2014年「ホット」なストレージ技術(後編)


Rich Castagna, Todd Erickson, Ed Hannan,
Sonia Lelii, Dave Raffo, Carol Sliwa,
Sarah Wilson他ストレージマガジン編集部
Storage Magazine 2013年12月号より

 

 バックアップアプライアンス

 

ここ数年、オールインワンのバックアップアプライアンスに対する関心が高まっており、この製品カテゴリーはデータ保護市場において重要な位置を占めつつある。

ハードウェア、ソフトウェア、メディアサーバーが組み合わさり、「ポンと置いてパッと導入」を目指して作られたオールインワンのバックアップアプライアンスは、二つの重要な利点を提供している。一つ目は初期導入が、使用するバックアップアプリを後からインストールしなければならない製品よりずっと簡単な事。二つ目は、バックアップのソフトウェアもハードウェアも継続してひとつのベンダーからサポートを受けられる事だ。

バックアップベンダーのシマンテックは、同社のBackup ExecとNetBackupを内蔵したアプライアンスでめざましい業績をあげている。Asigra、StorServer、Unitrendsなど他のベンダーからも、組み込み済みの専用バックアップソリューションが販売されている。

「成長により規模が拡大し、バックアップまたはデータ保護用途に、従来持っていた以上の機能が必要な会社にとって、アプライアンスは理に適った選択です。それ以外の会社にとっても、普通ならやらなければならない、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークコンポーネントを組み上げて、自社バックアップサーバーやアプライアンスを構築するかわりに、アプライアンスを利用して同じリソース〔人、時間、お金〕でもっと多くのことをする、という機会が生まれてきます。」ミネソタ州Stillwaterに本社を置くアナリスト会社StorageIOの創設者Greg Schulzはこう語る。

マサチューセッツ州ケンブリッジのForrester Research社シニア・アナリスト、Rachel Dinesは、容量の増大が止まらない現在の状況において、バックアップアプライアンスが重要な役割を果たすだろうと見ている。「今、私たちがバックアップのデータ量で見ているように、二次および三次のストレージは今最も成長が速い分野のひとつで、私たちのデータによると、その速さはファイルストレージ(訳注:プライマリストレージ)以上です。バックアップとアーカイブは、ファイルストレージより速く増加しています。データ爆発に加えて非常に迅速な復旧の必要性のために、企業は迅速かつ簡単に導入でき、管理もシンプルなものを探しているのです」とDinesは語る。
我々は来年、大きく以下の三つの理由により、バックアップアプライアンス市場が引き続き成長するのを目にするだろう。そして、仮想化の王国へとさらに枝を伸ばしていくだろう。

 

遠隔オフィス・支店の市場が急成長

「現在では大企業から小企業まで、官公庁、金融、製造、小売といったあらゆる産業でバックアップアプライアンスが使われており、遠隔オフィスと支店が成長市場になるだろう」、とDinesは語る。

 

ソフトウェア定義のデータセンターがバックアップアプライアンスに影響を与える

来年(2014年)バックアップアプライアンス人気の行く手を阻むものがあるとすれば、「それは、ソフトウェア定義ソリューションの規模と信頼性の進化です」Dinesは語る。「これから出てくる最も大きな製品は、ソフトウェア定義のデータセンターコンセプトに沿ったものかも知れません。2013年、私たちはHP StoreOnceやQuantumから仮想アプライアンスとして、ディスクライブラリが発表されるのを目にしました。2014年には、ハードウェア・ベンダーからもっと多くの仮想アプライアンスが出てくるのを目にする事になるかもしれません。」

 

VM統合が役割を果たす

StorageIOのSchulzはこれに同意し次のように語る。「仮想マシンの統合は、それに対応するアプリケーションの増加と共に、既定路線のロードマップと言えるでしょう。新たにアプリを増やしていくのか、あるいは既存の機能を拡張して、バックアップ、スナップショット、または現在データ保護をしているいずれかの場所から、仮想マシンを高速に復旧する機能などを提供するのか、どちらかになるでしょう。」

 

 

 

 オープンスタック・ストレージ

 

オープンソースのOpenStackストレージは、引き続き注目を集めおており、より多くの商業ベンダーがこの技術を支持し、より多くの代理店からサポート付き製品が購入できるようになり、より多くの事例が実績として輩出されるのに伴って、ユーザー数も増えつつある。

オープンスタックは、オープンソースクラウドOSの一部として、オブジェクトストレージとブロックストレージをサポートしているが、このOSはまた、演算およびネットワーク・リソースのプールを管理することも目的としている。元々Rackspace HostingがこのOpenStackの技術を開発し、NASAと共にオープンソースソフトウェアを保守するコミュニティを創設したのが始まりだ。

コードネームSwiftと名付けられたOpenStackオブジェクトストレージ・プロジェクトには、HP、IBM、Rackspace、Red Hat、SwiftStackなどのベンダーが名を連ねている。HP、IBM、Red Hatは、コードネームCinderと名付けられたOpenStackブロックストレージ・プロジェクトにも関わっており、このプロジェクトには他にIntel、Mirantis、SolidFire、SUSEなどのベンダーが参加している。

OpenStackブロックストレージは永続的なブロックベース・ストレージをプロビジョニングおよび管理するソフトウェアを提供し、ストレージ自体はオンデマンド・サービスで提供する。OpenStack オブジェクトストレージには、数ペタバイトの静的データのストレージをコモディティ(汎用)サーバー上に簡単に用意し、サーバークラスター間のデータレプリケーションを確立する機能がついている。この製品は、バックアップ、アーカイブ、コンテンツ・レポジトリーに最適だ。

サポートがついていないオープンソースのソフトウェアを使うのを躊躇するITユーザーは、以下のベンダーから出ている商用バージョンを選ぶことができる: Canonical、Cloudscaling、HP、Piston Cloud Computing、Rackspace、Red Hat、StackOps、SUSE、SwiftStack。

「OpenStack Swiftは、ダウンロードしてインストールすればすぐ使えるような、導入方法が整ったシステムではありません。」マサチューセッツ州FraminghamにあるInternational Data Corpのストレージシステム・リサーチディレクター、Ashish Nadkamiはこう言う。「まだ非常に新しい技術なので、かなりカストマイズ、プログラミング、チューニングをする必要があります。中にはそれを社内で行うだけのリソースを持っている人達もいますが、残りの人達は商用バージョンを使う事になります。」

OpenStack Blockによって、物理ハードディスクやSSDを、Cinderサーバーノードに内蔵するか直付けすることができる。あるいは、サードパーティによって統合された外部ストレージシステムの一部となることもできる。プラグインはオープンソースのCeph RBDやRed HatのGlusterFSから入手可能だ。また商用システムは、Coraid、EMC、HP、Huawei、IBM、Mellanox、Microsoft(Windows Server2012)、NetApp、Nexenta、Scality、SolidFire、Zadaraから出ている。

「OpenStack Block Storageは、ストレージリリースをプールし、サードパーティのアレイ統合を可能にする抽象化レイヤーを提供する、次世代ハードウェア非依存型ストレージ仮想化技術、とみなすことができます。」とNadkamiは語る。
「OpenStackの中核の原理は、フルサービスのプラットフォームを作成するのにコモディティ(汎用品)のストレージを使うところにあります。OpenStackと一緒に商用のプラットフォームを使い始めたとしたら、何か得るものがあるでしょうか?あまり得るものはないでしょう。」とNadkamiは言う。

 カリフォルニア大学にあるサンディエゴ・スーパーコンピューター・センター(SDSC)は、学内のOpenStack演算リソースとして永続的ブロックストレージを供給する目的で、CinderとCephの調査を行っている。SDSCの技術プロジェクト&サービス・マネージャー、Matthew Kullbergは、このオープンソース技術は、データベースなどのアプリケーションのサポートにおいて、現在のSDSCが使っているブロックストレージより、はるかに大きな柔軟性と拡張性を提供できる、と言う。

SDSCは2011年にテープベースのデータアーカイブを置き換えて以来、プライベート・クラウドストレージ用としてOpenStack Swiftを使っている。当時オブジェクトストレージの選択肢は少なかったが、コストを抑え、単一ベンダーに捕われず、広大で自由にアクセスできる開発コミュニティを利用するためにSDSCはOpenStackを選んだ。現在でもチームは同じ選択をしただろう、とKullbergは言う。
「OpenStackは、SDSCの研究員とこの大学のコミュニティにとっても素晴らしいリソースとして実績を作ってきました。」と彼は語る。

 

 クラウド統合ストレージ

 

クラウド統合ストレージ(CIS)という言葉を、またいつものマーケティング用語として片付けたくなるかもしれないが、それをしてしまうと、エンタープライズ環境におけるクラウドストレージの最適な使用形態を見落とすことになるだろう。現実には、CISはクラウド用語のひとつとして、ハイブリッドモード、階層モード、あるいは他の方法でオンプレミスの容量を可能な限りシームレスに拡張するクラウドストレージを説明する際に使われ始めている。

CISを支える主要な技術も支持を得つつある。ゲートウェイはクラウド・コントローラーへと進化し、データセンターの外にストレージ容量を拡張していく時、中軸の役割を果たしている。ハイブリッドのアプライアンスは多くのデータセンターにおいて標準ツールとなってきた。ソフトウェア定義のストレージアプライアンスとオブジェクトストレージに対する興味も高まりつつある。

「ハイブリッドストレージはより高度な使用形態です。我々は企業がどの部分を自社のインフラとして持ち、アーカイブや災害復旧のポリシーに基づいてどの部分にクラウドを使うかについて話をしています。全てをクラウドの中で運用しているような会社でない限り、クラウドをプライマリストレージとして使っている会社は、それほど多くありません。それらの場合、全アプリケーションもクラウドの中で稼動しています」テキサス州オースティンに本社を置くStorage Strategies Nowのシニア・アナリストJames Bagleyはこう語る。

TwinStrataのCEO、Nicos Vekiaridesは、CISとはクラウドストレージとキャッシュとして使われるローカルストレージとが組み合わされた、ハイブリッドストレージの同義語だと言う。CISはまた、異なるストレージティアにおいて、あるものはローカルに、あるものはクラウドにという使われ方をする事もある。

「このクラウドは、資本コストを一切かけずに第二のデータセンターになれます。オフサイドのデータ保護とデータ復旧用に費用効果の高い方法です。」Vekiaridesは語る。 また、最も一般的な使用形態は、容量の拡張かクラウドベースの災害復旧だ、とも彼は言う。

彼は続けて「我々は年40%から50%の割合でデータが増加している会社と仕事をしています。その全てをローカルストレージに入れるのは無理です。そのデータを(コントローラーに)保存することで、ローカルのコピーもできますし、クラウド内のスナップショットによってデータ保護も行われます。」とVekiaridesは付け加えた。

Storage Strategies NowのBagleyは、CIS用ゲートウェイとなるアプライアンスは必須ではないが、AmazonS3やMicrosoft Azureのような、クラウドと連携するためのアプリケーションの追加は絶対に必要だ、と言う。StorageCraftのように中小企業をターゲットにするベンダーも存在する。同社は顧客のデータを自社のクラウドにバックアップするShadowProtect Cloud Servicesという製品を販売している。

「バックアップやアーカイブ用の機能を持たなくてよいので、アプライアンスはコンパクトになります。」とBagleyは語る。

 

 

 

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