2015年「ホット」なストレージ技術(後編)


 

フラッシュ・キャッシング

フラッシュストレージはレイテンシを減らしIOPSを向上させる機能を持っているが、半導体のハードウェアだけでは必ずしもその効果は出ない。ここで登場するのがフラッシュキャッシュ・ソフトウェアである。フラッシュキャッシュ・ソフトウェアは、インテリジェンスと管理の自動化を提供し、重要なアプリケーションが高いパフォーマンスのストレージティアで稼動できるようにする。
ホットな技術としてのフラッシュキャッシュの登場は、特にデータセンターにおける取引系および分析系の大規模データベースの導入を伴うアプリケーションの増加と同時期に起こっている。

 

「フラッシュ・キャッシングのベンダーは、システム全体のパフォーマンスを上げながら管理負荷を減らせることをユーザーに実際に見せて支持者を増やしている。自社システムへのフラッシュ導入を先延ばししていた企業が、フラッシュキャッシング・ソフトウェアによって、彼らが心配していた最後の問題が解決されると考え始めています。」カリフォルニア州Los Gatosの調査会社Objective Analysisの半導体アナリストJim Handyはこう語る。

 

2014年フラッシュ・キャッシング市場の一方の旗手は、PernixDataのような過去の技術のしがらみを持たないベンダーで、同社は仮想化環境においてサーバーのRAMをキャッシュ用にプールする機能を提供した。もう一方の旗手はHGSTのような老舗のハードウェアベンダーで、同社はWindows Server OSとLinux OS向けにServerCacheソフトウェアをリリースした。

 

フラッシュキャッシュは、単一サーバー内のHDDと組み合わせる、あるいは、共有サーバー内のコンポーネントとして、または、複数サーバー間を集約して仮想プールを作る、といった使い方ができる。フラッシュキャッシュ・ソフトウェアは、アプリケーションのアクセス履歴からパターンを検出するアルゴリズムを使い、高速化を最も必要としているデータブロックにフラッシュを割り当てるようにする。このソフトウェアの仕組みは、最もアクセス頻度の高いデータコピーを一時的にNANDメモリーチップに保存することによって、実データが流れる帯域を空けながら、迅速にファイルを取り出せるようにするものだ。

 

コネチカット州Stanfordに本社をおくガートナー社は、フラッシュキャッシュ・ソフトウェアの市場は、10%台の複合年間成長率で伸び続け、2019年までに3億5千万ドルを超える可能性があると予測する。
「専用ストレージの高コストが、ソフトウェアベースのフラッシュキャッシュが立ち上がる原動力になった。みんなオーバープロビジョニングにはうんざりしてる。IOPSの要求を満たすためだけにファイバーチャネルのディスクを追加で購入するなんてしたくないんだ。世の中の景気は停滞し売上も足りない中で、ストレージはますます脚光を浴びつつある。特に利益が大幅に下がったサーバーベンダーが注目している。」ガートナー社ストレージ技術戦略部門バイスプレジデント、David Russellはこう語る。

 

全フラッシュアレイが普及に弾みをつけるべく躍起になっている間に、フラッシュ・キャッシングは、特定のアプリケーション作業のパフォーマンスを高速化する暫定的方法として登場した。
「ほとんどの環境で、任意の時間においてアクティブなデータは全体の10%から15%程度です。ユーザーのストレージ容量の10%から15%のフラッシュを買って、適切なタイミングでデータを自動的にキャッシュに書くというのは、非常に経済的なフラッシュの使い方です。」IT調査会社Storage Switzerland社長George Crumpはこう語る。

 

 

ネットワークサーバー・ベースのストレージ

従来の共有ストレージは、今日の仮想化の世界では多くの問題を抱えている。異なるストレージエンティティの管理は煩雑であり、増大するデータに併せてハードウェアを購入しているとITの予算をはみ出してしまうし、VMは処理に見合ったIOPSを取り合いする。ネットワークサーバー・ベースのストレージ技術ならば、これら全ての問題を軽減してくれる。これこそが、2015年にこの技術を検討しようとする企業が増えている理由なのだ。

 

サーバー直付けストレージまたはサーバーSANとも言われるこの技術は、従来の共有ストレージ、アーキテクチャーのコンポーネントをハードウェアから切り離して取り出すソフトウェアを使っている。ストレージはホストサーバーに直付けされているが、ソフトウェアは仮想マシンとして動き、物理容量をプールすることによって、全てのVMがそこにアクセスするようになっている。このことは、高価なハードウェアがもはや必要ない、ということを意味する。汎用のサーバー、ストレージ、ネットワークを使って、要件に見合ったパフォーマンスと容量を確保し、規模もこれまでよりはるかに高い費用効果を実現できるようになったのだ。
とはいえ、サーバーベースのストレージの最大の欠点は、おそらく管理機能だ。従来のSANでは、管理機能はアレイのためだけのものだった。サーバーSANはこれらの機能を抽出して、集約した容量全体に展開している。

 

「大きな流れは、単純化の方へ向かっています。基盤全体を管理に煩わされずにたった一つのプラットフォームで扱える、これが魅力なんです」調査会社Wikibonの首席調査記者Stuart Minimanはこう語る。

 

2013年のレポートでWikibonは、エンタープライズ・サーバーSAN市場の2013年の売上合計は2億7千万ドルだったと述べ、従来の環境からサーバーSANへの急激な移行が2018年から始まると予測している。
現在はっきりしているのは、既存ベンダー新興ベンダー共に、サーバーベースのストレージ製品を作るベンダーが増え続けているということだ。
Minimanによれば、この動きの元をたどるとほとんどがVMwareのハイパーコンバージド製品に行き着くと言う。「VMwareはこの市場(生態系?)の中でかなり重要な位置を占めています。ですから彼らが『このストレージアレイを取り払って、ITを単純にする新しい方法で行こう』と言えば、人々は注目するのです。」

 

VMwareは昨年vSANをリリースした。これは、VMを保存するために物理容量をプールする、待ち望む声の高かったハイパーコンバージドソフトウェアである。

 

「この市場には新興のベンダーがごまんといます。HP、EMC、DellのようにパートナーシップとOEMを通じてこの市場の個々のソリューションをほとんどすべて揃えている大手ベンダーから、Nutanix、Nexenta、Fusion-ioのような若手もいます。」とMinimanは語る。
今年のVMworldにおいて、VMwareはハードウェアベンダーがEVO:RAILに対応できるように、自社のサーバーベースのソフトウェアを拡張した。参照アーキテクチャーによって、ハードウェアパートナーはフォームファクターを構築できるようになるとともに、vSANアーキテクチャーを使って管理とプロビジョニングを行うことができる。

 

 

ハイブリッド・ストレージアレイ

HDDと半導体ドライブ(SSD)を組み合わせたハイブリッド・フラッシュアレイは、今日のエンタープライズにおけるフラッシュストレージとして最も導入数が多く、まだ全フラッシュアレイやサーバーサイドフラッシュをかなり引き離している。
最近のIDCレポートによると、1000人以上の企業の51%がすでにフラッシュを自分のストレージ環境に加えたという。その中の84%は何らかの種類のハイブリッドシステムを導入している。66%が自分の手で組み込むDIYスタイルで既存のアレイにSSDを追加したと言う。また18%は新規にハイブリッドアレイを購入している。
用途に合わせて作られたフラッシュアレイの導入が今年は増えそうだ。土台から設計されたものでも、フラッシュ用に再設計されたものでも、これらのアレイはDIYハイブリッドアレイより高いパフォーマンスと信頼性を提供する。ドライブを従来の回転ディスクとして扱うのではなく、フラッシュの良さを最大限引き出して使えるように設計されているからだ。 今日、全ての大手ベンダーからハイブリッド・フラッシュアレイが出ており、その多くが何種類かの製品を持っている。EMCは拡張可能なハイブリッドのVNXやVMAX製品を様々な容量とパフォーマンスに分けて販売している。同社は、EMC Isilon Solutions for Hadoop Analytics(Hadoop解析用)やEMC Isilon Video Surveillance Solution(ビデオ監視用)など特定の業務に向けたハイブリッド・フラッシュ製品を提供している。システム構成によっては、ハイブリッド製品は全フラッシュ製品よりも安価になる。

 

コスト以外で全フラッシュアレイの制約になっているのが、容量である。最近まで、全フラッシュアレイは、特定のアプリケーション業務を処理するには十分な容量を提供していたが、企業全体の業務を引き受けるにはその容量では足りなかった。この状況は変わりつつあるが、要求水準にはまだほど遠い。高パフォーマンスのフラッシュとハードディスク・ストレージを混在して稼働するハイブリッドシステムでは、当然だが、容量はほとんど問題にならない。例えば、NetAppのFAS8080 EXは最大で、5.76 PBの回転ディスクと36 TBのフラッシュまで拡張できる。

 

ほとんどの企業では、仮想デスクトップ基盤のような、非常に高いパフォーマンスを要求するアプリケーションは1つか2つであり、残りのアプリは既存のディスクドライブにデータをアクセスできれば十分、というのが普通だ。これこそが、今日多くの企業にとってハイブリッドアレイが魅力的な理由だ。フラッシュの価格が下がり、容量が増えてくれば、全フラッシュアレイの導入数がトップになる日がくるかも知れないが、現在はハイブリッドアレイが市場の王者である。

(完)

 

今回記事を担当したTechTarget’s Storage Media Group記者:
Andrew Burton, Rich Castagna, Garry Kranz, Sonia Lelii, Dave Raffo, Carol Sliwa, Sarah Wilson

 

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