2017年ホットなストレージ(前編)


 

ストレージメディア編集部
Storage Magazine 2016年12月号より

2017年データセンターで大流行する(しない)ストレージ技術は何だろう? 年に一度の我々のホットリストを見てもらいたい。

 

我々が大好きな季節がやってきた。この14年間、我々はこの時期になると、新年のストレージの世界に最も大きな影響を与えると思われるストレージの技術動向を記事にしてきた。2017年のホットな技術にようこそ!

これまでと同様、試作段階や実用的でない製品はここにはない。実用性が証明されたストレージの新技術だけが集められている。それゆえ、我々のリストがストレージ業界における最も優秀な技術動向を表しているのはもちろん、リストに含まれているのは、現在市場で購入しデプロイできる技術だけだ。

さあ、出発だ。シートベルトを締めて。準備はいいだろうか。2017年どんな技術が最も大きな影響をストレージの現場に与えるのか、我々の予測をとくとご覧あれ。

 

クラウド・ツー・クラウド・バックアップ

データがクラウドの中にあるからといって、データが適切に保護されているとは限らない。クラウド・ツー・クラウド・バックアップは、企業がひとつのクラウドに保存されたデータを他のクラウドにコピーできるようにすることで、それを補ってくれる。大きな飛躍の年になりそうな2017年のストレージ動向の中で、ユーザーのこのサービスへの関心は高まっており、ベンダーは次々とクラウド・ツー・クラウド・バックアップの機能を追加している。

ストレージエキスパートBrien Poseyは、クラウド・ツー・クラウド・バックアップが2018年には標準のサービスになりそうだと考えている。何故人気が出ているのか。理由は二つある。
「一つ目の理由は、バックアップの技術がようやくパブリッククラウドに追いつき始めたからです。このためクラウド・ツー・クラウド・バックアップがより現実的になってきたのです。二番目の理由は、これが大きいのですが、経済的要因です。」Poseyはメールでこのように書いている。

安く上がるから、という理由でデータをパブリッククラウドに移行した企業にとって、別のクラウドプロバイダーへのバックアップは経済合理性があり、オフサイトバックアップの利点も備えている。

ローカルのバックアップやストレージの出番はまだ残っているものの、ここ数年のうちにローカルストレージの要件は減少するだろうとPoseyは考えている。

ストレージエキスパート兼コンサルタントのChris Evansはメールの中で以下のように書いて来た。「我々はクラウドバックアップがデファクトスタンダードになる日を見ることになるかもしれない。ユーザーエラー等でデータを戻す時は、オンプレミスで保存されているスナップショットが使われる。バックアップベンダーは、この変化に適応していかなければならない。こうなると、バックアップアプライアンスが一番の落ちこぼれになるだろう。」

Evansは続けてこう述べる。
「プライベート・ツー・パブリック・クラウドのバックアップに限って言うと、アプリケーションをバックアップ&リストアするツールがあり、コスト節約と運用改善に貢献している。また、SaaSアプリケーションとデータもバックアップする必要があるが、クラウド経由でやるのが最も簡単だ。」

email、グループウェア、CRM、など一連のITサービスを社内で提供する手間を無くしたいと考えている企業にとって、SaaSはインターネットベースのソフトウェア配信モデルとして、主要な選択肢となってきた。そのため、SaaSが増え重要な業務がクラウドに移行するにつれて、より多くの企業がクラウド・ツー・クラウド・バックアップの価値を認め始めている、としてストレージ・コンサルタントのJim O’Reillyはこう語る。

「社内のデータセンターにデータを戻すよりも、経済性と運用効率の観点から考えると、クラウドデータの正規のバックアップを他のクラウド名空間に行う方が、クラウド内でデータ全体を保護するには最善の仕組みです。重要なアプリを稼働させる場所としてのクラウドがさらに快適なものになり、SaaSの使用が増えれば、クラウド・ツー・クラウド・バックアップは2017年中に、大規模なIT運用にとっては必須の方式になるでしょう。」

SaaSをターゲットとした主なクラウド・ツー・クラウド・バックアップ製品としては、Asigra Cloud Backup、 Barracuda Cloud-to-Cloud Backup、Datto Backupify、Dell EMC Spanningなどがある。これらクラウド・ツー・クラウド・バックアッププラットフォーム製品の2016年の機能拡張の一例として、BarracudaはMicrosoftアプリケーションのホステッドバージョンの増分バックアップにかかる時間を短縮させている。

クラウド・ツー・クラウド・バックアップはSaaSアプリケーションによって生成されたデータを保護するのに欠かせないものだ。注目すべきことに、2016年5月Salesforceの障害によりユーザーが数時間にわたってデータにアクセスできなくなるという事故が起こった。これに関連するが、SaaSベンダーは自身のバックアップをしていても、保護しているのはベンダーがサービスを継続するためのデータだけだ。例えば、もしSaaSユーザーがバックアップを取らずに間違ってデータを削除したとしたら、自分のデータを戻すためにユーザーはSalesforceにお金を払うことになるだろう。戻しにかかる費用は最低でも1万ドルだ。

クラウド・ツー・クラウド・バックアップやSaaSのバックアッププランを検討するとき、オンプレミスのデプロイメントで使うのと同じバックアップとリストアの基準を適用するように、とEvansは管理者にアドバイスしている。この方法をとることで、クラウド・ツー・クラウド・バックアップ・サービスがどの程度RTOおよびRPOを満たしているかをテストすることもできる。

 

 

 

コンテナ

技術の進化によってアプリケーション・マイクロサービスが直接永続的ストレージを使えるようになり、2016年コンテナ仮想化はエンタープライズ・ストレージへの飛躍的進出を果たした。我々はオープンソースのコンテナ化が、2017年もホットなストレージ技術動向としてあり続けるだろうと自信を持って予測する。コンテナの技術が、データ保護、永続的ストレージの使用、可搬性などの重要な分野で進化を遂げているからだ。

開発と試験がコンテナの利用方法の主流だが、専門家によるとストレージ管理者たちはDockerインスタンスの管理も重点的に学習中だという。ITコンサル会社451 Researchの研究部門長のHenry Baltazarは次のように語る。「最大の変化を一言でいえば、永続性です。コンテナは一時的なストレージからデータを保持しアプリケーションを保護する永続的ストレージへ移行したのです。」

オープンソースでDockerのライバルのCoreOSがLinuxコンテナ用ランタイムRocketの市販バージョンを初めてリリースしたものの、5百万ソフトウェア・ダウンロードと65万人のユーザーを誇るDockerがコンテナのトッププレーヤーであることは変わりない。アプリケーション開発チームは、Dockerを使ってコンテナ内のアプリケーションの迅速な開発、出荷、スポーン(訳注:親プロセスから子プロセスを生成すること)を行う。これら「Docker化した」アプリケーションがリアルタイムのデプロイメントに近づけば近づくほど、ステートレス・コンテナへのストレージの配備と管理が必要になってくる。

Dockerのランタイムエンジンは、元々Linuxベースのストレージ用に作られた。しかしMicrosoftは、2016年9月にリリースされたWindows Server 2016で、管理者がWindowsサーバー上でDockerの仮想化を行えるようにした。また、Microsoftは最新のサーバーOSに独自のコンテナランタイムを追加した。これによって、Microsoft製品のみを使っている環境で、Windows Server 2016サーバー・ハードウェア上かHyper-Vの仮想マシン内からWindowsベースのコンテナが起動できるようになった。

ハードウェアの仮想化はITにしっかり根付いているが、コンテナ化はOS自身の仮想化によってその考え方をさらに先へ推し進めた。その結果、複数のワークロードが下層のコードや依存ライブラリを共有できるようになった。高度に仮想化されたストレージを使っている企業では、数百個、もしかしたら数千個のコンテナをたった1つのノード上にデプロイできる可能性がある。ただし、動かすのは全て軽量のインスタンスになる。

IT基盤企業のServer StorageIO創業者兼シニアアドバイザーのGreg Schulzは、コンテナへの永続的ストレージ供給はストレージベンダーにとって最優先事項だとして、次のように語る。「ステートレス・コンテナとステートフル・コンテナのサポートは、この1年半以内にあたりまえになるでしょう。Docker、Linux、Windows用のコンテナは、ベアメタルサーバーを他のソフトウェア定義の仮想マシンやクラウドマシン・インスタンスとつなぐ、今後ますます成長する計算単位になっていくでしょう。」

Dell EMC、Hewlett Packard Enterprise (HPE)、 Hitachi Data Services、 IBM、Net-Appは大規模なDocker環境をデプロイし、管理するストレージアレイを提供することによって差別化を図っている。Portworx、Rancher Labs、StorageOSは、データ管理とサーバーノード間のコンテナデータの安全な移行に取り組んでいるコンテナソフトウェアの新興企業のなかの数社だ。

Red HatはLinuxベースのアプリケーション・コンテナ用バックエンドの永続的ストレージとしてRed Hat Glusterというソフトウェア定義のストレージ(SDS)を追加した。仮想化の巨人VMwareでさえも、この市場に参入した。VMware Integrated Containerによって、ユーザーはvSphere内でコンテナを稼働させることができるようになった。

前出のBaltazarはこう続ける。「他の新しい技術同様、コンテナのハイプ・サイクル(訳注:テクノロジーとアプリケーションの成熟度と採用率を表したグラフ。調査会社ガートナーにより考案された)は、実際のデプロイメントに先行している。つまり、企業は自身のコンテナとストレージ管理の点をつないでいくとき、十分に注意して動く必要があるということです。企業はコンテナでたくさんのOracleデータベースを動かし始めるようなことはしないでしょうが、コンテナが重要な役割を果たす分野は確かに存在します。モバイルアプリや解析は、コンテナが得意とする分野です。ユーザーは本当にパワフルなリソース・アロケーションと非常に迅速なプロビジョニング機能を手に入れるのです。」

 

(後編につづく)

 

 

 

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