進化するITプライオリティが作るモダンHCI

Storage Magazine 2020年8月号より
Scott Sinclair

ハイパーコンバージェンスは、過去10年の間にITリソースのデプロイメントと拡張を容易にしてきた。しかし、モダンITは以前よりはるかに複雑になっている。HCIベンダーは進化した。あなたはどうだろうか?

HCI(ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー)は、およそ10年の間データセンターを変革し、IT基盤の運用を大幅に簡素化してきた。実際、Enterprise Strategy Group(ESG)が2020年1月に出版した『2020年テクノロジー投資意向調査』の中で、IT意思決定者の24%が挙げたように、HCIはその多くのメリットにより企業のITモダナイゼーションの優先事項として一般に広く認知されている技術の一つだ。

近年、IT管理者が直面する課題は大幅に増えている。マルチレイヤーで従来型のオンプレミス・データセンター・アーキテクチャーを、従来型のハイパーコンバージド技術を使って統合(コンバージ)しているところもある。しかし、今や一般的に複数のデータセンターとクラウドプロバイダーに広がっている、モダンITの複雑さのほんの一部にしか対応できない。

この変化する世界に応えるべく、HCIベンダーは自社の製品を進化させ、より柔軟でアジャイルなものにした。この進化を理解し、HCI環境から期待できるものについて認識を深めることは、IT部門にとってだけでなく、企業全体にとって役に立つだろう。

ITの複雑さはデータセンターだけにとどまらない

企業がテクノロジーへの依存を強めるにつれて、企業の環境は、信じられないほど拡張し、アプリケーションの種類、基盤技術、場所という点でより多様になってきた。例えば、現在の企業はコンテナベースの環境をサポートしながら、パブリッククラウドの基盤サービスを統合しなければならない。 アプリケーションとテクノロジーの大幅な多様化も、複雑さの増大を加速させている。ESGの調査によれば、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが成熟している企業は、DXに取り組んでいない企業に比べて、2年前より著しくITが複雑になったと認識している割合が3倍になっている、という。

要件が、IT部門の管理・提供能力を上回ると、ITがボトルネックとなって収益の機会を邪魔するようになる。人員の拡張は、持続可能あるいは実行可能な選択肢ではない。それゆえ、基盤テクノロジー、ソフトウェア、ハードウェアが答えを出さなければならない。IT部門はすでに、IT設計と計画立案のスキル不足に直面しており、この問題は悪化の一途をたどっている。

モダンITはHCIのあるべき姿をどう変えていくのか

ハイパーコンバージェンスの初期、HCI環境による変革のメリットの大部分は、one-size-fits-all(ワンサイズで全員にフィット)のアプローチを提供する基盤パラダイムの能力に基づいていた。ハイパーコンバージド技術は、データセンター内で管理、設定しなければならないコンポーネントの数を減らした。

モダンITは、今でもone-size-fits-allのソリューションを必要としている。しかし、これまでと同じアプローチをしているone-size-fits-all製品を買う余裕はない。

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドは、エンタープライズIT基盤設計のデファクト・スタンダードになっている。IT管理者は、マルチクラウド環境に対応し、自社の特定のアプリケーション環境に合わせてサイジングでき、VMおよびコンテナベースのワークロードを含む複数のアプリケーションタイプをサポートできる技術を切実に求めている。

HCIを成功させた技術はハイブリッドクラウドの世界にも適用できる

ここで、ハイパーコンバージェンスの定義を拡張し、コンバージド、分散型ハイパーコンバージド インフラストラクチャ (dHCI)、ソフトウェア定義のストレージ製品など、従来のHCIを超えたデプロイメントのオプションを含めるべきだ。重要なのは、エクスペリエンスとメリットだ。

HCI 1.0 vs. 2.0

ハイパーコンバージド製品は、より柔軟で管理がしやすく、信頼性の高いものになってきている。

以下は、モダンHCI環境を判定するうえで注目すべき、いくつかの機能だ。

  1. マルチアプリケーション環境に強い
    KubernetesとVMを同じプラットフォームでサポートすることと、コンテナを使ってやりたいことを全て実現する機能を企業に提供することは異なる。クラウドネイティブのコンテナアプリケーションは、素早くスピンアップ、スピンダウンでき、移植可能で基盤を自動的に使用するように設計されている。これらの機能をサポートするHCIベースの環境を選択することは、非常に重要である。
  2. 次世代ハードウェアをサポートし統合を容易にする
    その環境はNVMeをサポートしているだろうか?ストレージクラス・メモリについてはどうだろうか?コンテナベースのワークロードをサポートする際、低レイテンシのパフォーマンスはより重要になる。2018年11月に発表された『2019年データストレージ動向』の調査結果によると、 ストレージパフォーマンスは、コンテナベースのワークロードにとって一番の課題だと答えた回答者が、従来型ブロックベースにとって一番の課題とする回答者の倍になっている(36% vs. 17%)。コンテナ用基盤には高パフォーマンスだけでなく、リソース要求についていけるような迅速な供給能力が求められる。
  3. オンプレミス基盤とオフプレミス基盤をカバーする
    企業は通常、コンテナベースのワークロードをマルチクラウドにしたがる。ESGが2019年12月に発表した『モダンアプリケーション動向』によると、回答したITスタッフの70%が、パブリッククラウド・サービスとプライベート・データセンターを組み合わせた環境全体にコンテナをデプロイしている、またはデプロイを計画中だ。 さらに半数近くが、コンテナを複数の異なるクラウドプロバイダーにまたがってデプロイする予定だと回答した。
  4. 統合インテリジェンスと自動化を提供する
    IT管理者の負担は大きく、統合によって環境が簡素化される範囲は限られている。高度な監視と分析のためのテレメトリデータを使用する統合インテリジェンスと自動化を提供するツールを探そう。エコシステムのサポートは、大規模で、多様かつ細分化されているほど、良い結果が得られる。 例えば、アップデートとアップグレードを単一のパッケージ製品に統合するだけで、大幅に時間の節約になる。実用的な洞察を活用し、自動化処理を促進する幅広いオプションを持っている製品を探そう。

新規基盤購入の時が来たら、全てのことをハイブリッドクラウド、マルチアプリケーションに絡めて考え始める必要がある。モダンITは、個々のソリューションの寄せ集めに頼るには、あまりにも複雑だ。

トランスフォーメーションとモダナイゼーションが抱える3つの問題

モダンHCI基盤は、複数のオンサイト、クラウド、ハイブリッド環境を横断して運用しなければならない。また、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みの過程で遭遇する様々な課題や複雑さに対応しなければならない。

幸いなことに、多くのHCI、コンバージド基盤、ハイブリッドクラウドの業界リーダーはすでにこの道を進んでいる。Cisco、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Hitachi Vantara、IBM、IBM Red Hat、Lenovo、NetApp、Nutanix、Oracle、Pivot3、Pure Storage、VMwareなどのベンダーや、AWS、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなどの主要パブリッククラウドプロバイダが、これらの機能の一部またはすべてを提供している。

Scott Sinclairは、Tech Targetの一部門ESGのプラクティス・ディレクター。

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