今、スケーラブルNASがホット(後半)

著者:Jacob N. Gsoedl
Storage Magazine2012年11月号より

 

NASのアクセス性

NASシステムは、空間としてはデータセンター、アクセス方法としてはNFSかCIFSのファイルプロトコル、という枠の中に閉じ込められてきた。クラウドコンピューティングとモバイル機器の急速な普及によって、NASストレージ上のファイルに対する接続制限は邪魔なものになってきた。スマートフォン、タブレットと従来のコンピューター機器間において共通のデータを持つ目的で、賢いユーザーはDropboxのようなサービスを利用するようになった。しかしこの事は、会社のセキュリティのかかったNASファイルからファイルを取り出して、自分のラップトップやデスクトップに置き、自分の持っている他の全ての機器と同期させる、という事を意味している。USBメモリースティックによるセキュリティリスクを緩和するために戦ってきた企業のIT部門にとって、Dropboxのような新しいクラウドサービスは、企業のデータの信用性を脅かす、突然降って湧いた、新たなそしてより深刻な脅威である。

既存のストレージシステムが、モバイルクライアントに、簡単かつ安全なアクセスを効率よく提供する、という新たな要件に対応するには時間がかかるだろう。そうは言いながらも、モバイルクライアントが爆発的増加を続ける状況において、モバイル接続のオプションが次世代NASのきわめて重要な機能であることは明らかだ。「次世代NASは、あらゆる種類のユーザーおよびコンシューマーデバイスとデータを共有する機能を提供しなければなりません。」マサチューセッツ州Milfordに本社を置くEnterprise Strategy Group (ESG)のシニアアナリスト、Terry McClureはこう語る。新規の要件が出現すると、まず新興のベンダーが製品を開発し、ずっと後になって大手ストレージベンダーが対応する、というのが通常のパターンだ。Maginatics Inc.のような新興ベンターは、幅広いエンドポイント・デバイスに対応した製品を販売しはじめた。

 

 

アクセス性のもう一つの側面は、NASシステムのアプリケーションや他のシステムとの連携能力である。NASとクラウドストレージの境界線が消えつつあり、次世代NASシステムが実際に多くの既存ストレージクラウドの推進役になっている現在、次世代NASシステムは、自分ひとりで存在していた閉鎖的なシステムから自己を解き放ち、標準のプロトコルを使って他のシステムやアプリケーションと会話し、多様なアプリケーション連携のオプションが提供できる、オープンなシステムに変身していかなければならない。言い換えれば、NASシステムはどちらかと言うとオブジェクトストアのようなものになる必要がある、という事だ。まず、次世代NASはクラウドプロトコル、その中でもHTTPベースの連携を可能にするRESTに対応することが最も重要である。現在、我々は複数のNASベンダーがRESTインターフェースの対応を始めたのを目のあたりにしている。この他に、NASシステムは、アプリケーションがファイルやオブジェクトにユーザー独自の情報を付けられるように、既存のファイルシステムのメタデータの枠を超えたメタデータをサポートする必要がある。この機能はクラウドアプリケーションにとって今後ますます重要になってくるものだ。

 

NASの管理性

ぺタバイト単位のファイル保存が、次第に普通のことになり、NASシステムがクラウドストレージとして使われている現在、管理性は次世代NASシステムにとって重要な機能である。最初に言っておかなければならないのは、NASの管理者数の増加はNASの容量の増加に比べて、はるかにゆるやかだ、という事だ。前章で、今後10年でファイル数が75倍、情報量が50 倍に増加する。という記事を引用したが、IDCはこれを管理するITプロフェッショナルの数は1.5倍ですむだろうと予測している。

全ストレージが、単一の管理画面から管理できる、単一のスケールアウト・システムが不可欠になるだろう。
リアルタイムのステータスと基準値を提供することにより、監視だけでなく適宜必要な対応が可能になるストレージ分析は必須である。
ポリシーに基づいたイベント監視やデータ解析によって動く自動化は、今後ますます重要になるだろう。
同時に発生した複数エラーにも耐えうる高可用性と自己修復機能は互いに連携しながら成長していくだろう。

 

次世代NASシステムがよりオープンになり、ストレージクラウドに自らの活路を見いだしていく動きの中で、セキュリティはこれまで以上に重要な役割を帯びるようになるだろう。同一NAS上の異なるテナントの情報を安全に分離・分割する堅牢なマルチテナンシー機能は、あればそれなりに便利な機能から必須の機能になりつつある。現在、データはNAS上に暗号化されずに保存されているが、暗号化が今後必須の機能になるのは当然の流れといえるだろう。特に暗号化機能が要求されるのは、NAS上の情報にモバイルクライアントが直接アクセスしてくるケースと、NASシステムがクラウドストレージとして使われるケースだ。NAS上に存在する情報の重要度と機密度に応じて、異なるレベルの保護を供給する目的で、情報の内容を識別しカテゴリー別に分類するセキュリティツールは、今後極めて重要になるだろう。そして、既存のセキュリティ保護デバイスやオンライン詐欺防止システムも、このテナントのセキュリティ情報を利用しなければならなくなるだろう。

 

NASの進化

加速する非構造化データの増加、継続するIT仮想化の流れ、モバイルクライアントやクラウドコンピューティングからの新しい要求に対応するためのファイルサービスの拡張、これらが次世代NASに新機能を持たせる原動力になっている。ITの視点から見れば、最小の管理人員でコスト効率良く拡張できる機能が、次世代NASに対する要求事項のトップに来るべきものかも知れないが、エンドユーザーにとっては、自分の持っている全てのコンピューター機器や通信機器、さらにクラウドサービスとのシームレスな連携こそが最も重要なポイントである。その地点に至るためには、NASシステムは拡張性、アクセス性、管理性において、一つ上の段階へと進化しなければならない。増加する仮想化、モバイル、クラウドコンピューティングを抱えるITの世界が今、次世代NASに熱い期待を寄せている。

 

著者略歴:Jacob Gsoedlはフリーのライター兼業務システム部門取締役。

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