コンバージェンス(集約)時代に求められるITとストレージのスキル


データセンターがシンプルになったために、特化したスキルセットを持つストレージやその他のITのプロは不安を感じている。しかし、彼らが生き生きと仕事をする道はある。


2018年11月号Storage Magazineより
Scott Lowe

 

デジタルトランスフォーメーションによる変革の波は、一つ一つのITの機能にまで及び、それにつれてITの機能を監督する者の責任も変わりつつある。今日(こんにち)我々はこのデジタルトランスフォーメーションの変革が、ストレージ管理者のスキルに及ぼす影響を目の当たりにしている。ITの進化がもたらした新しいワークロード・アーキテクチャーの選択肢の結果として、コンバージド・インフラストラクチャー、ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー、クラウド内インフラストラクチャーがIT部門でも普通になった。オンプレミスのニーズ向けに、コンバージド・インフラストラクチャーとハイパーコンバージド・インフラストラクチャーの技術は、市場を活気づけ、日々拡大しつつあるようだ。

企業は、どんどん複雑さを増すデータセンターの環境をコントロールするためにこれらの製品を導入してきた。その目的は、ITを単純化し、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みを計画段階から実行段階へと移行させることだ。コンバージド・インフラストラクチャーとハイパーコンバージド・インフラストラクチャーの登場もまた、この変革の一環である。この変革によって、職務内容は書き換えられ、ITプロフェッショナルは自分たちが現在の仕事に関わり続けるには、特定のスキルを習得するか、自分たちが現在得意としている分野を変更するしかないということに気付き不安になっている。

現在人気の高いコンバージェンス技術の場合、深いスキルセットとは対照的に、広範なスキルセットを持っている人の方が、より高い評価を得ている。何故、そうなっているのかを見てみよう。

 

ゼネラリストの台頭

今日(こんにち)の基盤によってITゼネラリストの時代が訪れた。これは、専門的なスキルを持った人々がお払い箱になる、という意味ではない。浅くても広範なスキルを持った人間が優れた管理を行う。これが、よりシンプルで、よりコンパクトな基盤管理のパラダイムの意味だ。これは、雇用主にとってポジティブな展開だし、ITプロにとってもそうである可能性がある。専門家とゼネラリストの歴史的な違いについて考えてみよう。専門家は一つ一つのニュアンスを学ぶために、リソースであるサイロの奥深くまで分け入って徹底的に調査する。リソースから最大限のアウトプットを引き出すためだ。専門性の獲得には深くかつ絶え間ないトレーニングが必要だ。

このような専門性の獲得は、企業にとって高くつく。我々の中で、現在の技術の進化に大きな影響を受けた、ストレージ管理スキルを持っている人について考えてみよう。ストレージはおそらく、データセンターの中で最も管理が複雑なリソースになっている。ストレージは、コンバージドシステムやハイパーコンバージドシステムにまとめられ、一部のケースでは、抽象化や単純化が行われている。コンバージェンス(集約)の方に舵を切ると、専門家集団を抱えることが必要な汎用ストレージの保持は、経済合理性に欠けるのだ。 しかし、これでストレージ専門家が絶滅するわけではない。なぜなら、どんな企業も汎用ストレージの管理スキルを必要としており、ある種の専門的スキルセットを持った人間の居場所はまだ存在する 。

 

 

変わりつつある専門性の意味

とはいえ、コンバージド・インフラストラクチャーやハイパーコンバージド・インフラストラクチャー製品によって否応なく多くの変化がもたらされ、その影響を真っ先に受けたのは、主流(メジャーな、一般向け)アプリケーション用の汎用ストレージのニーズだ。コンバージド・インフラストラクチャーとハイパーコンバージド・インフラストラクチャーは、多くの従来型ストレージシステムが担っていた、これらの用途を器用に引き継いでくれる。ただし、ある種のアプリケーションや垂直型の業種では、汎用ストレージは最善の選択とはならない。(汎用ストレージとは、主流エンタープライズ・アプリケーション向けシステムを指し、専用ストレージとは、特定の要件向けに設定されたシステムを指す。)例えば、メディアやエンターテイメント業界で、技術的に選択されるのは、専用オブジェクトストレージや最近登場してきたクラウド・ストレージ製品である。この分野では、今でも専門的なストレージのスキルを持った管理者が必要とされる。多くの汎用ストレージのユースケースがコンバージド・インフラストラクチャー製品及びハイパーコンバージド・インフラストラクチャー製品に移行しつつある今、これらのアーキテクチャーが必要とするストレージ管理者のスキルを詳しく見ていこう。

 

コンバージド・ストレージ管理者のスキル

コンバージド・インフラストラクチャーでは、ストレージのプロがこれまで習得し愛着を持つようになったストレージ管理者の多くのスキルと処理を保持できる。例えば、管理者はここでもボリュームを作成したり、ストレージを深いレベルで管理したりする。ただし、それを行うのは、これまでよりもっと一元化された管理用インターフェースを経由して、だ。中にはより大きな変化もある。

統合によって管理は、はるかに簡単になる。そもそもそれがコンバージド・インフラストラクチャーの本質だが、スタック内のストレージ部分が同じスタック内の他のパーツとインターオペラビリティ(相互運用性)問題を起こすリスクは、ほとんどあるいは全くないと言える。従来型の環境がどのように管理されてきたかを考えれば、これは歓迎すべき変化だ。従来型の非コンバージド製品を寄せ集めてスタックを組む場合、ストレージ管理者はサーバーをストレージにバインドするファブリックを作成する際に、重要な役割を担っていた。彼らは、イーサネットやファイバチャネル等、実際に使用するメディアを指定するなど、プロトコルやインターコネクションの選択を行う。コンバージドシステムでは、ストレージが届いた時点でこのような多くの選択は終わっており、接続性はすでにデプロイされている。これによって、ストレージ管理者は設計や設定に煩わされることなく現行の管理に専念できる。

 

ハイパーコンバージド管理者のスキル

ハイパーコンバージド・インフラストラクチャーにおけるアーキテクチャー設計の変化は、ストレージ管理者にとってさらに激しいものだ。ストレージ好きの専門家の役割が劇的に変わるのは、ハイパーコンバージェンスにおいてである。ほとんどのハイパーコンバージド製品において、ストレージ層は見えないか、ほとんど見えない状態にある。ここでハイパーバイザのツールを経由した簡単なストレージ管理の必要性があるかもしれないが、これはあくまでソフトウェア中心の考え方だ。ハイパーコンバージド・インフラストラクチャーのプラットフォームによっては、管理者がハードウェアを多少は扱うこともあるだろう。容量を増やす必要があれば、管理者はストレージを拡張するために既存のクラスターに新規のアプライアンス(ノード)を追加できる。また、一部の製品では、ユーザーがハードウェアを開けてディスクを追加することもできる。これらのシステムでは、ストレージ管理者がすることはそれ以上ほとんどない。Scale Computingのクラスターなど、一部のシステムにおいては、必要なボリュームサイズと一般的なパフォーマンスレベルを指定する以外はストレージの管理が存在しない。この手のタスクを操作するのにストレージ工学の博士号は必要ない。あなたがストレージ管理者でこの記事を読んでいるのなら、不安になっているかもしれない。当然だろう。ストレージは多くの企業にとって面倒な課題だったし、市場はそれに真っ向から取り組み、複雑さを軽減する新しい方法を生み出してきた。あなたはどうするべきか?

 

専門性を深める

前述したように、一部の市場では、ストレージのことになると依然としてアーキテクチャーについての深い専門性が必要とされる。あなたがひたすらストレージを愛し、設計の仕事では満足を得られないタイプの人間であれば、以下の市場セグメントを調査すると良いだろう。

 

メディアおよびエンターテイメント

この市場ではオブジェクトストレージが大流行だ。またこの業界の企業は、あらゆるオブジェクトストレージ・ベンダーにとって主要なターゲットになっている。ストレージのプロフェッショナルが優れたストレージプラットフォームを構築することによって、自社を優位に導く機会もある。

 

人工知能

AIは、ストレージが重要なコンポーネントになる新興のワークロードだ。AIプロジェクト間には共通点もあり得るが、多くはユニークで、ひとつひとつがユニークなデータストレージ・アーキテクチャーを必要とする。この種のプロジェクトは、ストレージ管理の細かく深いレベルの仕事に、あなたをどっぷり漬けてくれるだろう。

 

アプリケーション専用ストレージ

多くのエンタープライズ・アプリケーションは今でも専用ストレージと、アプリケーションを積極的に習得し、どうすれば最善のサポートができるかを考えてくれるストレージのプロフェッショナルを求めている。

 

 

ゼネラリストになる

我々はITゼネラリストの時代にいる。ならば、ゼネラリストになるのはどうだろう?ストレージ管理者としての深いスキルは多少失うかもしれないが、他のエリアで得たスキルが、あなたにとって素晴らしい財産になるかもしれない。

ストレージ管理者は本当に頭の良い人々だが、純粋に技術的な役割となると、彼らが実際に興味を持って取り組まない限り、キャリアを広げることは難しくなりがちだ。違うリソース領域で求められるスキルに慣れてくるに従って、ITのパズル全体の中ですべてのものがいかにぴったりと組み合わされているかが容易に分かるようになる。ストレージは重要だ。しかし、ストレージはビジネスの全てではない。このことを肝に銘じてもらいたい。ストレージ管理者は、より上位の観点を持つことで、自分たちの仕事がどのようにビジネス全体を改善していくのかをより深く理解でき、そうすることによって、自分たちのキャリアにも箔がつく。

あなたの会社がコンバージド・インフラストラクチャーやハイパーコンバージド・インフラストラクチャーに投資しているのであれば、自分自身のストレージ管理者のスキルに投資するか、会社のより幅広いニーズに応えられるようにスキルを広げることによって、変化を先取りしよう。仕事のレパートリーを増やし、あなたのストレージの才能は抑え気味にして、あなたの会社に、より包括的で且つビジネスに重点を置いた、よりシンプルなデータセンターを構築するための手助けができるゼネラリストの面をアピールする方法を考えてもらいたい。

 

Scotte LoweはTechTargetの前CIOで、TechTargetやその他の出版社に頻繁に寄稿している。 現在は、ActualTech MediaのCEO兼創設者で1610グループのマネジメント・コンサルタント。Twitterのアカウントは@OtherScottLowe。

 

 

 

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