オンプレミスSTaaSでストレージ購入はOpex型へ移行
Storage Magazine 2020年8月号より
Robert Sheldon
ストレージ・アズ・ア・サービス(STaaS)によって企業は、従量課金、定額払い、計量型課金など様々な方法でオンプレミス・ストレージにアクセスできるようになった。それぞれの長所・短所を知ろう。
エンタープライズ・ストレージのデプロイと管理は、お金がかかり複雑な作業だ。IT部門は機器について、計画立案、購入、インストール、構成、保守、更新、撤去、廃棄というストレージ・ライフサイクル管理を構成する全てのステップを実施しなければならない。運用を簡素化し、高い初期費用を避けるために、企業の多くは自社の一部または大部分のストレージ・ニーズを満たすために、パブリッククラウド・プラットフォームに頼っている。
ストレージ・アズ・ア・サービス(STaaS)は設備投資(Capex)を無くし、管理を簡素化し、柔軟性を高めてくれる。しかし残念なことに、パブリッククラウド・プラットフォーム経由で提供されるSTaaSには問題がある。特に、セキュリティ、コントロール、パフォーマンス周りだ。とはいえ、企業はマネージドサービスとして提供されるストレージ、という考え方が好きだ。クラウドサービスによって得られる使い勝手の良さがあるからだ。
オンプレミスとクラウド、二つの世界が持つ最良の部分を得るために、ITチームはよく、パブリックサービスの長所の多くを模倣したプライベートまたはハイブリッド・クラウドを実装しながら、クラウド的な機能を自社のオンプレミス・データセンターに持ち込む方法を探してきた。ところが、インハウスでの基盤展開には、企業が最初にクラウドに引き寄せられたのと同じ課題が付いてくる。しかし、ITチームはようやくオンプレミスSTaaSというもう一つの選択肢を手にした。これは、ベンダーがオンプレミス・ストレージを提供、デプロイ、管理する、消費型サービス・モデルである。
オンプレミスSTaaSでは、ベンダーがストレージ・コンポーネントの所有権を持ったままだが、ベンダーはコンポーネントをユーザーが指定した場所にインストールしてくれる。ユーザーはベンダーからシステムを丸ごと買うのではなく、実際はオンプレミスの容量をリースする形になる。これは、ユーザーがどれほどプラットフォームを使用したかに関わらず、固定の月額レンタル料を払う一般のリース・プログラムではない。その代わりに、ベンダーはストレージ商品を消費型サービスとして提供し、ユーザーはそのサービスで使用した分に応じて料金を払う。
ベンダーは、一部または全ての管理サービスも提供する。これによって、さらにクラウドに近い使い勝手が得られる。
オンプレミスSTaaSとは何か?
オンプレミスSTaaSは、従来のストレージに付随する複雑さや巨大な初期費用を回避しながら、企業に自社のデータセンター、遠隔オフィス、コロケーション・ファシリティやその他のサイトにおいて、クラウドのようなサービスを受ける方法を提供する。ストレージ管理者は、システムをオーバープロビジョニングしたり未使用のストレージにお金を払ったりせずに、ストレージの拡張や縮小ができる。オンプレミスSTaaSは、従来型のリース・プログラムとクラウド型のサービスの間の溝を埋め、ユーザーに従来型ストレージならではのコントロール、セキュリティ、パフォーマンスだけでなく、クラウドならではの従量型課金の柔軟性をも提供してくれる。
オンプレミスSTaaSプログラムをサポートするベンダーは、一般的にブロック、ファイル、オブジェクト、と幅広いストレージタイプの設定が可能なオプションを提供している。このプログラムには、プレミアム・サポートやデータ保護などストレージ関連のソフトウェアやその他の付加価値サービスが付いていることもある。さらに、STaaSベンダーは一般的に、ユーザーの要求を満たすことを確約するために、サービス品質保証(SLA)または他の保証を提供している。それと引き換えに、ユーザーは実際の使用量に基づいた月額費用に同意する。
使用量を判断する正確な基準は、STaaSプログラムや選択するパッケージによって違うが、基本的な考え方は同じだ。ユーザーは、経費記録用のシステムから経費を予測しつつ、必要な時に必要なだけストレージリソースを手に入れる。ユーザーは、最小限の容量か使用時間をコミットするよう要求されることもあるが、通常これらは妥当な量である。
セルフマネージド・サービス vs. フルマネージド・サービス
ほとんどのSTaaSベンダーが、最低でも2つの基本サポートオプションを提供している。セルフマネージドのオプションでは、ベンダーは提供するストレージの計画立案と設計を手助けし、それをユーザーの希望する場所に届け、インストールしてから、継続的サポートを提供する。日々の運用を切り盛りするのはITチームの責任だ。フルマネージドのオプションでは、ベンダーはこれらのタスクを全て行うだけでなく、日々のシステム管理も引き受けるので、提供するフルマネージド・ストレージサービスの使い勝手はパブリッククラウドのそれと非常に近いものになる。
ほとんどのSTaaSベンダーが、使った分だけ支払う形の従量課金モデルをベースとして、オンプレミス・ストレージサービスを提供している。この方式では、ユーザーはストレージの容量と種類ごとに紐づけされたコスト予測システムに基づいて、使った容量の分だけを支払う。多くのベンダーはまた、ユーザーが使った分だけを支払うことを確実にするために、ある種の計量技術を使用している。
STaaSのような多くの従量ベースのプログラムにとって不可欠なのは、リザーブドキャパシティあるいはフレックスキャパシティである。このモデルでは、ベンダーは増減するワークロードに対応するために、余裕のある容量をもったストレージを提供する。ユーザーは、追加のハードウェアをデプロイすることなく、必要に応じてリザーブドストレージを使える。ベンダーは、実際の使用量分のみを請求し、未使用の容量については一切請求しない。オンプレミスのSTaaSに組み込まれた計量技術は、正確な使用記録の作成に使われている。
一部のベンダーは、これ以外の定額オプションを提供している。例えば、契約時間と増加分を見越して計算した予測支払い額を、ユーザーに提供するプログラムなどもある。さらに、ベンダーが付加価値サービスを提供することもよくある。これらの大半は、監視の追加やAIによるインサイトなど、レベルの異なるサポートと管理に関係している。
STaaSの長所と短所
オンプレミスSTaaSが現在、大きな注目を集めているのは驚くにあたらない。オンプレミスSTaaSは、従来のオンプレミス・システムとパブリッククラウド・サービスに付随する課題の解決を手助けしてくれる、沢山のメリットを保証してくれるからだ。
最大のメリットの一つは、この技術が従量型の料金体系になっていることだ。クラウドと同様に、ユーザーは資本的支出(=設備投資:Capex)から事業運営のための支出(Opex)へと支出モデルを移行し、使ったサービスの分だけ払うようになる。ユーザーは、オンプレミス・ストレージの計画立案およびデプロイに関連するITオーバーヘッドを減らしながら、予測可能な料金体系を手に入れる。この方法によって、ベンダーとユーザーはストレージ投資のリスクを共同で担うことになる。
これらのサービスの多くに付随する計量は、ユーザーが確実に使った分だけを支払うことを可能にし、ワークロードの実際のコストを明確にしてくれる。ユーザーは、ストレージへの支出を特定のアプリケーションや事業単位に紐づけでき、結果としてより正確な予算編成やコスト分析が可能になる。
リザーブドキャパシティを含むSTaaS商品のおかげで、ユーザーは必要に応じて迅速且つ簡単にストレージを拡張でき、しかも払うお金は自分が使うリソースの分だけで良い。また、リザーブドキャパシティによって、将来のストレージ要件を予測する必要性と、多くの場合それに付随したオーバープロビジョニング(システムを丸ごと買う場合の一般的なスタイル)が無くなった。同時にユーザーは、万が一ワークロードのパターンが突然変化した場合でも、容量が底をつくリスクを回避できる。
オンプレミスSTaaSは、ストレージの購入、デプロイ、管理を簡単にすることで、IT運用をシンプルにする。管理者は、より簡単にストレージを実装し、容量を拡張し、使用状況を監視し、必要時に必要なサポートを受けられるようになった。STaaSベンダーが、AIベースの分析機能を自社のサポート・モデルに組み込んでいる場合もある。これによって、トラブルシューティングがシンプルになり、予防的ストレージ保守が可能になる。一部の定額プランには、ITプロフェッショナルを他の業務に解放するための、フルタイムの管理が含まれている。
さらにITチームは、パブリッククラウドを使う場合よりも、ストレージ環境をしっかりコントロールでき、データセキュリティやプライバシー規則に適合したコンプライアンスも、より容易に確保できる。また、ITチームは特定のワークロードやパフォーマンス要件に合わせてストレージの設定ができる。これは、クラウドではできないことだ。
STaaSは、明らかに重要なメリットをもたらすが、いくつかの課題も抱えている。例えば、ある会社がフルマネージド・サービスを導入した場合、ベンダーはその会社のストレージ・システムにリモートアクセスしなければならないが、これはセキュリティとプライバシーの懸念について問題をもたらすことになる。ITチームは、ベンダーがストレージ・システムを管理またはサポートする際に必要とするアクセスのレベルを決めるために、一つ一つのプランを注意深く評価する必要がある。
さらに、消費型の価格体系とマネージドサービスと言うと響きは良いが、長期で見るとSTaaSは必ずしもお金の節約になるとは限らない。企業は、継続する定額料、付加サービスのコスト、運用費用などの問題を検討しなければならない。もうひとつ。リース期間が終了した時点で、企業はなにも売却する機器がないのだ。
もちろん、一部の企業にとって、特にハードウェアの更改を考えている企業にとって、STaaSは正しい選択肢だ。しかし、注意深いコスト分析なしには、企業はその選択に自信を持つことができない。
オンプレミスSTaaS vs. クラウドSTaaS
企業がクラウドベースのSTaaSかオンプレミスのSTaaSかを選べる状況になったが、どちらも長所と短所を持っている。
クラウドベースのSTaaSでは、フルマネージド・ストレージサービスによって、ユーザーのデータ管理は、シンプルで合理化された一続きのオペレーションへと変わる。ユーザーは、自分たちが必要とする分の容量とパフォーマンスを選んで、数回ポイント・アンド・クリックのオペレーションをすれば、準備が整う。ベンダーが、基盤の管理とアロケーションの全てを引き受けるので、ITリソースを他のタスクへと振り向けることができる。
とはいえ、クラウドベースのSTaaSは課題も抱えている。プロバイダーが実装するデータ保護はあるものの、クラウドは極秘データを置くには、いまだに危険な場所だと考えられている。クラウドストレージでは、本質的にデータ攻撃に晒される表面積が増えるため、セキュリティとコンプライアンスへの懸念が高まる。また、ユーザーがデータおよびデータ基盤をコントロールできる度合は減少する。どの程度セキュリティ保護を実装するか、どのようにシステムを最適化するか、管理運用をどのように実行するか、これら全てを決めるのは、ベンダーである。
クラウドサービスはまた、長期の定額費およびイングレス(進入)、エグレス(退出)などその他のコストを含めると高価になる。さらに、クラウド・プラットフォームは、インターネット接続に依存するレイテンシを極端に嫌うアプリケーションには不向きである。クラウド・プラットフォームはまた、企業の業務を停止させるような停電に見舞われるかもしれない。もうひとつ。クラウドストレージは、予測しうる将来までの長期間プロバイダーが事業を続け、データに関連する運用を維持することが前提になっている。
オンプレミスのSTaaSは、上記の懸念の多く(特にセキュリティとコントロールの方面)に対応している。フルマネージド商品を選んだのでなければ、データ保護のやり方、システム設定方法、基盤保守の方法を決めるのはユーザーである。また、たとえフルマネージドであっても、ユーザーはクラウドベースのサービスよりもストレージ基盤をコントロールできる度合が高い。そうはいっても、オンプレミスのSTaaSには独自の課題がある。
オンプレミスのSTaaSはイングレスおよびエグレス課金が発生しないものの、依然として長期の定額料金と必然的に加算されるサポート・コストが付いて回る。さらに、このソリューションの物理的セキュリティや進行中のオペレーションを確認するだけでも、管理者タスクを実行しなければならない。IT部門はまた、STaaSの物理的ストレージを設置するスペースとともに、この装置が継続的に稼働するのに必要な電源と冷却設備を手配しなければならない。もうひとつ。ベンダーは、サポート、監視、保守のためにストレージ・システムへのアクセスを要求してくるかもしれない。
企業がSTaaSモデルの導入を決めているのであれば、意思決定者たちはオンプレミスSTaaSとクラウドSTaaSの双方を入念に調査すべきだろう。どちらを選択するかは、その企業の規模、予算、ワークロード、セキュリティ要件、その他多くの要因によって変わってくるだろう。
オンプレミスSTaaSでチェックすべき5つの機能
いくつかの課題はあるものの、消費型ストレージは多くのメリットをもたらす。大きな先行投資の予算が組めないユーザーにとっては特にそれが言える。しかし同時に、STaaSの供給には標準と呼べるものがないため、あるベンダーと別のベンダーの定額パッケージを比較するのが難しい。出発点として、購入者は判断を下す前にSTaaSに以下の機能があるかどうかを探してみるのが良いだろう。
- 従量課金、計量サービス付き消費型料金体系
オンプレミスSTaaSを検討する主要な理由のひとつが従量型課金体系だ。これによって、ユーザーは使った分だけを払えばよくなる。これを有効にするために、この商品には消費量を点検し、使用に関連するデータへのアクセスを提供する計量機能が付いていた方が良い。例えば、Dell Technologies On Demand、Hewlett Packard Enterprise (HPE) GreenLake、Quantumは全て、粒度型の計量機能を使った従量制のストレージサービスを提供している。 - 従量型課金体系ベースのリザーブドストレージ付きフレキシブルキャパシティ
リザーブドキャパシティは、計量サービスと連携しており、STaaSを単純なリース・プログラムと差別化する重要な機能の一つだ。リザーブドストレージは、従量課金体系とともに、STaaSをよりクラウドらしくするものだ。ユーザーは簡単にストレージを増減でき、オーバープロビジョニング・リソースなしで迅速なアプリケーション・デリバリを実現できる。Dell On Demand、HPE GreenLake、Pure as-a-Service (以前のEvergreen Storage Service).など、いくつかのSTaaSプログラムがこの機能をサポートしている。 - 簡素化された購入、デプロイ、保守オペレーション
パブリッククラウド・プラットフォームのように、オンプレミスSTaaSもIT運用を簡素化するサービス・ベースのデリバリ・モデルを忠実に守っている。しかし、このモデルがどの程度IT部門に貢献するかは、ベンダーと選択するパッケージによって変わってくる。例えば、NetApp Keystoneは、定期的にストレージのヘルスチェックを実行し、NetAppが保証した条件を満たしているか確認し、使用傾向を把握し課題への対処を含む詳細なレポートを提供する。IBM Managed Private Cloud IaaSは、24時間365日問題の管理、監視、トラブルシューティングを行う。Hitachi Vantara STaaSは、常時監視とアーキテクチャー・ガバナンスを提供しながら、広範なレポートと分析の機能を持っている。 - 業務要件をサポートする価格体系とサービス・オプション
STaaSを選択する際、意思決定者は、ストレージ・システム自体はもとより、ベンダーが必要なサービスを提供できているかを確認しなければならない。例えば、Hitachi Vantaraや Zadaraなどのベンダーは、ファイル、ブロック、オブジェクトの複数のストレージタイプを単一システムで設定できる。また、多くのSTaaSプログラムが異なったタイプの付加価値サービスを提供している。この好例はQuantum STaaSで、インストレーションとインテグレーション、クラウドベースの分析、予防的監視と管理、テクノロジー・リフレッシュ、データ移行を提供している。一方、Dell Technologiesはデプロイ、サポート、管理に注力した付加価値サービスを提供している。 - ユーザーの期待値に応えるベンダーのSLAと保証
STaaSの他の側面と同じように、SLAと保証はプラットフォームによって大きく変わるので、意思決定者は最新の注意を払って、ベンダーが約束していることを正確に把握するべきだ。例えば、Zadaraが100%のアップタイム保証している一方で、NetAppは100%の可用性とユーザーのパフォーマンス・ニーズの適正サイジングを保証している。意思決定者は同時に、STaaSプログラムのコミット要件についても検討した方が良い。例えば、Pure Storageは、ユーザーに最低12ヶ月および100TBのリザーブキャパシティをコミットするよう要求している。
これら5つの機能に加えて、企業は自社の特定のワークロードをサポートする、その他たくさんの機能をSTaaS製品に見つけ出すことだろう。難しいのは、どれが貴社のニーズに最も合っているかを判断することだ。そのためには、相当な量の下調べを行う必要がある。
オンプレミスSTaaSがもたらすもの
オンプレミスSTaaSは、新規ベンダーが定期的に市場に飛び込んでくる、発展途上の分野である。この市場で先行している、Dell Technologies、HPE、Hitachi Vantara、IBM、NetApp、Pure Storage、Quantum、Zadara等のベンダーは、幅広いストレージ設定やサービスを提供し、どのようなワークロードもサポートできるようにしている。STaaSに関して、企業はかつて無いほどの選択肢を持てるようになった。そしてその数は今後増える一方のように見える。
オンプレミスSTaaSは、万人のためのものではないかも知れないが、この方式によってメリットを得ることができる人々は、今までにないほど良い状況にいる。唯一の疑問は、これが持続可能なビジネスモデルなのか、という点だ。オンプレミスSTaaSは、まだ歩き始めたばかりだ。自分の有用性を証明する長い道のりがこの先に待っている。
著者略歴:Robert Sheldonは、技術コンサルタント兼フリーの技術ライター。彼はまた、ebookの出版の仕方を解説したEbook Nowの著者でもある。
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