DRaaSについてベンダーに聞くべき大事な質問


ベンダーが提供するDRaaSは、どれも同じというわけではない。今使っている、または将来使う予定のプロバイダーに以下の質問を投げて、その欠点や弱点を明らかにしよう。


Storage Magazine 2019年11月号より
George Crump

 

DRaaS(Disaster Recovery as a Service)は、理論上はこれまで常に良いものだと見られてきた。DRaaSによって、企業はDRサイトを所有または借りるのに掛かる諸々の費用や、そのサイトに置くデータ保護のために必要なストレージおよび待機系サーバーの費用を節約することができる。

これらの節約は魅力的だが、ITプロフェッショナルは、今使っている、または将来使う予定のDRaaSベンダーに、彼らの製品とサービスが期待通りのものであるかを確認するために、痛いところを突くような質問をしなければならない。

 

質問1:インスタント・リカバリにはどのような手順が含まれているのか?

ほぼ全てのDRaaSベンダーが、形の違いはあるにしても「ボタンを押すだけ」で復旧ができると謳っている。これは、インスタント・リカバリを指していることが多いのだが、そもそもこの技術は即座に復旧を提供するものではない。ほとんどの場合、アプリケーションがユーザー・ログイン可能な状態になるまでに、DRaaS製品は一連の手順を実行しなくてはならない。この中には、クラウドのアーカイブ・ストレージから高パフォーマンスのストレージ領域へとコピーする作業も含まれている。

データのコピーは、クラウドの中で行う場合でも時間がかかる。アプリケーションとそのデータが、本番の運用を許容しうるパフォーマンスを持ったストレージ・ティアにコピーされるのに、数時間かかることもある。IT部門は、データのコピーにかかる時間が、目標復旧時間(RTO)に納まるのかを計算に入れておかなければならない。

 

質問2:仮想マシンはどのように扱われるか?

DRaaS製品にはまた、仮想マシンをクラウド内で稼働できるように変換する機能が必要だ。これは通常、VMwareのイメージを例えばLinuxベースの仮想マシンイメージに変換することを意味する。ほとんどの場合、この手順はバックアップ製品がデータを本番ストレージ・ティアにコピーした後に行われる。

幸いなことに、ほとんどのDRaaSプロバイダーがこの処理を自動化している。但し残念なのは、ほとんどの変換処理は1仮想マシンあたり数時間かかる、ということだ。これらの変換は並行して走らせることができるが、やはり復旧処理を遅らせ、ここでもRTOに影響を与えてしまうことになる。

 

質問3:フェイルバックの実施はどうなっている?

災害後のある時点で、企業はプライマリのデータセンターを修復あるいは新規に立ち上げることになる。それゆえ、企業はDRaaS製品がどのようにフェイルバック(切り戻し)を行うのかを知っておくべきだ。アプリケーションを恒久的にクラウドに置いている方が安心だと考えるような企業でない限り、災害発生後にデータをオンプレミスに戻す方法が必要になる。災害によってデータセンターが破壊されてしまった場合、データセンターまるごとの復旧が求められる。

これは、インターネットの比較的小さな帯域経由で、場合によっては大量のデータを移動することを意味する。とはいえ、DRaaSではユーザーは新しいデータセンターへの戻しが完了するまで、プロバイダーのクラウド内でユーザーの環境を実行していられる。レプリケーションをしている間、ユーザーにはプロバイダーのコンピュート・リソース使用料が追加で請求される。そのため、フェイルバックの作業をできる限り早急に行うことが肝要になってくる。

基本データセットをバルクで輸送し(訳注:クラウドのデータをAmazon Snowballのような大容量ストレージに入れての輸送を想定しているものと思われる)、それを復旧した後、その間の変更データのみを同期できるDRaaSプロバイダーを探すのがいいだろう。

もっと一般的な事象は、災害の影響がデータセンターの一部のみのケースや、非常事態宣言が間違っていたケースなどである。これらの状況において、ユーザーにはプライマリ・データセンターとクラウド・データセンターを効率よく比較する機能が必要になる。目標は、本番運用がクラウド内で行われていた間の更新データのみを送ることだ。ほとんどのデータがそろっているのに、全面復旧を行うしかない製品は使い物にならない。

 

結論:DRaaSは成熟中

幸いなことに、DRaaSは成熟しつつある。ベンダーは、ユーザーの費用を節約するベーシックなDRサービスから、DRに対する備えを改善するサービスへと移行しているところだ。初期のDRaaSは、「無いよりはまし」の選択だった。しかし現在では、多くの場合、多くの企業がオンプレミスで持っているデータ復旧システムよりDRaaSのほうが優れている。

今日(こんにち)のDRaaS製品は、基幹系アプリケーションのデータを優先的に高パフォーマンスのクラウドストレージに置くことができる。さらに、一部のクラウド・プロバイダーは、セカンド・ティア、サード・ティアのクラウドストレージでも優れたパフォーマンスを提供する。これらの製品の中には、事前変換や変換無しのリストアができるものもある。最後に紹介するのは、一部のプロバイダーが提供しているデータのバルク輸送サービスだ。企業はこれを利用して迅速にシステムをリストアできる。ソフトウェアがスマートシンク・リカバリをサポートしていれば、基本データセットを戻している間に更新された少量のデータを戻すだけで復旧が完了する。

 

 

DRaaSは、その始まりから長い道のりを歩んできた。あらゆる規模の企業が、単にDRの費用を低減するためだけでなく、DRのプロセスを改善するためにこの技術を頼りにできる。この技術は、クラウド利用の最良のユースケースのひとつではあるが、企業は選択するプロバイダーが、自社のニーズを満たしてくれるのか、きちんとした調査を行う必要がある。

 

著者略歴:George Crumpは、ストレージと仮想化を専門とするITアナリスト企業Storage Switzerlandの社長である。

 

 

 

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