忍び寄るゼタバイト黙示録への備え


コグニティブ・データマネジメントへの道は遠く曲がりくねっている。我々は手遅れにならないうちに、そこに辿り着けるのだろうか?


Storage Magazine 2018年11月号より
Jon Toigo

 

このコラムの読者は、私が自動データマネジメントという考え方に懸念を抱いているのを知っているはずだ。ITの未来を語るとき、データマネジメントを喩えて言えば、タイヤが道路と接するところである。

タイヤが摩耗するまで、SDSやハイパーコンバージド・ストレージを使うことはできる。しかし、全てのデータから至高の客観的真実を得たいという熱意と、データを作り出す人々のプライバシーを守ろうとする政府の意図が、押し寄せるデータの洪水と組み合わされることによって、さほど遠くない未来に、問題が引き起こされる。人間の管理者が管理するには、あまりにも多くのデータ、多くのストレージ基盤、ストレージサービスが存在している。ここには、何らかの自動化技術が必要だ。しかし、時間はだんだん無くなりつつある。ゼタバイト(ZB)黙示録はすぐそこまで来ている。

 

ゼタバイト黙示録がやってくる

IDCは2024年までに160ZB(後ろにゼロが17個つく単位だ)以上の新しいデータが作られるだろうと予測している。昨年だったか、Microsoft Azureのアナリストが、ディスクと不揮発性RAMが年間に生産される容量は、全体でほぼ1.5ZBだとレポートしていた。日々増大しているそれだけのデータ量を管理しきれなくなることは、簡単な計算をすればわかることだ。業界の友人が、「この問題はデータの重複排除と圧縮の技術が解決してくれる」と言っていて、その通りならば大変結構なことだ。とはいえ、私は2000年~2010年のいつ頃だったか、重複排除ベンダーが公言していた70分の1のデータ削減率を、未だかつて誰も実現していないことを思わずにはいられない。それ故、私は他の人達のように重複排除の防波堤がデータの津波を防いでくれる、という考えに飛びつく気にはなれない。

データの保存にバイナリーのアルゴリズムよりは、フラクタルを使うフラクタル・ストレージなどの革新技術による容量使用効率改善の方が将来性がある。これを使えば、現在我々が持っているフットプリントに大量のコンテンツを保存できる可能性が高まる。もっと簡単なのは全てのデータコピーを削除し、ファイル、ブロック、オブジェクト、の全タイプのストレージの同時使用が可能なストレージ最適化のメカニズムを使うことだろう。(StorOneは、この分野で持っているコアの特許技術から考えると、重要な製品だ)

いろいろあるだろうが、究極的にストレージはハイパースケールになるだろう。そうなった時、そこにあるのは管理するにはあまりにも多すぎるデータだ。驚くまでもないことだが、バックアップ・ベンダーもこの現実に真っ先に気づいた人達だった。

 

考えうる出発点

最近、元Gartnerのアナリストで、現在はVeeam Softwareの企業戦略部門のVPをしているDave Russellと話す機会があった。Russellは彼がインテリジェント(または自動化)データマネジメントへの旅と名付けた図を見せてくれた。彼はVeeam出身なので、その図の出発点がバックアップだったのにはさほど驚かなかった。バックアップはデータマネジメントのコアとなる機能である。データを守るただ一つの方法、それはコピーをすること、つまり、バックアップをすることだ。それによって、元のデータが壊れたり削除されたりしても、データを悲惨な状態から救い出し、元に戻すことができる。これは、データ保護のイロハである。

Russellにとって、バックアップはインテリジェント・データマネジメントへの旅を始めるただひとつの場所なのだ。私もこれには賛成ではあるが、たぶん違う理由からだ。効率的にバックアップを行うためには、データが使われるビジネス・プロセスの評価に基づいて、どのデータをバックアップするか、さらにそのデータのアクセスと更新頻度に基づいて、どれ程の間隔でバックアップするかを定義しなければならない。

この手のデータ分類の訓練を重ねることにより、最終的には管理者がデータのライフサイクル・マネジメントのポリシーに拡張できるような、ある種のデータに対するデータ保護ポリシーができあがる。最初は特定のサーバー・ストレージキットと連携したバックアップデータが、やがて多くのサーバーやストレージ装置、あるいは複数のクラウドさえも包括するさらに統合的なアプローチへと発展していくだろう、とRussellは語る。ただし、この進化には管理効率と視認性を大幅に向上し、様々な基盤にまたがるたくさんのデータ保護プロセスを管理できる、現在のものより優れたツールが必要だ。この時点で、自動化されたデータマネジメント・システムがデータに対してポリシーを適用し、必要とされる保護タスクを実行させることにより、自動化処理はよりプロアクティブになれるだろう。

Russellの図では、移行の際に興味深いことが起こる。視認性の段階でポリシーベースのデータマネジメントからビヘイビア(振舞い)ベースのデータマネジメントへの変化が示されているのだ。データはその振舞いによって分類され、必要なストレージの保護、保存(アーカイブ)、プライバシー(セキュリティ)を行う適切なサービスを提供する。このプロセスはデータの処理が完全に自動化される段階まで続く。そこがRussellの図の最後のステージだ。

 

喩えは難しい

ポリシーベースからビヘイビアベースへ変わるという考え方は好きだが、そのシステムがユーザーとコミュニケートするのは難しいかもしれない。今年初めに、自動化データマネジメントをコグニティブ・データマネジメントとして概念化する製品を持って市場に参入したあるベンダーは、この「コグニティブ(認知)」というところこそが普及を妨げていることに気付いた。コンピューターが自動的にデータの振舞いを評価し、アクションを取ることに対して、人々はどういう反応をすれば良いのかわからないのだ。

コグニティブ・データマネジメントの会社に勤める友人が、製品のコンセプトを伝えようとして自動運転の車の喩えを使ってみた。しかし、自動運転の車がプログラムの欠陥と低速ネットワークによる更新の遅延により複数の事故と負傷者を出したために、喩えとして使えなくなってしまった。

それ以来彼は、マーケティングメッセージを作り変えて、彼の製品がデータ移行を自動化することをアピールしたところ、かなり大きな反響を得た。データ移行は大半のストレージ管理者にとって忌むべきものであり、管理者の労働時間の多くを消費する報われない仕事だからだ。バックアップという出発点からデータマネジメントの理想世界に到達すべく頑張っているVeeamのように、私の友人の会社もデータ移行の効率改善という出発点からそこに到達しようとしている。

本当の自動化データマネジメントを作り上げるどちらのアプローチも、あなたのデータを安全且つ確実に、あなたのデータをあるべきところに届けてくれるだろう。データ損失の大災害起こる前に、業界が自動化を実現できるかどうかが問題だ。

 

Jon William ToigoはIT歴30年のベテラン。Toigo Partners InternationalのCEO兼主要執行役員、Data Management Instituteの会長でもある。

 

 

 

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