2019年のホットなストレージ(後編)


Storage Magazine 2019年2月号より
Storage Magazine編集部

 

マルチクラウド・データマネジメント

Enterprise Strategy Groupの調査によると、81%の企業がIaaSかPaaS用として二つ以上のクラウド基盤プロバイダーを利用している。さらに、51%が3つ以上を利用している。

「ユーザーは今やマルチクラウド志向になっています。」Enterprise Strategy GroupのYuenはこう言う。

企業は同一タイプのワークロードを複数のクラウドに展開するのではなく、異なるアプリケーション用に複数のクラウドを利用している、とYuenは言う。

マルチクラウドの利点には、パフォーマンス、データ保護、保証された可用性などがある、と451 ResearchのアナリストSteven Hillは言う。

「(マルチクラウドをトレンドに押し上げている)大きな要因は、特定のクラウドプラットフォームに保存されているデータにとってのみ費用効果がある、クラウド専用アプリケーションとサービスだろうと我々は主張しています。とはいえ、データ管理が複数のクラウドにまたがるようになると、難しい課題が出てきます。この時、ますます重要になってくるのが、ロケーションにかかわらず、データ保護とアクセスコントロールに関する共通のルールセットを使った、ポリシーベースのデータ管理を確立することですが、これは言うは易し行うは難しです。クラウド-オブジェクトストア間にセマンティックスとフォーマットの違いがあるからです。最初から、クラウドプラットフォーム間で一貫したデータ管理をサポートするマルチクラウド・データマネジメント戦略をどう策定するかによって、今後進化していくデータ・プライバシー規則に準拠しながら、ガバナンス、セキュリティ、保護機能の選択の自由を確保できます。このような状況の中で、EUのGDPRやカリフォルニア州消費者プライバシー法のような新しい法律の登場によって、データがどこにあろうとポリシーベースのデータ管理の緊急な必要性を人々は感じ始めるでしょう。」Hillはこう語る。

Yuenによれば、マルチクラウドを扱う際の大きな課題の一つは、それぞれのクラウドが何を持っており、どこが違うのかを理解することだ、という。例えば、それぞれが異なる用語、SLA、支払請求サイクルを持っている。

「これらすべてを調べるのは大変です。しかし、そこにベンダーにとってのチャンスが転がっています。」Yuenは言う。

市場には多数のマルチクラウド管理製品が出ている。その中の5、6製品は2018年に出たものだ。以下はその一例だ。

Panzura
同社はオンプレミス/オフプレミス上のデータを検索、解析、管理するために設計されたVizion.aiというSaaSを引っ提げてマルチクラウド・データマネジメント市場に展開している。

Swift Stack
同社製品の1space multi-cloudは、オブジェクト・ベースとファイル・ベースのストレージソフトウェア用に単一の名前空間を提供し、プライベート/パブリッククラウド間でのデータのアクセス、移行、検索を容易にした。

Scality Zenko
プライベートとパブリックのクラウド間のデータ配置、管理、検索を支援する。IoT機器でのデータキャプチャ及び分散での使用事例がある。

NooBaa
(新興企業のNooBaa社は2018年にRed Hatに買収された)この製品は、パブリッククラウドのAWSとMicrosoft Azure間のデータ移行機能を提供する。この製品は、パブリック-プライベートクラウド間にまたがる複数のデータレポジトリーを統合したビューに対して単一の名前空間を追加する。

Rubrik Polaris GPS
同社の新製品Polaris SaaS 管理プラットフォーム上の最初のアプリケーションである。ポリシーマネジメントと、オンプレミスと複数のクラウド上に保存されたデータの管理を提供する。

Cohesity
こちらもHeliosというSaaSアプリケーションを追加した。オンプレミスでもパブリッククラウドでも、同社のData Platformソフトウェアの制御下でデータを管理する。

Yuenは、多くの会社がマルチクラウド・データマネジメント用に二つ以上のベンダーの製品を使っていることに注目する。これはこれで構わないという。「大は小を兼ねる、とは限りません。しかし、これは必ずしも悪いことではありません。」とYuenは言う。

マルチクラウド・データマネジメントツールを改善するには、パフォーマンスの観点からの洞察力を強化する必要があると思う、とYuenは言う。ツールは、クラウドプロバイダー間でのティアリングや使用レベルについてのアドバイスを提供できるはずだ。この解析的要素はマルチクラウド・データマネジメントの次の段階の一部をなすものだ。

現在の状況をYuenはこう語る。「私たちがいるのは、まだ第一段階です。」

 

コンポーザブル・インフラストラクチャー

コンポーザブル・インフラストラクチャーは、IT管理の用語集の中で最も新しいアーキテクチャーのひとつだ。だが、出来たばかりの用語かというと、そうでもない。このアーキテクチャーが出てから2、3年経つ。また、我々が前年注目すべきストレージ技術動向のひとつ、と紹介したにもかかわらず、2018年は誇大な広告に現実が追いついていなかった。しかし最近になって、ようやく多くのベンダーからコンポーザブル・インフラストラクチャー製品が出るようになってきた。

ITの親戚のコンバージド・インフラストラクチャーやハイパーコンバージド・インフラストラクチャー(HCI)のように、コンポーザブル・インフラストラクチャーは、コンピュートやストレージのようなITの物理リソースを取得し、それらを仮想化する。仮想化された容量は全て共有のプールとなる。しかし、コンポーザブル・インフラストラクチャーは、ここからもう一歩先に進んでいる。管理者はHCIのようにこのプールから仮想マシンを生成できるだけでなく、物理サーバーやコンテナにそれらのマシンを適用できるのだ。

仮想のリソースを管理するのに、ハイパーバイザを使うHCIと違い、コンポーザブル・インフラストラクチャーは、全物理リソースを認識し、集約して仮想プールにし、ITのエンドユーザー向け製品を供給(あるいは構成)する、そのどのフェーズにおいてもAPIと管理ソフトウェアを使う。

2014年にまで遡るこの市場への早期の参入を果たしたのは、CiscoとHPEだった。しかし、最近になって新興のストレージとHCIの企業がコンポーザブル・インフラストラクチャー市場への参入または参入への興味を示すようになった。2018年9月にはPivot3のCEO Ron Nashが、同社がコンポーザブル・インフラストラクチャーを供給する方向で動いている、と語った。
当時、Search Converged Infrastructureのインタビューの中で、Nashはこう語った。「我々が向かっている方向は、コンポーザブル製品をソフトウェアのメカニズムに組み入れることだ。このソフトウェアの層は、下からプラットフォームを操作し、正しいコストレベルと正しいセキュリティレベルで正しいサービスレベルを提供する正しい種類のユニットを配備します。」

2018年8月には、ストレージアレイ・ベンダーのKaminarioが、自社のNVMeオールフラッシュアレイがコンポーザブル・インフラストラクチャーの実装に使えるようにKaminario Flexという名前のソフトウェアを追加したと発表した。しかし、市場にいち早く参入したHPEも自社のSynergyコンポーザブルにあぐらをかいている訳ではない。2018年5月、同社はSynergyコンポーザブル・インフラストラクチャー・プラットフォーム中でリソースの仮想プールにネットワーク機能を追加するためにPlexxiを買収したと発表した。


(完)

 

TechTarget ストレージ・メディア・グループ編集部:James Alan Miller, Rodney Brown, Paul Crocetti, Garry Kranz, Dave Raffo, Carol Sliwa, Johnny Yu

 

 

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