新型コロナウイルスによって一変したテクノロジー世界

Storage Magazine 2020年8月号より
Dave Raffo

2020年に起こった予想外の出来事のほとんどは、もう二度と起きて欲しくないが、ITとストレージの世界に起こった変化は、今後もしばらくこの業界に定着するだろう。

我々が2020年のような年を見ることは二度とないだろう。いやとにかく、そうであって欲しい。

今年もやっとこさ半分過ぎたが、一生に一度か一世代に一度の出来事が山盛りだった。我々は、パンデミック、大規模な景気後退、世界中の大都市での街頭デモ、時には暴動を経験した。

メジャー・スポーツのシーズンは中断または延期され、無観客の状態で再開されるのを我々は目撃した。失業者数は、世界大恐慌時代のレベルにまで跳ね上がった。アメリカ大統領選挙ではバーチャル党大会、ソーシャル・ディスタンスを守っての討論会が行われた。そして、投票がどのように行われるのかも現時点では定かでない。

テクノロジーの世界も変わった。自宅勤務は普通になった。そして、我々はクラウド使用が跳ね上がり、購買パターンが乱れ、対面でのコミュニケーションがまれになったのを目の当たりにしている。

スポーツファン、経済学者、政治マニアにとって、こんな年は二度とごめんだろうし、通常の生活が戻ってくるのを心待ちにしていることだろう。しかし、ITの世界にとっては、多くの変化は新しい日常となるだろう。

いくつかの変化は、ここ数年の傾向を加速することになった。クラウドへの移行、データセンター・フットプリントの縮小、サービスとしての基盤購入、セキュリティとソフトウェアの重要視、がそれである。しかし、最も急激に変わったのは、個人に関すること、すなわち我々相互の接し方である。同僚とのミーティングのほとんどがバーチャルになっただけでなく、パンデミックによってストレージやITのユーザーがベンダーと接する方法も変化した。

IT世界がバーチャルになる

Zoom、Microsoft Teams、Slack、およびストリーミングによるバーチャルイベントが、対面でのオンサイト・ミーティングとフィジカルのユーザー・カンファレンスにとって変わったところを、ソフトウェア定義のセールスと呼ぶことにしよう。新型コロナウイルス(COVID-19)によって急速に発達したバーチャル・インタラクション(仮想交流)は、今や標準でありこれから数年のうちに、さらにその地位を固めていくだろう。

ガートナーの予測によると、2024年に直接人と人が会うミーティングは企業の会議全体のわずか25%となり、新型コロナウイルスによるパンデミック前に比べて60%も減少する。 

「私たちはこの変化を一時的なものとは思っていません。実際、未来の仕事はこのまま変化し続けるでしょう。」Nutanix CEOのDheeraj Pandeyはこう語る。

ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー・ベンダーNutanix社は、新型コロナウイルスのせいで、リモートワークやバーチャル・コミュニケーションを始めることになったが、同社の見込み客獲得数は、数か月たってもまったく落ち込まなかった、とPandeyは語る。他のストレージベンダーの幹部たちも、これに同意する。ビジネスは経済状況のために苦しんだかもしれないが、社内および売り手とユーザー間のやりとりは何の問題もなかった。

Dell Technologies社の COO Jeff Clarkeは、5月の投資家向け業績発表でこう語った。「私はリモートにいながら、今までなかったほどの深い一体感でつながっています。出張はしていないのに、これまでより多くのお客様、パートナー、サプライヤー、チームのメンバーを訪れています。こんなに忙しいのは初めてです。」

Pure Storage社 CEO Charlie Giancarloは、自宅で仕事をしながら、従来の2倍顧客と話すようになり、営業チームはこれまでより利益を上げるようになった、と語る。

Pure Storage社 5月の投資家向け業績発表で彼はこう語った。「だから、今後B2B環境では、仮想デジタル技術の比重がより大きくなっていくだろうと思っています。」

ITユーザー・カンファレンスの将来

人と人が直に会うビジネスやその業界のベンダーの将来に何が待っているのか、我々はまだ分からない。3月と4月、ベンダー・カンファレンスがバーチャル・カンファレンスになるとの発表が相次いだ。5月、6月はバーチャル・カンファレンスのラッシュとなり、延期したベンダーは9月、10月に開催することにした。バーチャルになることによって、ストレージ購買者は、他の購買者やベンダーとの対面でのミーティングやハンズオン・トレーニング、ロードマップ・セッションの機会を失った。

しかし、急いで飛行機に乗ったり、日々の仕事をほっぽって時間を使ったりする必要がなくなったおかげで、カンファレンスに参加できる人が増えた。ベンダーが将来、現実世界のカンファレンスをレベルアップするときは、バーチャルの参加者のためのカンファレンスも引き続き用意してくれることを期待しよう。

多くの人が、初期のバーチャル・カンファレンスがイベントというよりウェビナーのようだったと感じている。DellやNutanixのように、バーチャル・カンファレンスを2020年後半に延期した会社は、準備により多くの時間が使えるので、より創造的なアイデアで登場して欲しいものだ。

Pandeyは、バーチャル・カンファレンス.NEXTについてこう語った。「一夜にして、我々はこれを一地域のイベントではなくグローバルなイベントにすることができます。我々はこれをどこにでも、またあらゆるところに流すことができます。我々は、創造的になるにはどうしたらよいかを、今真剣に考えています。バーチャルとは、あなたがフィジカルな世界で行ったことをコピーすることではありません。」

Pandeyは、Nutanixがどのように創造的にあるのかについて「ネタをばらす」ようなことをしたくないと語ったが、いくつかのヒントをくれた。彼は、カンファレンスをQuibiやTikTokのような、短くてテレビ放送並みの品質のセッションにしたいと思っている。

「人を引き付けるものでなければなりません。それはフィジカルのイベントに飛行機を使ってまで行きたくない人たちに流せるものです。みなさんに5分間見てもらうのです。丁度いい気分転換にしてもらいます。」と彼は語る。

.NEXTやその他のカンファレンスがフィジカル・イベントに戻るかどうかに関して、Pandeyはこう語った。「これはちょうどプライベートクラウド vs. パブリッククラウド、自社開発 vs. オフショア開発のようなものです。我々は、振り子はいずれ真ん中で止まることを知っています。」

しかし、IT世界の振り子が、2020年以前の世界の「古い日常」に戻ることは決してないだろう。

著者略歴:Dave Raffoはストレージ・メディアグループのエディトリアル・ディレクターであり、TechTargetでストレージ、データ保護、ハイパーコンバージェンス部門を統括している。

 

Copyright 2000 - 2020, TechTarget. All Rights Reserved, *この翻訳記事の翻訳著作権は JDSF が所有しています。
このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。