データセンターの要となるアプリケーション・インテリジェンス


AIベースのアプリケーション・インテリジェンスツールは、ワークロードの自動検知、要求分析、レコメンデーション(推奨)作成を提供することによって、増大する規模と複雑さへの対処に貢献している。


Storage Magazine 2019年11月号より
Scott Sinclair

 

データが今日(こんにち)のビジネスの燃料となっていることは、万人が認めるところである。しかし、その燃料を汲み上げているのは誰なのだろう?IT部門の仕事は、データとサービスが使える状態を維持するだけではない。営業部隊がビジネスを前進させるのに必要なデータを使えるようにすることもITの仕事である。

2019年3月、Enterprise Strategy Groupは2019年技術投資計画の調査を行った。この調査によると、営業部門の幹部の4分の1が、ITはビジネスを妨害するもの、と考えていると回答した。これは、ITを市場で優位に立つための差別化要因と考える回答者の4倍以上の数である。

今日(こんにち)のデジタル・ビジネスにおいては、ITが差別化要因でなければならないのだから、これは問題である。結局のところ、現在興隆しつつあるデジタルエコノミーにおいては、勝者と敗者を分けるのは、企業が自分のデータをいかに効果的に調査するかだ。

ITが今日(こんにち)のビジネスの要件を満たすべく格闘しているのは何故なのか?二つの大きな理由は、規模と複雑さだ。IT環境はこれまでに無いほど規模と多様性が増大し、基盤はデータセンターの中でさらに分散され、パブリッククラウドとエッジを結ぶ役割も負っている。同時に、先進的解析、機械学習、新規に開発されたコンテナベースのアプリケーションなど、多数の新しいワークロードが、企業のデータ管理方法を変えつつある。

ITの地位を維持するために役立つのが、基盤の多様な技術革新だ。これらは今すぐにでも使える。また、NVMe、ストレージクラス・メモリ、パーシステント・メモリも普及まであと一歩のところまで来ている。ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー(HCI)のような新しいアーキテクチャーも、導入が増え続けている。管理の面では、自動化ツールの人気が非常に高い。データセンターの刷新を重要課題として挙げるIT部門の中で24%の回答者が、IT基盤のオーケストレーションおよび自動化ツールを最優先5項目の1つと考えている。

新しい基盤と先進的自動化の組み合わせは、一度設定すれば後はシステムにお任せのIT環境にぴったりの響きがあるし、そうあるべきだ。しかし、実際はそうでない。まだ足りないところがある。アプリケーション・インテリジェンスとインサイト(洞察)だ。

 

求められているのは、優れたインサイト

ほぼ全てのCIOが、自社独自のニーズに合わせて作られたIT基盤製品を求めている。ここで問題になるのは、自社のワークロード要件を本当に理解している企業がいない、いたとしてもごくわずか、という現実だ。このインサイト力の不足が露呈するのが、アプリケーションがパブリッククラウドに移行して、コスト計算方法が変わる時だ。

 

 

企業がワークロードに対して(インサイトとまではいかなくても)優れたセンスを持っていても、期待値と現実が一致するわけではない。例えば、巨大なファイルを持つファイルベースのワークロードは、多くの場合大きなブロックの順次読み込みが良いとされる。しかし、メタデータ要求はというと、むしろ小ブロックのランダム読み込みが良さそうに見える。これだけでは、次の質問に対する答えになっていない。上記の例のようなワークロードは、コンピュート・レイヤー、ネットワーク・レイヤー、ストレージ・レイヤーにおいて、どのような様相を示すのか?

現在のワークロードは、これまである程度のレベルの基盤を必要としてきた。そして今後ITが管理することになる新しいワークロードは、さらに上のレベルのIOPS、帯域、容量を必要とする。ITは従来、言わば2つの形態(SANとNAS)でストレージ基盤を提供してきた。ユーザーは、この形態の中で大中小の大きさのアレイを選択することができた。

 

 

今日(こんにち)ITは、これまでより遥かに広範な基盤のオプションを自由に持てるようになり、遥かに大規模な基盤を運用するようになった。一つのアプリケーションを稼働させるアーキテクチャーとして複数のオプションがありうるが、あるアーキテクチャーは別なアーキテクチャーより効率が良いということが出てくる。効率の良いオプションは、節約につながる。

以上が、なぜITにとってアプリケーション・インテリジェンスとインサイトが必要になるかの理由である。データセンターの刷新を優先課題として挙げた企業のうち31%が、AIと機械学習をIT製品に組み込まれた機能として、また優先投資項目トップ5のソリューションとして考えている。これは、システムにやらせるべきであり、人間が手作業で行うにはコストがかかりすぎる。

 

現場で稼働するアプリケーション・インテリジェンス

複数のITプロバイダーが、アプリケーション・インテリジェンスとインサイトの必要性の増大に対応した製品を提供している。例えば、Hewlett Packard Enterprise (HPE) は、Nimble買収の一部として獲得した予測分析ツールであるInfoSightを提供している。InfoSightは、テレメトリデータ(訳注:センサーデータ、パフォーマンスや使用リソース量などの統計データなど)および機械学習を使って、潜在する問題を予測・特定し、多くの場合、それらの問題がシステムに影響を及ぼす前に解決する。HPEは前述の買収後、InfoSightを使ったイノベーションに積極的に取り組み、3PAR、SimpliVity、PrimeraなどのストレージおよびApollo、ProLiantなどのサーバーへの拡張を行っている。

 

 

ポートフォリオ全体に含まれる大量のテレメトリデータを組み合わせて作られたインサイトを、企業は単なる基盤の定期的なサポートを超えた用途に使うことができる。InfoSightは例えば、ProLiantに対しても、ワークロードのパターンを分析し、そのデータをサーバーレベルのパフォーマンス・ボトルネック除去に利用するレコメンデーション・エンジンを提供している。ストレージとサーバー両方の側でテレメトリデータを収集し分析することによって、さらに大きなメリットを提供する可能性を秘めた斬新なデータ基盤が出来上がる。

その他の予測分析製品としては、Dell EMC CloudIQ、Hitachi Vantara Infrastructure Analytics Advisor、IBM Storage Insights、NetApp Active IQ、Pure Storage Pure1などがある。

 

必要不可欠になるAIベースのツール

これらのツール(およびそのメリット)が普及しているにもかかわらず、企業がこれらのツールを使う頻度は意外に少ない。とはいえ、ITの規模が増大するにつれ、テレメトリ情報と予測的インサイトはますます重要になってくるだろう。

IT基盤空間はあまりにも大きく多岐にわたっていて、その全てを詳細に至るまで理解することは不可能だ。これらAIベースのアプリケーション・インテリジェンスツールは、今後IT自動化を改善する取り組みにおいて欠くべからざる役割を果たすだろう。

 

Scott Sinclairは、テキサス州Austinに本社を置くEnterprise Strategy Groupのストレージ・アナリスト。

 

 

 

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