化形として宣伝しているソリッドステートストレージについては、少々勇み足の予測ということになるかもしれない。しかし新製品の増加、価格の下落、そして関心の高まりによって、2010年には導入件数が増えると筆者らは考える。
5つめの「ホット」な技術は、革新的というよりも進歩的といったほうがはるかにふさわしい、8 Gbpsファイバチャネルだ。8 Gbpsについてはストレージアレイベンダ側で対応しなければならないことがまだあるが、2010年こそベンダが対応する年になると筆者らは考えている。


仮想サーバのバックアップ
VMware Inc.はデータセンターを席巻するかもしれないが、ストレージ管理者にとって仮想サーバのバックアップは、多くの企業がサーバ仮想化の実装に着手したことに伴って生じてきた副次的なものに過ぎなかった。仮想マシン(VM)バックアップは未熟な段階にあるが、急速に成熟しつつあるため、2010年には悩みを抱えたバックアップ管理者がある程度の安心を得られるような大きな発展があるだろう。

従来型バックアップソフトウェアのベンダは、VMバックアップという特別なニーズに迅速に対応できていなかった。依然として多くのIT組織が、VMについて従来型バックアップアプリを引き続き使用しているため、複数のエージェントライセンスの販売をもくろむベンダは、VMバックアップにまで手が回らなかったのかもしれない。

ところが、仮想サーバのバックアップという固有のニーズに、より適切に対応できる他の技術が出現した。ソース型重複排除および継続的データ保護(CDP)の製品である。これらは、バックアップデータ量を減らし、その結果I/Oの競合が発生する可能性を減らすため、仮想マシンのバックアップに適している。

GlassHouse Technologies Inc.(マサチューセッツ州フラミンガム)のサービス担当ディレクター、John Merryman氏は、CommVault Systems Inc.のSimpana、EMC Corp.のAvamar、Symantec Corp.のNetBackup PureDiskといった製品のソース型重複排除機能を「バックアップの観点からESX環境との実に緊密な統合」を実現するものと考えている。

TechTargetのストレージメディアグループ担当エグゼクティブエディターであり独立系バックアップ専門家でもあるW. Curtis Preston氏も、ソース型重複排除とCDPのいずれもがVMwareのバックアップに適したアプローチであることに同意している。どちらも、従来型バックアップツールに比べて生成されるデータの量がはるかに少ない、増分のみのバックアップというモデルに従っている。

PHD Virtual TechnologiesのesXpress、Veeam SoftwareのBackup & Replication、Vizioncore Inc.のvRanger ProといったVMに特化したバックアップ製品は、当初からVMwareのバックアップの処理を想定して設計されたものだ。それらの製品の利点としては、サーバ台数あたりでなくソケット数あたりのライセンス料金体系であること(ただし専門家やユーザは必ずしもコスト低下につながるわけではないと警告している)、仮想マシンディスク(VMDK)イメージの復旧が可能であるため災害復旧(DR)のための準備が格段にシンプルになること、VMDK内で個々のファイルの復旧が可能であることが挙げられる。従来型バックアップツールはVM内から操作するため、ファイルレベルのリストアは得意だが、VMDK全体をリストアするには複数の手順が必要となる。また、VMに特化したツールには、重複排除機能も追加されつつある。

これらの製品は勢いを増しつつある。VMwareに関する書籍を2冊執筆している仮想化コンサルタントのEdward Haletky氏は「(こういったVMに特化したバックアップツールでは)すべてがカプセル化されるため、復旧がより迅速になり、復旧もデータの移動もより容易になる」と述べている。

商用不動産会社NAI Utah(ユタ州ソルトレークシティ)のITサービス担当マネージャであるNathan Johnson氏は、初期の段階で従来型バックアップツールを避けたという。同社は、サーバ仮想化を展開すると同時にVeeamのBackup & Replicationソフトウェアを実装した。従来型ツールについては検討の対象としなかった、とJohnson氏は言う。それは「VCB(VMware Consolidated Backup)が非常に複雑であるためだ。以前よりはよくなったが、やはりシンプルなものが欲しかった。もし私の身に何か起きても、会社のだれかが私が書き残した手順に従って、簡単にバックアップを実行できるものが欲しかったのだ」(Johnson氏)。(なお、vSphere 4では、VCBに代わり、新しいストレージ統合機能と、VCBの制約の一部を克服しようとするVMware Data Recoveryが搭載されている。)

清涼飲料会社Welch's(マサチューセッツ州コンコード)は、別の道筋をたどった。ITアーキテクチャ担当マネージャであるGeorge Scangas氏によると、同社では当初VMのバックアップにCommVaultのSimpanaを使用していたという。「従来型バックアップは、仮想マシン内のファイルとフォルダをリストアする必要がある場合にはうまくいった。仮想マシン全体をリストアする必要がある場合の成功率は五分五分だった」と同氏は言う。現在、同社は仮想マシンのバックアップ用のvRanger Proと、仮想でないマシン用のSimpanaを組み合わせて使用している。vRanger ProがVMDKをディスクにバックアップし、Simpanaが物理サーバをテープにバックアップする際にそのディスクもバックアップしている。これは多くのIT組織が採用している手順だ。

従来型バックアップツールのベンダは、この状況を傍観しているわけではない。例えばHewlett-Packard(HP)とSymantecは、VMware環境と仮想でないサーバがエンドツーエンドでバックアップされるような新しいバージョンの開発に取り組んでいる。「Symantec(Veritas NetBackup)とHP Data Protectorが今の強さで市場に参入してきたとき、(PHD Virtual、Veeam、およびVizioncoreは)両社のバックアップ製品の動向を注意深く観察しなければならない」とコンサルタントのHaletky氏は言う。

2010年、VMバックアップは多くのIT組織において雑多な業務の1つとして消え去ることはないだろう。逆に、よりよいツールが出現してくると考えられる。今から1年後には、よりシンプルで効果的なVMバックアッププロセスが、大半のストレージ管理者の手の届くところにあるはずだ。


ソリッドステートストレージ
フラッシュメモリが出現したのは10年以上前だが、持続的なソリッドステートストレージメディアがエンタープライズデータストレージ製品に搭載されるようになったのはせいぜい1年半ほど前のことだ。

EMCは2008年1月に、Symmetrixアレイにソリッドステートドライブ(SSD)を導入した。それに続き、HP、IBM Corp.、Hitachi Data Systems、NetApp Inc.といった大半の大手ITベンダが、サーバ製品やストレージ製品で何らかの形のソリッドステートストレージを提供しはじめた。Compellent Technologies Inc.といった比較的小規模のベンダや、Atrato Inc.といった新興企業も、ソリッドステートストレージを、フラッシュベースのストレージ層とディスクドライブベースのストレージ層の間でデータを自動的に移行するソフトウェアに統合している。

それほどの取り組みが行われているにもかかわらず、ソリッドステートストレージをその他のIT環境と統合するにはまだなすべきことが多くある。いわばディスクインターフェースを持ったフラッシュメモリといえるSSDについては特にそうだ。Fusion-ioのPCIeカードのような他の実装形態が、ディスクインターフェースに対する代替選択肢となる。その場合ディスクアレイでなくサーバ内に置かれる。

ソリッドステートストレージの長所も短所もよく知っているのがMySpaceだ。ソーシャルネットワーキングサイトのMySpaceは先日、同社のWebポータルをホストしている大規模サーバファームの1つでシリアル接続型SCSI(SAS)ハードドライブをFusion-ioのソリッドステートデバイスにすべて置き換えた。

ソリッドステートストレージは一般に高パフォーマンスという文脈でとらえられるが、実際には、電力、冷却装置、およびサーバハードウェアの削減といった点で大きなメリットが得られる、とMySpaceの技術運用担当バイスプレジデントであるRichard Buckingham氏は言う。「6,000ドルのサーバを8台持つ代わりに、2,000ドルのサーバ1台で済み、Fusion-ioのデバイスにかかるコストを足しても十分におつりが来るので、すぐにROIを達成できる」

Buckingham氏は依然としてSSDに対しても、PCIeカードに対してもオープンな姿勢を保ってはいるが、同社が行った稼働中の展開環境に対する内部テストではまだ、その技術は十分な成熟が実証されていないという。「1つのハードドライブを取り出して、より高速な別のハードドライブを入れることは単純な作業のように思われれるが、当社の実際のワークロードでは、ドライブインターフェースの背後でSSDはそれほど高いパフォーマンスを発揮しないことがわかった」と同氏は述べている。

またBuckingham氏は、MySpaceが現在使用しているファイバチャネルストレージエリアネットワーク(SAN)インフラストラクチャを、ソリッドステートに置き換えることはすぐにはないと述べている。「SSDにはおおいに将来性があり、フラッシュが将来主流となることはほぼ間違いない。しかし、SANインフラストラクチャは当社が膨大な時間と資金を投資してきたものなので、これを破棄してSSDに切り換えることはしばらくないだろう」

Taneja Group(マサチューセッツ州ホプキントン)のシニアアナリスト兼検証サービス担当ディレクターであるJeff Boles氏も、SSDがエンタープライズストレージシステムに完全に統合されるのはまだ少し先で、その統合作業の多くは2010年に行われるだろうという予測に同意している。

Boles氏は、ホスト間でソリッドステート容量を共有し、複数のストレージメディアプールの間で自動的にデータを移行する、より効率的な方法を持ったソリッドステートをインテリジェントに統合するシステムが、過去半年間で市場に「大きな前進」をもたらしたと述べている。同氏は、IBMがSVCストレージ仮想化デバイスにSSDを追加したこと、きめ細かな運用が可能な自動階層型ストレージを実現する新興企業Avere Inc.とStorSpeedの新しい製品、そしてTexas Memory Systemsがストレージ仮想化ベンダIncipientを買収したことに関連して今後出現すると思われる製品を引き合いに出した。

「このトレンドは2010年も続くだろう」とBoles氏は述べている。しかし現時点では、大半の自動階層型ストレージおよびストレージ仮想化デバイスは、ソリッドステートデバイスのデータ移動をLUNレベルまたはボリュームレベルで処理している。それに対し最も効率的なのはブロックレベルで処理することだろう。「ソリッドステートストレージがより多くの独自の方式でより高密度に応用されるようになるのは2011年かもしれない」と同氏は言う。

通信簿:2009年の当誌の予測を評価する

A

災害復旧のためのレプリケーション
この項目についての予測は見事に的中した。われわれは、サーバの仮想化、製品の多様化、低価格化によってリモートレプリケーションが大半の災害復旧計画の中心になると予測した。レプリケーションが出現してからしばらく経つが、2009年に重複排除アプライアンスなどのバックアップターゲットの主要機能となったことで大きく勢いを増した。

B+

10ギガビットEthernet
1ギガビットEthernetは終わった、というにはまだ早過ぎるが、10ギガビットEthernetの普及は着実に進んだ。2009年にネットワークの拡張または再構築を行った企業にとって、10ギガビットの導入は実に簡単だった。iSCSIストレージシステムの信頼性向上と同様に、8 Gbpsファイバチャネル(FC)の進歩がやや遅いことが、一部のユーザを後押しした。価格帯はまだ高い水準にあるが、下落しつつある。ただ、われわれが予測したほどは速くないというだけだ。

B+

Storage-as-a-ServiceSaaS
「SaaS」という頭字語が定着すると予測していたなら、この項目の評価は「F」としなければならないだろう。「クラウド」という言葉が瞬く間にだれもが使う流行語になったからだ。クラウドストレージベンダは増殖し、サービスは自社運用型に比べてはるかに安価なケースもある。さらに、今や「内部クラウド」といった話まで出てきている。では、「A」の評価を受けてはならない理由は何だろうか。このような進展にもかかわらず、大半の企業にとって、自社のデータをクラウドに持ち込む気になるまでにはさらなる説得材料が必要だからだ。

B+

グローバルデータ重複排除
われわれはグローバルデータ重複排除を、サイロ化している重複排除リポジトリに対処しようとするユーザにとって「重大事件」だと述べた。重複排除の導入が着実に増えるにつれて、多くのユーザが実際にどれほどの重大事件なのかを実感しつつある。そのように述べたことについては「A」と評価できるが、この評価は少々下方修正する必要がある。というのは、重複排除ベンダの対応が、一部の例外を除いて遅かったからだ。

B+

SAS-2
われわれが予測したようにFCにとっての脅威となるほどではなかったが、2009年中、6 Gbps SASの普及はある程度までは進んだ。サーバ領域では直接接続型ストレージのディスクとして最新の選択肢に、また、アレイ領域ではソリッドステートドライブのインターフェースとして望ましい選択肢に、さらに、FCに対しては信頼できる代替選択肢となった。ただ、われわれが予測したほどの速さではなかった。

C

自動修復システム
この予測についてわれわれは「一歩間違えれば危険を冒すことになる」と述べたが、実際、非常に小さな一歩が分かれ目であることが判明した。新たな展開もいくつか見られたものの、自動修復システムは急速に広まったとはいえない。この点については1年か2年早計に過ぎたようだ。


8 Gbpsファイバチャネル
IT組織はまだ、猛スピードで8 Gbpsファイバチャネルに移行しようとしてはいないが、ホストバスアダプタ(HBA)、スイッチ、そしてストレージアレイの刷新や新規追加を行うたびに着実にその方向へ進んでいくだろう。そのペースは、高速な技術のコストが現在の4 Gbps装備の価格と同等になったときに加速するだろう。

例えば、Atomic Energy of Canada Ltd.(AECL、カナダ・オンタリオ州ミシサーガ)では、コアスイッチインフラストラクチャのポート数を増やすことが必要になった際に、Brocade Communications Systems Inc.が提供する新しい8 Gbps 64ポートスイッチのコストが、前年に4 Gbpsスイッチに対して支払った金額に近いことに気づいた。

同社のITインフラストラクチャサービス担当マネージャであるSimon Galton氏によると、より高速なスイッチに移行するという決定は特に戦略的なものではなく、たまたまその機会を利用しただけのことで、AECLにはその時点でHBAとディスクアレイを8 Gbpsに移行する計画はまったくなかったという。8 Gbps FCには旧世代との互換性があるため、全面的なアップグレードが必要となるわけではない。全面的に8 Gbps容量に切り替えるまで、高速性を最大限には活用できないというだけだ。

8 Gbpsに移行すると、I/O応答時間が向上し、特にバックアップとデータウェアハウジングといった帯域幅負荷の高いアプリケーションに加えて、仮想サーバ環境でも利点が発揮される。

ある大手金融機関のSANマネージャであるRyan Perkowski氏は、バックアップについてのみ8 Gbpsスイッチポートに移行する妥当性を確認できたという。同社はディスク/テープバックアップとBrocade DCXコアを接続するために8 Gbpsポートを3つ備えたBrocade 5100スイッチを2台購入した。

しかし、ホストサーバとDCXの間の接続はまだ4 Gbpsで、DCXとストレージアレイの間の接続も同様だという。同社のメインストレージベンダからネイティブポートが提供されるまでは、8 Gbpsの使用範囲を拡大するつもりはない、とPerkowski氏は言う。「8 Gbpsに対するビジネスニーズがない。4 Gbpsの帯域幅を満たすのにも苦労しているというのに、ただ所有するためだけに購入するつもりはない」(Perkowski氏)

調査会社TheInfoPro Inc.(ニューヨーク市)のストレージ技術担当マネージングディレクターであるRobert Stevenson氏によると、Fortune 1000企業における4 Gbpsから8 Gbpsへの移行ペースは2 Gbpsから4 Gbpsへの移行のときよりも遅くなっているという。導入鈍化の要因の1つは、現在の経済情勢がIT支出に影響を与えていることだという。

その他の要因としては、ファイルベースのネットワーク接続型ストレージ(NAS)やiSCSI SANに対応した10ギガビットEthernet(10 GbE)への関心が高まっていることや、Fibre Channel over Ethernet(FCoE)への関心などがある。ただし、FCoEの導入が主流となるのは、2010年より後のことになる可能性が高い。

当面は、4 Gbpsとの価格差が引き続き小さくなるにつれて8 Gbps技術が市場に普及していくだろう。Dell'Oro GroupでネットワークアダプタおよびSAN市場調査担当バイスプレジデントを務めるSeamus Crehan氏は、8 Gbpsスイッチ側ポートの出荷は前四半期比で50%増加し、同技術の出荷開始以降初めて、ファイバチャネルポート出荷量全体の過半数を占めるようになった、と指摘している。

また、8 Gbps HBAポートの出荷量も第1四半期から第2四半期にかけて倍増し、6万個近くに達した。主な要因としてCrehan氏は、3月にIntel Corp.のXeon 5500(開発コード名Nehalem-EP)サーバプラットフォームが発売されたことを挙げている。同製品ではサーバI/Oのスループットが大幅に向上している。

Gartner Inc.(コネチカット州スタンフォード)の調査担当バイスプレジデントであるRobert Passmore氏は、2010年にはHBA、スイッチ、およびストレージアレイの購入者がより高速な技術を求めるようになり、8 Gbps FCにとって大きな飛躍の年になると予測している。「今は、急速な移行が始まったばかりの段階だ」と同氏は言う。

まだそれほどホットではないが……

クラウドストレージ:実際のところ、MicrosoftとSidekickを提供するキャリアのT-Mobileによる10月の惨事の前の時点で既に、市場ではクラウドストレージについて明確な説明が求められていた。その事件の被害は当初思われたほどは大きくなかったかもしれないが、それでも一部のユーザはデータを失った。クラウドストレージという考え方を後押しする状況とはいえない。それでもなお、クラウドストレージについては多くの好意的な記事が書かれていて、おおいに話題になっている。また、新たにファンになった人や大勢の専門家も、最終的には成功につながると期待している。しかし、だからといってクラウドストレージがすでに主流になっているとは言えない。

災害復旧(DR):テストソフトウェア:DRの専門家たちは口をそろえて、ソリッドDR戦略(もちろん通常のDRテストもだが)を優先事項とするよう警告しつづけているが、これらの製品はしかるべき扱いを受けていないように思われる。そのようなアプリはある程度勢いを得たが、ストレージ関連の支出が必要最低限のものに限られているこの時期には、依然としてぜいたく品と見なされている。結局のところ、DRテストソフトウェアは、予算の引き締めが緩和されるまでは本格的な普及が始まらない可能性が高い。

FCoEFibre Channel over Ethernet(FCoE)に関して、賢明な人たちから次の2つの点について同意を得ることは難しくない。第1に、実績のある、目に見えるメリットが得られること。第2に、とはいえ、FCoEに対応するためにデータセンターを全面刷新することはだれも望んでいないこと。FCoEについてこれほど多く語られているにもかかわらず、大半のストレージアレイではまだFCoEがサポートされておらず、大半のベンダは急いで対応しようとはしていない。専門家は、FCoEに火が付くのは2011年以降になるだろう、そしてその時になれば、ストレージチームとネットワークチームが統合インフラストラクチャの支配権争いを始めて興味深い状況になるだろう、と言っている。

テープ暗号化:テープメディアをオフサイトに保管するつもりなら、暗号化する意義があるのではないだろうか。LTO-4/5ドライブに組み込まれた暗号化機能ならなおさらだ。しかし鍵管理と、クライアントでの暗号化の問題が課題として残る。セキュリティ専門家が言いたがるように、鍵をなくしたら、データをなくしたも同然だ。ハードウェアとソフトウェアの技術の進歩にもかかわらず、テープの暗号化は

シンプロビジョニング
シンプロビジョニングは、管理とアプリケーションの問題であった状態から脱却して、多くのストレージシステムで必須の機能となった。シンプロビジョニングへの関心は2010年も強まるばかりに違いない。

Enterprise Strategy Group(ESG、マサチューセッツ州ミルフォード)でESG Labテクニカルディレクターを務めるBrian Garrett氏は、別々の論理プールを定義すること、およびシンプロビジョニングされたボリュームの容量を確保しなければならないことに関連する実装と管理の問題はベンダによってほとんど解決された、と述べている。シンプロビジョニングは大半のケースでスムーズに機能し、Garrett氏が評価するストレージシステムでは「機能チェック項目」の1つになりつつある、と同氏は述べている。

シンプロビジョニングのメリットは明らかだ。容量への需要が増え続けているにもかかわらず予算が縮小される現在の状況では特にそうだ。プロビジョニング済みであるが使用されていないディスク容量を仮想ストレージプールに解放して、他のアプリケーションで利用できるようにすることにより、使用率を大幅に高めることができる。証券会社Maxim Group(ニューヨーク市)の最高技術責任者(CTO)であるJohn Michaels氏は、シンプロビジョニングを行ったFalconStor Software Inc.のIPStorとNetwork Storage System(NSS)ユニットを使用して、容量の使用率を59.87%向上させたという。「すぐに違いが現れた」とMichaels氏は言う。

3PAR Inc.はこの分野のパイオニアで、2003年からシンプロビジョニング技術の展開を行っている。それ以来、大手ストレージベンダのほとんどがこれに便乗した。EMCのClariionSymmetrix、およびCelerraシステム向け仮想プロビジョニング、HPのStorageWorks XP Thin Provisioningソフトウェア、IBMのスペース効率に優れたSAN Volume Controller(SVC)向け仮想ディスク、NetAppのFlexVolなどがその好例だ。そのほかにもCompellent Technologies Inc.のDynamic Capacityソフトウェアや、標準的なサーバ、ブレード、またはVMを仮想ストレージサーバに変換するDataCore Software Corp.のSANmelodyソフトウェアなど、多くの製品がある。

シンプロビジョニングに対するユーザの関心も高まってきている。2009年にストレージマガジンおよびSearchStorage.comが実施したStorage Priorities(ストレージの優先事項)調査では、回答者の14%がシンプロビジョニングを既に実装済み、21%が年内に導入予定、35%が評価予定、と答えている。

ESGのシニアアナリストであるMark Peters氏は、「ファット」ストレージボリュームをシンプロビジョニングされたボリュームに容易に変換できる機能をベンダが追加していけば、シンプロビジョニングは引き続き進化していくだろうと指摘している。2009年10月に3PARは、「ファット」ボリュームを「シン」にする技術Thin Conversionのリリースを発表した。また同社は、削除されたシン容量を再生するThin Persistence、および使用されていない仮想コピースナップショットとリモートコピーボリュームを再記録するThin Copy Reclamationも発表した。

CompellentとDataCoreは既に、「ファット」を「シン」にする技術と削除容量再生技術を備えたストレージシステムを提供している。シンプロビジョニングを利用するユーザが増えるにつれて、他のベンダもこれに続き、競争に対応できるよう自社の製品をアップグレードする可能性が高い。

当初、一部のストレージベンダは、ディスク販売の低下につながりかねないとしてシンプロビジョニングのような技術を提供することに消極的だったようだ。しかし早期参入ベンダが成功を収め、ユーザが積極的に受け入れていることから、そのようなベンダも前例にならうようになった。


プライマリストレージのデータ重複排除
デジタル形式で保存される情報量の増加スピードによって、多くのストレージマネージャが、チェックされていないデータ量の増加に伴う運用上のリスクとコストに対処しようと苦慮するうちに、防御的な立場に立たされている。2010年には、プライマリストレージ向けのさまざまなデータ削減技術(重複排除もその1つ)によって、苦境に追い込まれているストレージ組織にある程度の安心がもたらされるだろう。

「企業は、1テラバイト、または1ペタバイト増加するまでの時間がその前の1テラバイト、1ペタバイトに比べてはるかに短くなっていることに気づいている」と大手クレジットカード会社でシニアインフラストラクチャエンジニアを務めるTory Skyers氏は言う。「プライマリストレージの重複排除によって、どのような企業でも、既存ディスクに保存されたデータの密度を少なくとも倍増させることができる」

本来バックアップ環境に付属するものである重複排除機能は、プライマリストレージにも応用することができるため、スペース、電力、および冷却のコスト削減に貢献する。しかしプライマリストレージの重複排除は、バックアップの重複排除で一般に見られるほどの劇的な成果を達成するわけではない。

パフォーマンスも懸念事項だ。「バックアップでは、仮想テープがロードされバックアップが機能している限り、すべて問題なく進行する。プライマリストレージでは、パフォーマンスはそれほど単純なものではない」とTechTargetのPreston氏は言う。「(バックアップシステムの)リストアが遅い場合、数千人ものユーザがファイルにアクセスし、すぐに開けることを期待するようなシステムとは事情が異なる」

プライマリストレージの重複排除にとっての鍵は、メリットとコストの間の適切なバランスを見いだすことにあるかもしれない。StorageIO Group(ミネソタ州スティルウォーター)の創業者でありシニアアナリストでもあるGreg Schulz氏は、次のように述べている。「当社ではストレージのコストを削減しようとして、専らオンライン圧縮とオンライン重複排除で最大限の削減を実現しようとしている。プライマリストレージの重複排除は、作業頻度の高いデータには不向きだが、コスト削減のために時間を犠牲にできる場合には有用だ」

インライン重複排除とポストプロセス重複排除のいずれも、プライマリストレージに適用することができる。パフォーマンス低下を許容できるアプリケーションについては、インライン重複排除が最適だ。それらのシステム内のデータをキャッシュに保存して、その後ディスクに到達する前に重複排除処理を行えば、システムのバックエンドに必要なディスクの数が少なくて済み、最終的にコスト削減につながる。「インライン重複排除は現時点では最もパフォーマンスが遅くなる方式だが、(ソリッドステートストレージ)とより大容量のインラインキャッシュの出現により、最終的にポストプロセスに引けを取らないようになるのではないかと感じている」とSkyers氏は言う。

EMCやNetAppといった一部の大手ストレージベンダは、現時点でプライマリデータ削減機能を提供している。NetAppの重複排除機能は、ONTAPオペレーティングシステムに組み込まれている。同機能は、ストレージに書き込まれるすべてのブロックの巡回冗長コード(CRC)を保存してCRCを比較し、その後一致するブロックを削除してポインタに置き換えるという仕組みだ。

「NetAppは真の意味での重複排除を、実質的にパフォーマンスを変化させることなく行っている。実際の重複排除プロセスの実行中は、パフォーマンスに変化が生じる。しかしデータの重複排除処理が完了し、データベースやVMwareを実行しているだけの状態になると、実質的にパフォーマンスに変化は生じない」とPreston氏は言う。

Ocarina NetworksとStorwize Inc.も、早期にプライマリデータ削減分野に進出した。OcarinaのECOsystemはアウトオブバンドアプライアンスで、特定のアプリケーションに使用されるデータタイプに合わせて調整されたソフトウェアを搭載している。StorwizeのSTNアプライアンスは、NASデバイスと連携してデータをインラインで圧縮および展開する。この2つの新興企業はいずれも大きな注目を浴びて、さまざまなストレージベンダと提携関係を結ぶに至った。

strage magagine2009年12月号

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