従量課金方式がデジタル・イニシアティブを加速する

Storage Magazine 2021年2月号より
Scott Sinclair

使った分だけ払う消費型ITによって、基盤をサポートする負担はベンダーへと移り、支出はCapex(設備投資型)からOpex(運用コスト型)に移行した。従量課金方式は貴社のデジタル・ビジネスのロードマップのスピードについて行けるだろうか?

あらゆる形態とサイズの企業が、業種の違いを超えて、デジタル・ビジネスへの取り組みとITサービスのロードマップを整えつつある。COVID-19以前でも、この取り組みはITのプライオリティ・リストの上位にあったが、もうじき訪れるであろうポストコロナ時代(ワクチンの配布が行き渡ればの話だが)には、ビジネスの成否は、顧客をより良く理解し、良い関係を築くためのテクノロジーを使う能力によって決まることになるだろう。

一部の企業にとっては、COVID-19は自社のロードマップと計画を再確認する機会となった。しかし他の企業にとっては、このパンデミックは厳しい警告としてとらえられた。一部の人は、企業が自社のデジタル・イニシアティブ(訳注:デジタル・トランスフォーメーション戦略)を増強または拡大しようとする際に、トランスフォーメーション、人員、予算の制約が、成功を阻害する大きな要因になると言うかも知れない。

一部のIT企業は、従量課金やアズ・ア・サービス方式に切り替えることによって、短期の予算に大きな影響を与えずに投資を加速し、デジタル・イニシアティブのスピードアップを図っている。例えば、Enterprise Strategy Groupは最近の調査で、IT企業がデータセンター基盤を調達する際、前払い資金で購入する従来の方式よりも消費型(課金型)方式を好む、という事実を見出している。

従量課金方式に対する関心の高まりの背後にあるものは?

消費型課金方式の関心を高めている目的の上位2つは以下の通りだ。

  1. IT運用簡素化の必要性
  2. 短期の予算を最大限に活用する

従量課金方式は、現在から将来に渡るアプリケーション環境のためのデータセンター・ハードウェアを設計し、最適化するエネルギーを、相当量減らしてくれる。これらの環境がいかに急速に拡張し、進化しているか(特にクラウド・ネイティブ、コンテナ・ベースのワークロードの興隆がこれに関連している)を考慮すると、複数年に亘る基盤要求を正確に予想するのは、ますます難しくなっている。さらに、3分の1の企業が、IT設計と計画立案の分野において、技術力不足の問題を抱えている。従量課金やアズ・ア・サービス方式は今後の予測作業や設計作業を大幅に、あるいは全面的に無くしてくれる可能性がある。

その他のメリット(おそらくこちらの方がもっと魅力的だと思われる)は、従量課金方式による基盤購入が現行のIT予算を短期的に最大限に活用する道を開いてくれる点だ。ロードマップ上に複数のプロジェクトが載っている企業にとって、大きな額を先行投資する購入方式から、一つの技術の寿命に合わせてコストを割り当てる方式に移行することによって、現行の予算をより多くの基盤に拡張でき、ITプロジェクトを加速することにつながる。現行の予算でITの活動増強の機会が得られることが、これら消費型方式への関心がまたたく間に高まった主な要因である。

企業が消費型ITを敬遠する理由は?

企業が従量課金やアズ・ア・サービス方式を利用しない最も大きな理由は、現状の予算方式ではそれが出来ないからだ。もう一つよく言われる批判は、従量課金方式を実装すると、システムを前払いで購入した時よりも、最終的にはより多くのお金を払うことになる、という考え方だ。言い換えれば、従量型の課金方式では前払い費用が少なくて済むが、製品寿命の期間で見ると、先に多く支払った方が、最終的な費用が少なくて済む、ということだ。

消費型課金方式のメリット

それぞれの方式が提供するものは異なる。しかし、たとえあなたが従量課金方式は前払い購入方式よりも多くの費用がかかると考えていたとしても、支払いを遅らせる機能には価値がある。その上、従量課金方式は人員、時間、環境の予測に関連するリスクを低減してくれる。

コストの方程式は、最終的には以下の2つの質問に要約される。

  1. あなたは、これから3年先、4年先のアプリケーション・ニーズを予測する能力に自信がありますか?
  2. あなたの時間をもっと有効に使う方法が他にない、と確信をもって言えますか?

アズ・ア・サービス方式 vs. 消費型課金方式

従量課金方式への関心の高まりに関する調査データは、主に消費型課金方式に焦点を当てて行われることが多いが、これは真のアズ・ア・サービス方式とは異なるものだ。 とはいえ、企業はどちらの方式からでも同じようなメリットを得ることができる。

定額課金方式では、あなたが基盤を管理し、使った分だけ支払う。アズ・ア・サービス方式では通常、基盤ベンダーが保守、サポート、さらにはアップグレードパスの面倒まで見てくれる。アズ・ア・サービス方式は、ITリソースの負担軽減のためにより深いところまでやってくれる。これによってデジタル・イニシアティブが加速される。

貴社にとって従量課金は何を意味する?

あなたが消費型課金方式やアズ・ア・サービス方式をまだ検討していないのであれば、今がそれを始める絶好のタイミングだ。

従量課金方式の5つの検討課題

多くの場合、検討が始まるのは、会社再建のために外部から経営陣が送られてきた時だ。毎日のように、データセンター・ストレージ・ベンダーや基盤プロバイダーが、消費型課金方式やアズ・ア・サービス方式を市場に投入している。例えば、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Hitachi Vantara、IBM、Lenovo、NetApp、Nutanix、Pure Storageなどがそれらのベンダーにあたる。貴社が使っているベンダーが、すでに貴社と話を進めているケースもあるだろう。

過去に従量課金方式やアズ・ア・サービス方式に抵抗感を持ったことがあるのならば、一旦先入観を捨ててもらいたい。これらの方式によって、現在持っている予算でそれ以上のことが可能になるかも知れないのだ。問題は、あなたが貴社のアプリケーション環境をプロバイダーよりも深く理解しているかどうか、ではない。実際、あなたの方がどこのストレージ・ベンダーよりもきちんと貴社の技術要求を予測できるかも知れない。ここで自問すべきことはこうだ。

  1. あの仕事の負担を軽減してもらったら、自分は他にどんなことを達成できるだろう?
  2. 空いた時間のおかげで、自社のデジタル・ニーズを加速できるだろうか?

著者略歴:Scott Sinclairは、TechTargetの一部門Enterprise Strategy Group(ESG)のシニア・アナリスト。

 

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