ストレージって今でも大事?
エンタープライズ・ストレージ技術の最新トレンドの一部は、ひたすらITサイロの撤去にこだわっているように見える。
Storage Magazine 2018年2月号より
Mike Matchett
最近ストレージ界の風向きが変わったのを、読者の皆さんは感じておられるだろうか?データストレージの未来を予期したストレージ業界のベテランたちが、業界を去っていたことに気づいた方もおられるだろう。また、古くなったストレージを更新する時期になって市場を見渡すと、競合製品間の差別化が減っていたりするだろう。ワクワクするような新しいストレージ技術もなければ(いまどきどの会社にも、フラッシュがあるだろう?)、エキサイティングなベンダー同士の熱い戦いもない。重要なストレージのニーズの多くは、今ではクラウドサービスを使うか、ほとんど無名のベンダー製品か、さらにはオープンソースで間に合っているのかも知れない。
長年、大手ストレージベンダー同士の熱い戦いを観るのが楽しみだった。彼らはVMworldのような大きな展示会の最前列で、どちらが一番大きなブースかを競いつつ、そこで自社の最新の製品を展示したものだった。しかし昨年は、ストレージベンダーのブースは2,3列後に移動したようだ。確かに、SDSやハイパーコンバージドなどの市場における勢いやトレンドが、ストレージの戦いを大きく変えた。しかし、その大勢が判明するとともに、ストレージの競合ベンダーも舞台裏に移動してしまった。ストレージのエンベデッド(組込)、インテグレート(統合)、コンバージ、さらにはクラウドとの競争を通じて「チープ化」が進行している現在、これまでのように戦いを行うことは難しいのかも知れない。
最近のストレージ動向の多くが、何らかの形でITサイロになっているストレージの撤去と絡んでおり、データストレージ技術の先行きに疑問を投げかけている。誰もスタンドアローンのストレージを買わなくなったら、陳腐な「標準」レベルのストレージなど売れるわけがない。
我々は、ストレージが重要かつ一流の産業だった時代の終わりに立ち会っているのだろうか? これに対する短い答えは、Noだ。
だが、データはどうなる? それも膨大な…
経理に重点を置いた業界レポートによると、既存のストレージに注力している企業は、ハイエンドのハードウェア・アレイのマージンの継続的な低減に苦しんでいる、という。しかし、ストレージ全体の専有面積は全般的に増えている。グローバル化したアプリケーション、Webスケールのデータベース、ビッグデータ解析、オンライン・アーカイブ、さらにIoTのもたらすささやかなチャンスによってデータ量は爆発的に増加しており、これら新規に生まれたビットはどこかに行かなければならないのだ。
これらの新しいデータを全て、単純に安くて取り出しに時間がかかる(deep cold)クラウド・ストレージに入れることはできない。データに価値があるとすれば、それからできるだけビジネスの価値を絞りださなければならない。さらに、それが重要なデータであれば、そのデータはきちんと管理され、保護され、セキュリティが確保され、最大限に活用できるように管理されていなければならない。ストレージの形が、コンバージド、ハイパーコンバージド、クラウド、のような基盤に変わっても、その多くには重要な企業データが含まれている。
データストレージ技術の進化とともに、ストレージベンダーはこれからも競い合い、お互いを差別化し、データ管理サービスの強化によってユーザーをワクワクさせてくれる、そのような未来がやってくるかのように見える。しかし、今後多くの先進的サービスが出てくるにしても、それらのサービスの構造においては、各レイヤー間、例えば、ストレージアレイや低レベルでのストレージコンポーネント等での緊密な連携は行われない。つまり、構造が疎結合的「多層体」になっている。この領域にサードパーティ・ベンダーがどっと入ってくるので、ユーザーにとってはメリットがあるかも知れないが、ストレージベンダーがこの市場に高い利益を見込むのは難しい。
もちろん、進化したデータサービスの一部はストレージにおける緊密な低レベルでの連携からメリットを享受できる。しかし、これらのサービスおよびそれを提供するベンダーは、ストレージ以外のコンポーネントも含めた、深化した統合(コンバージェンス)こそが、最も自分たちの強みをアピールできる方法だということに気づいているのではないだろうか。純粋なストレージベンダーが抱える問題は、ハイパーコンバージド製品が、計算、ネットワーク、その他のコンポーネントを統合したものであるため、ストレージサイロに閉じ込めておくことができず、結果として、ストレージ市場から目に見える形の売上を奪ってしまうことだ。現に、例えばHPEのハイパーコンバージド製品Simplivityは、同社のストレージ事業部に属してはいない。
自動化されるストレージ
ストレージ技術の将来と言えば、ストレージの供給形態の変化より、ストレージ管理の方が、問題が多そうだ。IT自動化の増加がこの問題の真犯人だろうか?既存のエンタープライズ・ストレージと高いスキルを必要とするその運用管理は、多分、よりクラウド的なITアーキテクチャーのコンポーネントとして完全に自動化される運命にあるだろう。だとすれば、我々ストレージのプロは店をたたんで家に帰るしかないのだろうか?
いや、しかし誤解しないでもらいたい。IT自動化は良い事だ。自動化が増えていくのは自明のことだ。自動化は、オーケストレーション、セルフサービス、DevOpsなどのITの先駆的技術の中心にあるものだ。ITは、繰り返しが多く、煩雑で、ミスを犯しやすいタスクの自動化に常に取り組まなくてはならない。また、ベンダーが認証した自動化によって、沢山のストレージ管理タスクが、より大きなシステムの中に埋め込み可能になり、ストレージの複雑さは上手に覆い隠されるようになった。ここにこそ、ストレージのプロフェッショナルたちに射す一条の光があるのだ。企業が自動化スクリプトを作成しデプロイすると、そこには技術的負債が発生する。将来、いくつかのところで(あるいは、沢山のところで)、この自動化は最適化、デバッグ、(自動化による実効性の)分析、更新を行う必要が出てきそうだからだ。
新しいストレージの未来への挑戦
これを言うと不興を買うかもしれないが、価値あるストレージの専門性の中身は、管理に関する非常に深くて細かい知識から、DevOpsと密接に関わる動的運用管理の形態へと移行しつつある、と私は考えている。この未来の仕事形態は、OpsDevと呼んでも良いかも知れない。OpsDevでは、先進のアジャイル基盤オペレーターが、ソフトウェア定義化(SDx)が進むITスタック(そこにはストレージおよびデータ管理サービスが含まれる)に対して動的にプログラム開発や修正を行う。
ベンダーのコールホーム・サポートの仕組みは、リリースの度ごとに動的かつリアルタイムになり、機械学習のアルゴリズムはITシステム管理のあらゆる面に含まれるという状況では、スタンドアローンのストレージの専門知識不要論が出てくるのも当然だろう。しかし、リモートからの管理がどれだけ賢くなろうと、業務とそれが必要とするデータの何たるかを熟知し、ユーザーやその他関係者それぞれの要求を満たすものは何かを理解している現場のプロは、自分たちが会社を支えているという自覚を持つことだろう。
それでも、データストレージの未来に関しては、我々はまだ大きな課題を抱えている。今後のストレージは、3年~5年ごとに新しい機能を備えた個性的な製品を選択する対象ではなくなり、最も費用効果が高く、拡張性があり、世界中に分散されたストレージサービスを日々組み立てるものに変わっていくだろう。我々はこれらの業務を遂行する一方で、状況に対応したパフォーマンスやビッグデータ・セットへの即時アクセス、オンデマンドの容量を提供しなければならない上に、完璧なコーポレート・ガバナンス、データ保護、セキュリティを維持しなければならないのだ。
この業務の呼称は今後数年間のうちに、ストレージ管理者とは言わなくなり、チーフ・データ・イネーブラー(chief data enabler)のような名前になっていくのかもしれない。もちろん、どんな名前になるか正確には分からないが。大事なことは、現在我々がストレージの進化における大きな転換点を迎えている、ということだ。誰がなんと言おうが、現在のストレージはこれまでよりも重要になっている。そしてこれから先、ストレージの重要性はさらに増すだろう。
Mike MatchettはSmall World Big Dataのシニアアナリスト。Twitterのアカウントは@smworldbigdata。
Copyright 2000 - 2018, TechTarget. All Rights Reserved, *この翻訳記事の翻訳著作権は JDSF が所有しています。
このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。