ストレージ効率の改善(後半)

著者:Jacob N. Gsoedl
Storage Magazine2012年8月号より

 

半導体ストレージ

半導体ストレージの登場が、ストレージシステムベンダーにとって、パフォーマンスと容量双方を最適化する、まったく新しい一連の選択肢をもたらす、破壊的(ディスラプティブ)な出来事であった事は疑いの余地がない。ディスクドライブに比べてレイテンシは一つ小さな単位(マイクロセカンド vs. ミリセカンド)、IOPSは数桁上(1万を超える値 vs. 数百)を行く。半導体ディスク(多くの場合、ハードディスクと半導体ディスクの組み合わせとして提供される)は、ストレージ管理者が高いストレージパフォーマンスを達成するためにこれまで行ってきた、大量のディスクを横断してデータを展開する方法に対する、コスト効率の良い代替手段を提供している。ハイパーバイザなど、大量のランダム・リードが発生するアプリケーションに最も適している半導体ストレージは、大きなブロックや大きなファイルのシークエンシャル・アクセスはあまり得意でない。「半導体ストレージはいまだにハイエンドのディスクより一桁高いので、これを賢く使う事と最適な業務を行わせる事が大事です」EMCユミファイド・マネージメント&マーケティングのシニアバイスプレジデント、Eric Herzogはこう語る。

 

今日、半導体ストレージの使い方としては次の3つの方法がある。

 

機械式ディスクの代替としての半導体ディスク

ディスクをSSDに交換するのは、ストレージのパフォーマンスを向上させる最もシンプルな方法である。この方法を用いて最適化するとき、極めて重要なのは、ストレージに対するSSDの影響をストレージ・ベンダーに確認し、彼らのガイドラインに耳を傾ける事である。もしストレージシステムのプロセッサーが、半導体ストレージの高いパフォーマンスをサポートしていなければ、SSDはストレージシステムを大混乱に陥れるかもしれない。SSDの性能がストレージのコントローラーを上回っていれば、それまで悪かったパフォーマンスはなおさら、それも急激に悪化する。もうひとつのポイントは、データが半導体ドライブにいつ、どのように移動して、いつどのように他へと移動していくか、という事に関連している。これに対応する、もっともシンプル、とはいえ決して好ましいとは言えないやり方は、データベースのログファイルのような特定のアプリケーションのファイルを、手動でSSDに割り当てる事だ。古いストレージでは、この方法しか無いかもしれないが、EMCの Fully Automated Storage tiering (FAST)のような、より自動化された仕組みを使う事が望ましい。

 

半導体ディスクをストレージシステムのキャッシュとして使う

比較的小さいDRAMキャッシュを拡張するために半導体ストレージを用いるのは、ディスクドライブをSSDドライブに換えるのに比べて、多くの困難を避けて通る事ができる方法だ。半導体ストレージのキャッシュは、ストレージシステム・アーキテクチャーの一部であるため、ストレージ・コントローラーは、ストレージ・アレイが許容している容量分の半導体ストレージには対応するように設計されている。半導体ストレージをキャッシュとして使う事によって、ティアリングの問題も解決する事ができる。もともと、キャッシュとは常に、最もアクティブなデータを置いておく場所であり、不活発なデータは機械式のディスクに置かれるようになっている。半導体ディスクが自分自身の上に置かれたデータにしか利益をもたらさないのに対して、半導体ディスクのキャッシュ(フラッシュキャッシュ)はストレージシステム全体を行き来するデータに利益をもたらす。フラッシュキャッシュの欠点を探し出すのは難しいが、欠点のひとつはこれが新型のストレージのオプションでしか使えない事だ。フラッシュキャッシュで大容量ドライブを補完する方法は、ストレージ構築における常道となりつつある。この方法によって、ストレージは大容量と高パフォーマンスの二つを兼ね備える事ができるからだ。
「ディスク・ベースのストレージに2%から3%のSSDを加える事によって、スループットを2倍にする事ができます」IBMのストレージ・ソフト部門、ビジネスライン・マネージャーのRon Riffeはこう語る。

 

サーバー内蔵半導体ストレージ

データが、サーバー内蔵のメモリーとプロセッサーに近づけば近づく程、ストレージのパフォーマンスは向上する。サーバーの中にFusion-ioのようなPCIeカードを介して半導体ストレージを置く事で、ストレージのパフォーマンスを最適化する事ができる。欠点としては、サーバー内蔵のストレージは、通常共有されずにサーバーに常駐するアプリケーションによってのみ使われるという点、そして非常に高価だ、という点だ。とはいえ、ストレージをサーバーにまで拡張するという試みを、NetAppでは手始めにData ONTAPをハイパーバイザ上で動かす企画として積極的に取り組んでおり、同様にEMCは、これまでProject Lightningとして知られてきたVFCaxheで、これに取り組んでいる。どちらのベンダーの掲げる目標も明白である。それは、彼らの外付けストレージシステムと、シームレスに統合する非常に高いパフォーマンスのサーバー内蔵半導体ストレージを提供するという事だ。

 

ストレージ・アクセラレーション・アプライアンス

ストレージ・アクセラレーション・デバイスは、パフォーマンスを上げるため、あるいは、仮想化のようなストレージのサービスを追加する目的で、サーバーとストレージの間に置かれる。これらの製品の大部分は、既存の異機種ストレージと連携出来るので、ストレージの効率化やパフォーマンスの問題と取り組む時には、評価者の誰かのリストには、このストレージ・アクセラレーション・デバイスが載っていてしかるべきである。それだけではなく、これらの製品が持つ、既存ストレージのパフォーマンスを改善する機能と、既存異機種ストレージを一つのプールに統合する機能によって、ストレージ全体のパフォーマンスを伸ばしつつ、同時にストレージのコストも削減し、既存ストレージの寿命を延ばすという事が可能になる。

 

 

最近リリースされたIBM Smart Cloud Virtual Storage Center は、このカテゴリーにおける典型的な例である。ストレージ仮想化、SAN Volume Controller(SVC)ソフトウェア、ストレージの解析および管理が、この製品ひとつの中にまとめられている。同製品は、異機種の物理ストレージをひとつの仮想ストレージ・プールに集め、このプールを使ってシン・プロビジョニングのボリュームを提供している。また、直付けの半導体ストレージを認識しサポートしているが、自身の内蔵ストレージとして半導体ストレージを追加する事も可能である。同製品は、リアルタイムストレージ解析によって、I/Oの高いデータとホットスポットを特定し、ディスクから半導体ストレージを移動、またその逆方向の移動も自動的に行う。これらの機能によって、SmartCloud Virtual Storage Centerは、既存の異機種ストレージシステムのパフォーマンスと容量使用率を大幅に増大させる事ができる。IBMのSmartCloud Virtual Storage Centerがブロック・ベースなのに対し、AlacritechやAvere Systemsなどからは、ファイルシステム・ベースのアクセラレーション・デバイスが出ている。

 

容量使用率を上げる

ディスク・スペース使用の最大化は、シン・プロビジョニング、シン・クローン、圧縮、データ重複排除などの、シン・テクノロジーを使う事により実現可能だ。これらすべての技術は、既存のデータ・ブロックの参照を最大化しながら、データを重複して保存しない、という共通の目標を持っている。シン・テクノロジーがストレージのパフォーマンスに与える影響は少ないが、重複排除と圧縮はほとんどの場合、パフォーマンスに影響を与える。そのため、パフォーマンスへの影響度が明確に理解され、且つ許容し得る場合にのみ、これらの機能を使うべきである。

 

パフォーマンスと容量

ストレージのパフォーマンスと容量使用率は、背中合わせの関係にあり、往々にして一方を改善すると、一方に悪影響をもたらす事が起こる。実際のストレージの解析やレポートは、ボトルネックの特定やそれらを適切に直す上で必須の情報である。ご多聞に漏れず、ストレージの効率を改善するという事は、パフォーマンス要件とコストのバランスを取る事なのだ。

 

著者略歴:Jacob Gsoedlはフリーのライター兼業務システム部門取締役。

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