2019年ベスト・エンタープライズ・ストレージ製品


ストレージ・マガジンとSearchStorageのプロダクト・オブ・ザ・イヤーの100近くの記事から選ばれた、最高のストレージ・システム、ストレージ製品、ストレージ・サービスを知ろう。


Storage Magazine 2020年2月号より
James Alan Miller

 

2月だ。ということは、昨年のベスト・エンタープライズ・ストレージ製品に光を当てる時期が来たということだ。ストレージ・マガジンとSearchStorageの2019年プロダクト・オブ・ザ・イヤーにようこそ。

今年で18年目を迎えるストレージ・プロダクト・オブ・ザ・イヤーのコンテストは、ストレージ市場が提供すべき、最も優れたエンタープライズ・ストレージについての総合的な視点を提供してくれる。このコンテストはまず、業界のエキスパートの面々が審査するために、製品をエントリーするよう各ベンダーに案内状を出すところから始まる。アナリスト、コンサルタント、さらにストレージ・マガジンおよびSearchStorageの編集陣によって構成された審査委員会は、新規または重要なアップグレードを行ったハードウェア、ソフトウェア、サービスの参加製品のリストの中から 5つの部門で50製品を最終選考対象として絞り込み、そこから金賞、銀賞、銅賞を選んだ。

ストレージ ・プロダクト・オブ・ザ・イヤーには以下の5つの部門がある。

■バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス
■クラウドストレージ
■ディスクおよびディスク・サブシステム
■HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー
■ストレージ・システムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア


勝者を決めるため、審査員は各ハードウェア、ソフトウェア、サービスを技術革新性、インテグレーションの簡便性、パフォーマンス、使い勝手、管理容易性、価値、機能性の観点から評価した。

以下に、今回の金賞、銀賞、銅賞のエンタープライズ・ストレージ製品をご覧頂こう。表彰台には登れなかったが、審査員に感動を与えたスタートアップに敬意を表し、今回我々は初めて審査員賞というものをベンダーの1社に贈呈した。

 

<バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス

2019年のバックアップおよびDR部門には、強力なクラウド・コンポーネントがあり、そこに包括的データ保護と多様なワークロードを扱う機能が加わった。

Commvault Complete Backup & Recovery V11 SP 17がこの部門の金賞である。この製品は、異なるロケーションのワークロードのデータを保護し、DR、エンドポイント、スナップショット管理、アーカイブ、SaaSにも対応している。AI機能が審査員に高く評価されたCommvault には、最適化スキャン、Nutanix File Shares用マルチノードバックアップ、Azure SQL Databaseマネージド・インスタンス用バックアップ&リストア、Splunkクラスター保護、AzureからVMware VMへの変換機能が加わっている。

Cohesity Inc.のソフトウェア定義による製品DataProtect(ソフトウェア・リリースPegasus 6.3)は銀賞を獲得した。同社は昨年DataPlatformという製品で同じく銀賞を取っている。DataProtectは、保護されたデータの可視性を最大化して、ユーザーが次に取るべきアクションを示唆するインサイトを得るために機械学習を組み込んでいる。アンチ・ランサムウェア機能と多要素認証によってセキュリティを高めている。

 

 

コピーデータ・マネジメントのパイオニアActifioは、Actifio Go SaaSで銅賞を獲得した。このプラットフォームでは、ユーザーがハイブリッドクラウドとマルチクラウドの中でコピーデータを管理でき、移行と分析に加えバックアップとDRも提供されている。

Cloud Daddy Inc.は、同社製品Secure Backup V1.5で本コンテスト初の審査員賞を受賞した。クラウド・ネイティブであるAWSのワークロード用データを、バックアップとDR、セキュリティ、基盤管理によって保護する機能は、審査員に好印象を与えた。ある審査員は、「Cloud Daddy Secure Backupには、セキュリティと基盤管理機能が含まれていたために、選考で優位に立つことができた。」と述べている。

2019年度バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス部門受賞製品の詳細については、リンク先を参照。

 

クラウドストレージ

この部門の受賞製品は、ハイブリッドまたはマルチクラウドを、これまでより費用効率が高くアプリケーション要件も満たす使い方をしつつ、複数のオンプレミスとパブリッククラウド・ロケーション間にまたがるデータアクセスとデータ管理を提供する。

スタートアップの LucidLinkが同社製品Filespaces 1.0クラウド・サービスで、クラウドストレージ部門の金賞に輝いた。この製品は、世界中に分散したクラウド・オブジェクトストア内のデータへのアクセスを高速化することによって、巨大で密集したデータセットへのリモートアクセスが必要な企業をターゲットにしている。クラウド・ネイティブのファイルシステムは、S3ベースであればどのようなオブジェクトストア上でも稼働し、データからメタデータを分離させ、クラウドのデータをオンプレミスのデータと同期する。

 

銀賞を受賞したHammerspaceはデータの物理ロケーションを提供する複合メタデータを抽出・保存する。これによって、ユーザーはロケーションに依存しないグローバルな名前空間を使って、複数のオンプレミスとパブリッククラウド間にまたがるファイルとオブジェクトを探し出し、管理することができるようになった。

Scalityは、同社のRing8 file and object storage softwareにマルチクラウド用機能eXtended Data Managementを追加することにより、この部門における第三位を獲得した。この機能によって、ユーザーはオンプレミスとパブリッククラウド間でデータのオーケストレーションが可能になった。

2019年度クラウドストレージ部門受賞製品の詳細については、リンク先を参照。

 

ディスクおよびディスク・サブシステム

ディスクおよびディスク・サブシステム部門の受賞者は、フラッシュ・ベースのアレイへの移行と、Capex(設備投資)からOpex(事業運営費)への経営モデルの転換を示している。ディスク・アレイを置き換えつつある超高速フラッシュとAIを稼働させるために使われる計算用ストレージは、市場の最新トレンドを示す好い例である。

スタートアップのVast Data Inc.は、同社製品Universal Storage V2.0で金賞の座を獲得した。この製品は、NVMe、3D Xpointパーシステント・メモリー、QLC(クアッドレベルセル)NANDフラッシュを組み合わせて一つのエンタープライズ・ストレージ・システムにしたものだ。同社はコントロール・レイヤーを分離することで、HAのNVMe筐体を使用したテナント・ベースのコンテナ・プールを実現した。このシステムは、高密度の巨大ストレージと最新コンポーネントを結集し著しく向上したパフォーマンスを提供する一方で、拡張型消失訂正符号Locally Decodable Erasure Codesによって、データ保護を実現している。

 

 

NGD Systemsは同社製品32 TB Newport U.2 NVMe 計算用ストレージ・ドライブで、銀賞を獲得した。この製品は、同社の以前の大容量モデルの2倍の容量を持っている。Newportは、SSD内部で計算タスクを走らせるため、計算処理のためにデータをメインメモリに移動させる必要はない。この製品によって、ユーザーは巨大な容量のAIデータを、ハードウェアの追加なしにほぼリアルタイムで処理できるようになった。

DataDirect Networksは、同社のDDN AI400 NVMeオールフラッシュ・アプライアンスで、銅賞の地位を確保した。AIの使用増加に対応して開発されたこのアレイは、2Uの筺体に最大240TBのNVMeフラッシュを搭載することができ、理論値で49 GB/秒および150万IOPSを提供する。

2019年度ディスクおよびディスク・サブシステム部門受賞製品の詳細については、リンク先を参照。

 

HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー

ハイパーコンバージド・エンタープライズ・ストレージ製品はここ数年、初期のハイパーコンバージェンス技術の弱点を克服すべく、進化を遂げてきた。コンポーザブル・インフラストラクチャーの登場と、一部でHCI 2.0と呼ばれる技術は、この進化の必然的な結果であり、この部門の受賞製品にはこれらの開発が反映されている。

Datrium Inc.は、プライマリストレージ、バックアップ、DRを統合した製品Automatrixによって、この部門の表彰台の最上段に立った。Automatrixは、物理ハードウェアからストレージを分離し、SANの耐久性とHCIの簡潔性を組み合わせており、ある審査員はこれを「ハイパーコンバージド・システムと専用システムの最高の組み合わせ」と呼んだ。別の審査員は、DatriumがDR、バックアップ、マイグレーションをHCIに組み込んだことと、驚異的な拡張性、パフォーマンス、操作の簡易性を高く評価した。

 

 

Western Digital Corp.は、コンポーザブル・インフラストラクチャー製品OpenFlex F3100 Series Fabric Deviceで銀賞を取った。この製品は、革新的なハードウェア設計を用いて、NVMe-oF上のサーバー群からストレージを分離する。「将来のコンポーザブル・インフラストラクチャー設計が、ストレージ使用率とパフォーマンスのバランシングを改善していく上で、NVMe-oFは非常に重要だ。」と複数の審査員が語っている。

銅賞を取ったのは、HiveIOのHive Fabric 7.3だ。この製品を標準的なx86サーバー・ハードウェアにインストールすると、仮想デスクトップ基盤と仮想サーバー群が迅速に立ち上がる。この製品は、パフォーマンスを加速するためのGPU、ソフトウェア定義のネットワーク、物理ネットワークをサポートしている。AIベースのMessage Busによって、ストレージが専門ではない一般のITメンバーでもこの製品の管理ができるようになっている。

2019年度 HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー部門受賞製品の詳細については、リンク先を参照。

 

ストレージ・システムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア

この部門の受賞製品は、AIと機械学習のエンタープライズ・ストレージ・システムおよびエンタープライズ・ストレージ管理製品への組み込み、そしてAIワークロードをサポートする機能の追加、という高まりつつあるトレンドをよく示すものとなっている。ある受賞製品は、IoTデータをエッジで分析する機能の必要性を認識しており、別な受賞製品は、パフォーマンスを上げるためにストレージをメモリーとして使用する方法を導入している。

金賞を受賞したWekaIO WekaFSは、x86サーバーとAWSクラウド用に作られたハードウェア非依存の並列ファイルシステムで、高パフォーマンスの並列処理を最優先にしている市場がターゲットだ。NVMe用に設計されたWekaFSだが、SMBやNFSなどのレガシー・プロトコルもサポートしている。この製品の最新バージョンは、パフォーマンスとストレージ消費量が大幅に改善されており、審査員に好印象を与えた。

Excelero NVEdgeは、エッジに対する高パフォーマンス・データストレージと管理の提供によって銀賞を獲得した。これを使えば、企業はどんなHAストレージ・アーキテクチャーとの組み合わせでもNVMeフラッシュアレイを構築できるようになる。審査員は、市場の要求である、大規模な拡張性と高可用性をもったエッジ・ストレージにNVEdgeが適確に対応している点に注目した。

 

 

ふたつの製品が、この部門の銅賞を共に受賞した。The DataCore Software-Defined Storage PSP9 Updateは、保存データ暗号化、Microsoft Hyper-V およびVMwareデプロイメント用インストレーション・マネージャー、クラウドベースの予測分析などの機能を追加している。Formulus Black Forsa 3.0は、ソフトウェアを修正することなく、完全にメモリーの中で稼働させることによってアプリケーションのパフォーマンスを加速するインメモリー・プロセッシングによって受賞した。

2019年度 ストレージ・システムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア部門受賞製品の詳細については、リンク先を参照。

このコンテストで最終選考に残るのは容易ではない。ましてや2019年のベスト・エンタープライズ・ストレージ製品として受賞するのは至難の業だ。この栄誉をたたえて、今回の受賞者に心から拍手を送りたい。

James Alan Millerは、受賞経験を持つビジネステクノロジー・ライターであり、雑誌およびオンライン・コンテンツの立ち上げ、開発に広範な経験を持つ編集者。

 

 

 

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