2013年のホットなストレージ技術(後編)

著者:Andrew Burton, Rich Castagna, Todd Erickson,
John Hilliard, Sonia Lelii, Dave Raffo , Carol Sliwa
Storage Magazine 2012年12月号より

スナップショットを利用したバックアップ

ストレージアレイ・ベースのスナップショットとバックアップ・ソフトウェアの連携によって、ユーザーはスナップショットをバックアップ処理の一部として管理できるようになった。歴史的に、ストレージアレイ・ベースのスナップショットは、そのストレージアレイ・ベンダーが販売する管理ソフトウェアに依存してきた。そのため、ユーザーはスナップショット・ソフトウェアをバックアップ・ソフトウェアとは別に管理せざるを得なかった。2012年にこの状況は変わった。多くのバックアップ・ソフトウェア・ベンダーがアレイ・ベースのスナップショットとの連携を発表したのだ。

「アレイ・ベースのスナップショットの制御とログ管理機能を追加した、バックアップとリカバリーのパッケージが続々と出ています。さらに、いくつかの製品はスナップショットから個々のファイルやオブジェクトを復旧することができます。このことは、スナップショットが初めて、本当にデータ保護戦略に組み込まれたという事を意味します。」Forrester Researchのアナリスト、Rachel Dinesはこう語る。

ミネソタ州Stillwaterに本社を置くStrageIOの創設者兼アナリストのGreg Schulzによれば、この流れは、ユーザーがこれまで二つの技術を別々に使う事によって抱えていた問題を解決してくれる、という。
「スナップショットの課題は、保護しているデータの管理方法でした。これは従来のバックアップツールが得意な部分です。一方で、既存のバックアップの課題は、データをキャプチャまたは収集して、それをどこかにコピーするのにかかる時間とリソースでした」Schulzはこう語る。

Forrester ResearchのDinesは、バックアップを決められた時間内に終わらせる事と復旧をより早く行う事、何年にもわたり増大し続ける問題としてITのプロ達が挙げてきたこの二つの課題を、スナップショット・バックアップは解決する、と言う。「スナップショット・バックアップは、取ったものをバックアップとして使えるので、実質的にほとんどバックアップ・ウィンドウを不要にしてしまいます。また、スナップショット・バックアップは、迅速にマウントが出来て、ほぼ一瞬で使えるので、従来のバックアップで復旧するよりはるかに高速です。」Dinesはこう語る。

スナップショットをデータ保護戦略の一部として使う、という考え方は別に新しいものではない。多くのITの現場が、通常のバックアップを行うかたわら、高速復旧の手段としてアレイ・ベースのスナップショットを使ってきた。しかし、スナップショットとバックアップの統合によって、ユーザーは一連の流れ作業としてこのデータ保護戦略を実行できるようになった。

「2012年と2013年は、スナップ・バック(スナップショット+バックアップ)にとって重要な年になるでしょう。なぜなら、いくつかのベンダーにとってこの技術はすぐに製品に組み込める状態にあり、また、先行ユーザーは製品が成熟してきたのを自分の目で見ています。データ保護における問題を見つけ出し、解決するための改善策のひとつとしては、パンクしたタイヤを交換するようにバックアップのメディアを交換する事よりも、スナップ・バックをバックアップに使う事を、考え直す時機に来ているのではないでしょうか。」Dinesは語る。

StorageIOのSchulzは、スナップショットによるバックアップが、データ保護改善の重要なステップであることに同意しつつ、「スナップショット・バックアップは、ユーザーがいかに、いつ、どの情報を保護すべきなのかを再考させる機会を作ったという意味で、ホットだし、またホットでなければならない技術です。」と語る。さらに、スナップショット技術とバックアップアップ・ソフトウェアの管理能力の結婚について、彼は、「お互いの技術の最善の部分を利用した技術集合の完璧なお手本です」と続けた。

 

サーバーベースのフラッシュ・キャッシュ

サーバーベースのフラッシュ・キャッシュは、EMCのVFCacheのリリースによって、ストレージの世界で一躍ホットな話題となった。また、パフォーマンス増強の技術は、Dell Inc.、NetApp Inc.、などの他大手ベンダーが同様の製品を発表したことにより、弾みがついた。

大手ベンダーがサーバーベースのフラッシュ・キャッシュを推進し始めた事は、この市場の価値をいち早く主張した先行者達の正しさを実証する事になった。仮想環境用ソフトウェアio-Turbine、物理サーバー用ソフトウェアdirectCacheを販売するFusion-io Inc.、LSI Corp.、OCZ Technology Group Inc.、SanDisk Corp、VeloBit Incなどがそれである。

「(サーバーベースのフラッシュ・キャッシュは)現在でもすでに人気がありますが、サーバーへの追加が比較的簡単なので、これからますます人気が出るでしょう。アプリケーションの変更やバックエンドのストレージシステムの変更が要らないのに、ストレージパフォーマンスはグンと上がりますからね。」コロラド州ArvadaのDemartek LLC社長、Dennis Martinはこう語る。

キャッシュを外部のストレージに置かずにアプリケーション・サーバー内に置くことで、ネットワークホップによる遅延を減らす事ができる。さらに遅延を最小化するために、SAS/SATAベースのSSDを使わずにCPUとシステムメモリーに直結しているPCI Express(PCIe)をサーバーベースのフラッシュメモリーとして使用することも多い。キャッシング・ソフトウェアは一般的に最もアクセス頻度の高いデータを特定し、自動的にデータの複製をフラッシュ・キャッシュに移動する。アルゴリズムはベンダーによって異なるが、リードキャッシュが最適なパフォーマンスを実現するには、通常一定のウォームアップ期間を必要とする。

 

 

例えば、EMCのVFCacheが自分のキャッシュにOracleデータベースからのデータをためるのには、30分から60分の時間を要する。最初のデータ書き込みはアプリケーション・サーバーからストレージアレイに行き、PCIeカードのフラッシュには、アプリケーションのスピードダウンを避けるために、非同期でデータが書き込まれる。サーバーにインストールされたI/Oフィルター・ドライバーソフトウェアは、アプリケーションからのデータ要求を、PCIeカードにあるデータで満たせるか否かを判断する。

もうひとつのサーバーベース・フラッシュキャッシュとして、DellのFluid Cache(2013年リリース予定)のような複雑な処理を行うタイプは、読み込み、書き込みの両方を高速化することを目指している。リード/ライト・キャッシュは、リードオンリー・キャッシュに比べて、ベンダーにとっては開発の負担が大きい。キャッシュの書き込みは、最終書き込み先であるストレージへの書き込みの前に発生し、そのデータをソフトウェアで保護してやらなければならないからだ、とMartinは言う。

サーバーベースのキャッシュに関する重要な問題のひとつが、サードパーティのストレージとどの程度連携するか、という事だ。例えば、VFCacheは技術的にはあらゆるサーバー、外部ストレージと連携できるはずだが、EMCはキャッシュが自社のストレージ管理やFully Automated Storage Tiering(FAST)テクノロジーと密接に連携していく計画を披瀝した。業界のアナリストは、ほとんどのサーバーベースのフラッシュキャッシュ・ソフトウェアは、同じベンダーのストレージを共に使う時、最大限に能力を発揮し、最先端の機能を享受できる形で提供されるだろうと予測している。

 

仮想化環境用ストレージシステム

サーバーの仮想化は、企業によるネットワークストレージの採用を促進し、ストレージベンダーがストレージの設置や管理の方法を変える後押しになっている。この傾向は、より多くの仮想化サーバーがデータセンターに浸透するにつれ、さらに加速しており、仮想化の動きはデスクトップにまで拡がり、VMware社はサーバー管理者にストレージに関して更なる権限を与えるようになった。

大手ストレージベンダーは、ストレージの機能を連携させるためにかっつてなかった程緊密にVMwareと協業するようになり、新興ベンダーは、vCenterからの設定で簡単に設置や管理が行えるようにストレージシステムを開発している。さらに、統合型スタックは、仮想マシン(VM)とストレージのより良い連携を促すためにウィンドウを頻繁にポップアップしてくる状況だ。

ストレージの管理は、かっつてなかった程、仮想サーバーとサーバー管理者によって共有されている。VMwareはこの動きを仮想ストレージアプライアンス(VSA)と将来の機能であるvFlash、vSAN、vVolsによってさらに加速しようとしている。

ほとんど全てのストレージベンダーが、サーバー仮想化の影響により、従来の製品の販売方法や管理方法を変化させてきた。大手のストレージベンダーは、vStorage APls for Array Integration(VAAI)をサポートし、LUN、RAIDグループ、マウントポイントなしでストレージを配備する方法を開発中だ。さらに大手ベンダーは、データ保存、演算処理、ネットワーク処理、サーバー仮想化を組み合わせてユーザーがVM用ストレージ管理をより簡単に行える参照アーキテクチャー、統合スタックの製品も持っている。

新興企業であるNutanix Inc.、Scale Computing、SimpliVity Corp.は、「ハイパー・コンパージド(超統合)」と彼らが呼ぶ、容量、演算機能、インストール済みのVMがひとつの筐体に入ったシステムを販売している。Tagile systems Inc.、Tinitri Inc.、など別の新興企業は、VMのサポート専用のストレージシステムを設計した。

もうひとつのホットなストレージ技術、半導体ストレージの導入は、主にVDIのストレージパフォーマンス向上の必要性によって勢いが増してきた。ストレージパフォーマンスは、これまでVDI導入における最大の障害になってきた。しかし企業はSSDを内蔵した仮想デスクトップ専用のストレージアレイによって、この問題を回避しようとしている。

VSA技術は特に新しいものではなく、DataCore Software、Hewlett-Packard社の LeftHand、他数社が同様の製品を販売し始めてから数年が経っている。しかし、最近のVMwareがVSAを推進する動きについては、企業の注目を集めそうだ。VSAはオンボードのRAIDコントローラーに接続するためにホストの中の仮想マシンを使い、接続されたストレージをiSCSIやNASを経由して他のホストも使えるようにする。

VM用ストレージを管理する必要性は、業界に新しい流行語をもたらした。 「Software-defined Storage(ソフトウェア定義のストレージ)」Software-defined Networkをまねた、ソフトウェアが定義する新しい用語である。 Software-definedストレージは、まだ定義についての合意が取れていないが、ベンダーがいかに仮想マシンと密接に連携しているかを説明するために、今後一般的に使われるものと思われる。

 

クラウドベースのファイル共有と同期サービス

ファイル共有と同期のサービスは、現時点ですでに30ものベンダーが製品を出している程の勢いで、急速に成長している。クラウドベースのファイル共有を勢い付けている背後には、スマートフォンやタブレットなどの携帯機器に依存するモバイル・ワーカーの存在がある。モバイル・ワーカー達は、あらゆる時間にあらゆる場所から、モバイル機器を使ってデスクトップやラップトップに保存したドキュメントにアクセスし連携したいと思っている。

Box、CitrixのShare File、Dropbox、Egnyte Inc.、Nomadix Inc.、SugerSync Inc.、 Syncplicity Inc.、YouSendit Inc.が、モバイル機器がデスクトップ、ラップトップに即座にアクセスし、連携するためのクラウドベースのアプリを提供している先駆的な会社である。

この市場を目指して、新たな企業の参入が続いている。新興のMaginatics Inc.は、これまで極秘裏に開発していたMagFSというオンライン・ファイル共有プラットフォームを、最近になって発表した。この製品は、分散ファイルシステムとクラウドストレージを使ってユーザーが様々なエンドポイント・デバイスから共有の名前空間のデータにアクセスできる、というものだ。Nasumi Corp.とScalityは、クラウドをベースとしたモバイルアクセス用のより大きなプラットフォームの一部として、製品を提供している最近のベンダーのなかの2社である。

最初にクラウドのファイル共有/動機サービスに興味を示したのは中小の会社だったが、今では大手企業の層にもこのサービスは浸透し始めている。Egnyte CEO、Vineet Jainは、大手企業からクラウド共有についての興味が寄せられている現実を受け、同期機能とサポートユーザー数を増強したEgnytePlusエンタープライズ版のリリースを早める、と語っている。
「我々はだんだんと大手の企業の方へと引き寄せられています。」Jainはこう語る。

ほとんどのクラウドの導入と同じように、オンライン・ファイル共有には3つの方式がある。パブリック型、プライベート型、ハイブリッド型である。ファイル共有のベンダーが販売しているパブリック型は、プロバイダーが全てのサービスについて全責任を持つパブリック型のオプションである。プライベート型は、ユーザーがセキュリティ確保のためにファイアウォールの後ろに自社のハードウェアを設置するソフトウェア・ライセンス(プライベート型)オプションだ。ハイブリッド型は、パブリックのクラウドファイル共有サービスと自社のファイル共有を組み合わせたものだ。

そもそも多くの企業は、従業員によるスマートフォンやタブレットからの遠隔ファイルアクセスを可能にするためだけの目的でクラウドファイル共有に興味を持ったのだが、IT管理者達は、自社のファイルサーバーがこれのサービスによって撤去できるという、もうひとつのメリットを見いだしている。さらには、仮想プライベートネットワーク(VPN)のコストと、地理的に離れたところにいる社員を管理していくという難題も軽減される。

モバイル機器が、従業員同士の仕事の仕方やドキュメントへのアクセス方法を変化させているのは明かであり、企業は今や、この変化への適応を迫られている。「従来のファイル共有のやり方はモバイルネットワーカーには通用しません。」マサチューセッツ州Milfordに本社を置くEnterprise Strategy GroupのシニアアナリストTerri McClureはこう語った。

 

 

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