2016年ホットなストレージ(前編)


ストレージメディア編集部
Storage Magazine 2015年12月号より

 

さて、今年もこの時がやってきた。ストレージメディア編集部がお届けする2016年のホットな技術である。これまで13年にわたって、我々は来たる年の最も優秀な技術を予測してきた。そして今年もまた、大きな影響力を持つだろう技術の数々を発表することを誇りに思うものである。

これまでの年と同じように、我々のリストは実用性を重視している。我々が選ぶホットな技術の大半は、未来的というより「ちょっと新し目」なものだ。なぜなら、我々は実績があり市場で入手可能な成熟した技術に焦点を合わせたいからだ。

ではいよいよ、ストレージメディア編集部が選ぶ「2016年ホットなストレージ技術ツアー」に出発だ。みなさん、シートベルトを締めて。準備は良いかな?

 

コピーデータ・マネジメント

複数のツールから作られた、多数の同一データの物理コピーを管理するのは、依然として高いコストがかかり、管理上の頭痛の種であり続けるだけでなく、セキュリティの脅威をももたらしている。これが背景となって、バックアップ、アーカイブ、レプリケーション、その他のデータサービスに単一のライブ・クローンを使う、コピーデータ・マネジメント(CDM)は、2016年にブレークする可能性をもつストレージ技術動向のひとつとなっている。

この市場は、従来のベンダーであるCatalogic Software、Commvault、Hitachi Data Systems、NetAppだけでなく、Cohesity Inc. やRubrikなどの新興企業が最近になって製品を発表するまでに成長してきた。調査企業のIDCは、IT部門がコピーデータにかけるコストは2018年にはほぼ510億ドルに上るものと予測している。

Actifioは、データと基盤を分離し、縦割りになっているデータ保護処理を統合する、コピーデータ仮想化プラットフォームを持っており、この分野のパイオニアである。

Cohesityは、スケールアウト・アーキテクチャーによって積み木方式で使えるインテルベースの2Uアプライアンスに、全ての二次ストレージ作業を統合させるように設計されたCohesity Data Platformソフトウェアをリリースした。同社のCohesity Open Architecture for Scalable, Intelligent Storage (OASIS)は、分析、アーカイブ、データ保護を統合するために、クオリティ・オブ・サービス管理機能が製品に入っている。

Rubrikは、バックアップ、重複排除、圧縮、バージョン管理を実行するソフトウェアが組み込まれた2Uアプライアンスを使ったデータ・マネジメント製品を引っさげて2015年に登場した。日立は、同社の製品Hitachi Data Instance Director (HDID)とHitachi Virtual Storage Platformをデータコピー削減に利用している。

CDMは従来のストレージ管理とは大きく異なっている。CDMは、ユーザーが使う複数のベンダーによる複数のツールごとの縦割り処理(これは特にデータ保護にいえることだが)をひとつにまとめてくれるからだ。

「最近の二次ストレージの中では、断片化が山ほど発生しています。ユーザーは複数のベンダーから違った製品を山ほど買い込んで、複数のユーザーインターフェースを通してそれらを管理しながら、なんとかそれらの製品を手動で連動させなくてはなりません。これが管理業務の非常に大きな頭痛の種になるのです。」Cohesity CEO のMohit Aronはこう語る。

Aronは、CDM製品が様々な機能を携えて進化してきたと考えている。
「Cohesity Data Platformは、あなたのデータ保護ワークフローをひとつのアプライアンスに統合します。我々は、これら全ての作業をたった一つの画面で管理できる機能を提供しています。私はたとえで、よくこう言います。我々の提供している基盤はAppleがiPhoneで行ったのと同じようなものだ、とね。我々は、ユーザーの用途に合わせてネイティブなアプリケーションを展開できるように、基盤とプラットフォームを構築しているのです。将来は、他ベンダーのアプリも稼動できるように基盤を拡張していきたいし、さらには我々のプラットフォーム上でサードパーティーがソフトウェアを作るということも考えています。」

Actifioの創業者兼CEO、Ash Ashutoshはこう語る。
「コピーデータ・マネジメントをやっているという会社には三つの種類がある。一番目は、バックアップの連中だ。彼らは、スナップショット・マネジメントを取り上げて、それに化粧を塗って、これがコピーデータ・マネジメントだ、と言ってるんだよ。次は、『あなたが14台のストレージ装置を持っているのなら、ウチの製品を15台目として買ってください』という連中。我々がやっているのは、こういうのとは違う。我々は、基盤から完全に独立している。我々は、データが作られたときからそのライフサイクルが終わるまで、一貫してデータを管理したいと思っている。我々は、データがどこにあろうとも、インスタントアクセスを提供し、データを規模に応じて管理する。」

これらの製品の目的は、従来のデータ保護プラットフォームから生成される、極秘データの無秩序なコピー数を統制することにより、データの安全性とアクセス性のバランスを保つことにある。

 

 

 

消失訂正符号

オブジェクト・ストレージ採用数の増加、クラウド・ベースのバックアップ・ストレージ、大容量ハードディスク・ドライブによって、消失訂正符号はここ数年、普及の勢いを加速しており、2016年ホットなストレージ技術動向のひとつになると予想される。ペタバイト、エクサバイト規模のデータセットでは、RAIDの使用は不可能だ、とITアナリスト企業、Storage Switzerlandの社長、George Crumpは語る。

「我々が6TBや8TBのドライブを使うようになった時点で、消失訂正符号は大容量データを保護できる唯一の技術になりました。あなたが大容量ドライブをアレイで使っていたら、RAIDの復旧には数週間かかることでしょう。消失訂正符号ならば、数時間ですみます。」Crumpはこう語る。

消失訂正符号は、数式を使ってデータを複数の断片に分け、ストレージアレイ内の異なる場所に一個一個の断片を配置する。その処理を行っている間に冗長化データ・コンポーネントが付け加えられ、オリジナルのデータが破損または消失したとき、それらのコンポーネントの一部がデータの再生に使われる。

消失訂正符号の目的は、従来よりも高速なドライブのリビルドを可能にすることだ。データをコピーし、それを複数のドライブに分散させる処理はRAIDと同様だ。しかし、消失訂正符号はRAIDとは規模とデータの寿命の点で異なる。もしデータが破損または消失した場合、ドライブを復旧するのに必要なのは、数個の「消失した」断片だけだ。この技術によって、複数ドライブに障害が起こってもパフォーマンスの劣化なしにデータの整合性を保つことができる。

現在、Amplidata (HGSTにより買収)、Caringo、IBM Cleversafe 、Scalityなどのオブジェクト・ストレージベンダーにとって消失訂正符号は、この市場でビジネスをしていく上で必須の機能だと考えられている。そこに、ブロック・ストレージベンダーやファイル・ストレージベンダーもこの機能を付加しようとしている。ハイパーコンバージド・アレイベンダーのNutanixは、7月にNutanix Operating Systemのバージョンアップの際、同社独自のEC-Xという消失訂正符号を組み込んでいる。スケールアップ・ベンダーのNexenta Systemsは、5月のバージョンアップの際、NexentaEdgeソフトウェアにブロック・ストレージとオブジェクト・ストレージ両方をサポートする機能を追加している。

消失訂正符号は、膨大な量のデータを保護する拡張性を持っているために、クラウド・ベースのオブジェクト・ストレージのデータ保護にとって、極めて重要な仕組みになっている。これまでのところ、ユーザーがクラウドにデータを移行する使い方は、ほとんどがバックアップ、アクティブ・アーカイビング用に限定されていて、この傾向は今後も増え続けるものと見られる。

「消失訂正符号は、オブジェクト・ストレージシステムにとって理想的なつくりになっています。スケールアウトでマルチノードのストレージ基盤に最適です。消失訂正符号は、RAIDのような単一のストレージシステムに入っているデータ保護のかわりに、ノード間で提供されるデータ保護のやり方なのです。」Crumpはこう語る。

 

(後編につづく)

 

 


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