2014年「ホット」なストレージ技術(前編)

Rich Castagna, Todd Erickson, Ed Hannan, Sonia Lelii, Dave Raffo, Carol Sliwa, Sarah Wilson他ストレージマガジン編集部
Storage Magazine 2013年12月号より

 

以下に挙げたのは、2014年あなたのデータセンターにおいて、しかるべき位置を占め影響を与えると思われる6つの技術である。

 

 

次世代半導体ストレージ
プライマリストレージ・データ重複排除
ハイパーコンバージド・ストレージ
バックアップ・アプライアンス
オープンスタック・ストレージ
クラウド統合ストレージ

 

これまでに我々の技術予測を読んだ事のある読者は、事情はお分かりだろう。我々は絵に描いた餅のような実現性のないプロジェクトを、「ホットな」データストレージテクノロジーとして取り上げたりはしない。我々はむしろ、来年あなたの現場に影響を与えると思われる新しい、またはやや新しいストレージ技術に焦点を当てる。
と言いつつも、我々のストレージ予測のいくつかは、つい最近研究室から出てきたばかりのストレージ技術についてのものだ。しかし、これらの技術は直ちに現場の技術として使われるだろうと思えるくらい、光るものを持っている。これはまさに、今日のストレージ技術の特徴である。何年もかけて進化し支持者を増やしてきた技術が、最近になってあっという間にランキングのトップに躍り出て来る。代表的な例が、半導体ストレージの流星のような人気上昇ぶりだ。
実際、今も開発が続けられている半導体ストレージからは、今回の予測において、今まさに飛び立とうとしている2つの技術(不揮発メモリーエクスプレス(NVMe)と、3Dフラッシュ)が取り上げられている。我々の2014年のその他の予測を挙げると、(やっと来た!)プライマリストレージ重複排除の時代到来、ハイパーコンバージド・システム&その他なんでもシステム、プラグアンドプレイ・バックアップアプライアンス、オープンスタック・ストレージの興隆、最後は、クラウドと社内ストレージの境界線を曖昧にするハイブリッドテクノロジーである。

 

 次世代半導体ストレージ

半導体ストレージは業界をまたたく間に席巻した。新興の企業もレガシーシステムのベンダーも、同じように半導体/ディスクベースのハイブリッドシステム、全SSDアレイ、サーバー内蔵型半導体ストレージを販売している。しかし、将来を約束された技術と思われてスタートしたのもつかの間、半導体ストレージの開発途上には様々な障害が現れている。ネットワークの相互運用性についての業界標準の欠如、現在のNANDフラッシュ技術の物理的限界などはその一部である。
80社以上の技術企業からなる業界コンソーシアムのNVMeグループは、ストレージシステムにおけるPCIe半導体デバイスを最適化する業界標準のPCI Express(PCIe)ホストコントローラーを開発中だ。
「この団体は、PCI半導体ストレージアダプター、つまりサーバーに差すカードの事ですね、このカードがどんな風にCPU、アプリケーション、OSと通信するかを標準化しています。」
マサチューセッツ州MilfordのESG Labs副社長Brian Garrettはこう語る。
NVMeの標準が存在しないと、各ベンダーのPCIeアダプター毎に独自のドライバーが必要になり、カードの保守と設定は非常に煩わしいものになってしまう。NVMeの仕様は、ホストコントローラーのインターフェースを標準化し、マルチコア・アーキテクチャー、エンド・ツー・エンド・データプロテクション、暗号化、セキュリティのサポートを提供している。
NVMe1.0の仕様は2011年3月に公表され、1.1の仕様は2012年11月にリリースされた。しかし、Garrettによると、NVMe採用の動きは、標準規格の策定とOEM製品のライフサイクルのために、典型的な業界のパターンに沿っている、と言う。「仕様が決まって機器が使えるようになっても、我々はシステムのOEM側がその機器を採用して、認定し、ソリューションに落とし込み、それらがきちんと動くようになるまで待たなければなりません。」と彼は言う。
Durhamのニューハンプシャー大学相互運用性研究所では、相互運用試験に合格した機器とプラットフォームのリストをwebに掲載している。そのリストには、PMC-Sierra Inc.のNVMeコントローラー、SamsungのXS1715NVMe PCIe SSD、Western Digital Technologies Inc.のPCIe NVMe SSDなどが含まれている。2014年にはさらに多くのNVMe互換機器が市場に出てくるものと考えられる。
チップベンダーとストレージデバイスベンダーは、障碍となっている物理的制約や、フラッシュの二次元ダイサイズ(半導体本体面積)が小さくなる事による不利を克服すべく、3Dフラッシュメモリー・バーティカルスタッキング技術を開発中だ。セル間の干渉のために、ダイが小さくなればなるほど、フラッシュのパフォーマンスと信頼性は下がる。
最近、3D垂直構造NAND(V-NAND)フラッシュメモリーの大量生産開始をアナウンスしたサムスン電子工業は、3Dスタッキングに期待しているのは、セルを積層する事によって、現行の処理に比べ、パフォーマンスは2倍に、信頼性は10倍になる事だ、と言う。
「ストレージ級のメモリーをより広いカテゴリーで見ると、3D NANDは進化の過程における次の段階です。それがまさに起ころうとしています。」Garrettはこう語る。
3Dフラッシュ・スタッキングを利用した機器はNVMe対応の機器ほど早くは入手できないだろう。その技術がまだNVMeほど進んでいないからだ。Garrettは、3Dスタッキング機器は2014年に登場し、2015年になってより多くの製品が市場に出回るだろうと予測する。しかし、フラッシュのメーカーが予想より早く物理的な「高密度化の壁」にあたれば、3Dスタッキングの開発は加速するだろう、と言う。
3Dスタッキングの進捗を早めるもうひとつの要素は、コンシューマー機器もこの技術の恩恵を受けるだろう、という点だ。エンタープライズ機器のメーカーだけがこの技術の開発にリソースを投入している訳ではないのだ。

 

 プライマリストレージ・データ重複排除

データ重複排除がバックアップ製品にとって必須の機能となって以来、ストレージ管理者達は、いつになったらこの技術がプライマリストレージに適用されるのだろう、と考えてきた。
しかし、重複排除を既存のプライマリストレージシステムに入れるのは、バックアップ側に入れるのよりもはるかに難しい事だった。
10年程が過ぎ、プライマリ重複排除の準備が整った。そう、我々は2011年のホットなストレージ技術において、勇み足でこの技術を挙げたのだった。しかし2014年、ついにこの技術に時が巡ってきた。いくつかのストレージ動向を見れば、プライマリ重複排除が一般的な機能になるだろう事は明らかだ。
半導体ストレージの興隆は、これらの動向の一つだ。重複排除は、高価なSSDの使用可能容量の拡張に役立つ。さらにSSDは高速なので、インライン重複排除が本番環境でも充分に機能する。クラウドは重複排除を加速するもうひとつの要因だ。データをパブリッククラウドに効率よく移動するには、データを小さくしなければならないからだ。仮想化も重複排除の推進に一役かっている。仮想マシン(VM)は冗長度が高く、重複排除もその分有効だからだ。
2013年、我々は大手ベンダーがプライマリ重複排除製品をリリースするのを目にした。Dellは2010年、同社がOcarina Networksから買収した技術を、Compellentストレージアレイと連携させるのについに成功した。日立データシステムズ(HDS)は、PermabitのOEM供給による重複排除コードをHitachi NAS(HNAS)に追加した。また、EMCは全面改訂したVNXユニファイド・ストレージ・プラットフォームに固定長ブロックの後処理型プライマリ重複排除機能を加えた。
今やユーザーは、ストレージ購入時、プライマリ重複排除機能付きの製品を探すようになっている。
法律事務所Hedrick Gardner Kincheloe & Galofao LLPのITマネージャー、Jeremy DeHartは、彼がTegile Zebiハイブリッド半導体ストレージアレイを購入する際、重複排除の実装は製品決定における重要な位置を占めていた、と言う。DeHartの会社は、ノースカロライナ州シャーロットにある本社と同州の別な場所にある事務所との間で、2つの同型のストレージアレイをレプリケートしている。重複排除機能が実装されているために、使用可能容量は増え、レプリケーション処理も早くなっている。
「重複排除とレプリケーションは我々にとって、ストレージ半導体が内蔵されているかどうかと同じ位、非常に重要でした。我々のシステムは全てが仮想化されているので、重複排除は必須の機能でした。この機能によって、レプリケートの処理もずっと速くなりますから」DeHartはこう語る。

 

 

サウスカロライナ州、Beaufort記念病院のCIO(最高情報責任者)でEMCユーザーのEd Ricksは、重複排除と半導体ストレージが組み合わさった事によって、新しいVNXアレイはより魅力的なものになったと語る。
「すごく興味を惹かれます。半導体内蔵だけでなく、重複排除も入ってるんですから。エントリーレベルの7TBモデルを買っても、実際は25TBから35TB位の使い勝手があるかも知れません。おまけに、半導体のスピードですからね。」とEdは語る。
プライマリの重複排除が今まさにブレイクしようとしている理由は、この機能が、半導体ストレージ、クラウドゲートウェイ、売上No.1のストレージアレイのOSと共に、通常の場合無料で入っている点にある。
マサチューセッツ州、Hopkintonに本社を置くTaneja Groupのコンサルティング・アナリスト、Arun Tanejaは、「重複排除は今や主流の機能であり、それに相応しい扱い方をしなければなりません。今さら20世紀の技術にもどる訳にはいきませんよね。」と語る。

 

 ハイパーコンバージド・ストレージ

ストレージの複雑さとその管理が、仮想化サーバー環境の管理者を悩ます二大課題である事は、誰の目にも明らかだろう。既存ストレージに対するユーザーの不満がつのるにつれ、仮想マシン専用に作られたストレージへの関心が高まり、ハイパーコンバージド・ストレージシステムという、ストレージ、ネットワーク、演算能力が一体となったコンバージド・ストレージがさらに進化してハイパーバイザも加わった、オールインワン製品の誕生を促す事になった。
今のところ、ハイパーコンバージド・ストレージを販売しているのは、新興のベンダー数社だけだ。 Nutanix社は 最初にハイパーコンバージド・ストレージ製品、Complete Cluster (現在は、Virtual Computing Platformと呼ばれている)を市場に出した会社だ。 SimpliVity社は昨年OmniCubeをリリースし、 その直後、Scale Computing社はHC3を発売した。一方、VMwareはこの市場に同社のVirtual SAN(vSAN)の切り口から参入を図っている。vSANはまだベータ版だが、ハイパーコンバージド・ストレージへの関心と注目を高めるのに貢献しそうだ。
仮想環境では一般的に、サーバーとストレージを別々に管理しなければならないため、基盤は複雑になりがちで、パフォーマンスを低下させるボトルネックの原因を探すのは厄介になる事が多い。「管理者が実際に現場に行って、何が起こっているかを調べなければならないというのは、非常に難しいケースです。既存のストレージ構成の上に仮想化構成をマッピングしようとするのですが、この2つはお互いの対応付けというのが、どうにもうまくいかないのです。」Taneja GroupのシニアアナリストJeff Bymeはこう説明する。
ハイパーコンバージド・システムはこの問題に2つの方法で対応している。ひとつは管理ポータル経由で直接ストレージをプロビジョニングする方法で、これによってLUNとボリュームのマッピングを行う必要はなくなる。もうひとつは、全てのコンポーネントを同一環境に置く事により、管理はひとつのスクリーンで行い、問題の究明もスムーズに行える。
簡易化された基盤と管理は、中小企業におけるハイパーコンバージド・オプションの人気の原動力になっている。例えば、SimpliVity社のOmniCubeには、サーバー、ソフトウェア、ハードディスク、SSDが全部ついてくる。その上、容量を増やすのは追加のユニットを入れるだけの簡単なものだ。また、VMwareのvSANでは、ハイパーバイザの中にストレージ管理機能が組み込まれており、ユーザーは、既存のハードディスクとSSDからストレージプールを作れるようになっている。
ハイパーコンバージド製品のひとつの欠点は、対応しているハイパーバイザの種類が少ない事だ。VMwareがもっとも普及しているハイパーバイザだという理由で、ハイパーコンバージド・ベンダーが製品化の最初の仮想化プラットフォームとしてVMwareを選ぶのはもっともである。
Nutanix、Scale Computing、SimpliVityの3社のベンダーは、全てVMwareをサポートしており、Nutanix と Scale Computingは、オープンソースのKVMプラットフォームもサポートしている。だが、業界のアナリストによれば、ハイパーコンバージド・システムが普及するには、もっと多くのハイパーバイザへの対応が必要だと言う。
「複数のハイパーバイザを使っている会社の方が、そうでないところより多いので、(VMware以外のサポートは)今後のハイパーコンバージド・システムの発展のために は非常に重要なものになってくるでしょう」ESGのシニアアナリストTerri McClureはこう語る。
前述の3社のベンダーは皆、彼らの製品の次期バージョンで、対応するハイパーバイザの種類を増やす事への関心は示しているものの、具体的な時期は明らかになっていない。

 

後編に続く