10GigEストレージ・ネットを構築する(後編)

著者:Dennis Martin
Storage Magazine2012年7月号より

 

<8月号からの続き>


10Gbps Ethernetが数多く製品化され、市場に登場してきた。そのため、大部分のストレージの現場が1GigEから10GigEにステップアップするのは時間の問題だ。

 

 

10GigEポート

 

10GigEの1GigEに対する優位性のひとつは、10GigEが同じフォームファクターでありながら10倍の帯域を実現していることである。例えば、ホストサーバーにおいて1GigEのNICポートが8個必要な場合、2つのクワッド・ポートか4つのデュアルポート、あるいは8つのシングルポートを持ったNICを使うことで、この要件を満たすことができる。この方法はいくつかの環境では有効かもしれないが、全てのサーバーがそれだけ多くのスロットを持っている訳ではない。あなたは、I/Oスロットのいくつかを他の用途、例えばRAIDコントローラー、ファイバー・チャネル、ホスト・バス・アダプター(HBA)、PCI Express(PCIe)SSDなどに使いたいと考えているかもしれない。10GigEを使う場合、デュアルポート10GigEの1ポートだけで1GigENIC 8個分以上の帯域が提供されるだけでなく、もう一方のポートをフェールオーバーの用途としても管理用としても利用することができる。この場合使われるI/Oスロットは1つだけで、I/Oスロットの空きを作りながら、消費電力もより少なくてすむ可能性がある。また、たいていの場合、必要なケーブルも2本だけだ。別な利用形態として、このデュアルポート10GigE NICを、2つしかスロットのないような1U のサーバーなどの、小さいフォーム・ファクター・サーバーに入れれば、豊富なネットワーク帯域を供給することも可能だ。

 

デュアルポート10GigE NICは、全二重通信において最大限の帯域を確保する為に、PCle 2.0×8スロットを必要とする。また、サーバーのいくつかのデュアルポート10GigE NICはPCIe 1.0×16スロットをサポートしている。シングルポートの10GigE NICはPCIe 1.0×8スロットやPCIe 1.0×4スロットで稼動することができる。デュアルポート10GigE NICにはPCIe 3.0は必要ない。実際、本物のPCIe 3.0イーサネット・アダプターはおそらく2012年後半か2013年にならないと出てこないだろう。

 

 

10GigEアダプター

 

10GigEアダプターを使えば様々な追加機能を利用することができる。数社のアダプター・ベンダーから、TCP/IPオフロード・エンジン(TOE)、iSCSIオフロード、ファイバーチャネル・オーバー・イーサネット(FCoE)、またはこの3つ全てを搭載した、何種類かのアダプターが出ている。これらのアダプターは、いくつかのケースにおいてパフォーマンスを改善することができ、最も多いケースとしては、アダプターにこれらの機能を肩代わりさせるものがあり、それによってホストCPUの使用率を減らしている。

 

TCP/IP、iSCSIオフロード、FCoEを全てサポートしているアダプターは、コンバージド・ネットワーク・アダプターとして知られ、同一のケーブル上に同時に、これらのプロトコルのトラフィックを興味深い配分をして供給している。この機能を利用するには、スイッチ側にデータセンター・ブリッジ(DCB)が必要だ。Demartek Labsでは、この機能をどのように使うのかを、テスト結果と併せて、多くのレポートを出している。パフォーマンスのレポートは、DemartekのウェブサイトFCoE Zoneから入手可能だ。

 

ほとんどのイーサネット・スイッチ・ベンダーが何パターンかのポート数を持った10GigEスイッチを販売しており、何社かは、DCBをサポートしている。これらのスイッチのうちのいくつかは、コネクターの形状が同じであれば、1GigEも10GigEもサポートするポートを持っている。もしあなたのスイッチが、規格に合ったトランシーバーやコネクターを付ければ、両方の速度をサポートするタイプのものであれば、そのスイッチが10GigEへのスムーズな移行を助けてくれるだろう。

 

 

コネクターとケーブル

 

10GigEには、基本的に2つの共通のコネクターとケーブルのタイプが存在する。現在主流なのがSFP+コネクターである。このコネクターは光ファイバー・ケーブルやカッパーケーブルと一緒に使われる。光ファイバー・ケーブルでは、OM3、OM4、OS1が知られている。今日10GigE用マルチ・モード光ファイバーとしてはOM4が推奨されているが、一般的にOM3も最低限の要件を満たすものと考えられている。

 

OS1は、最大10km即ち6.2マイルの距離が非常に長い時に使われる。SFP+コネクターは、距離がラック内または近くのラック間に限定されたケースで、カッパーケーブルと共に使われる。

 

 

 

 

もうひとつ、現在大きな注目を集め始めているのが、10GBASE-Tである。このタイプのケーブルは直接SFP+と互換性がないが、ケーブルにはおなじみのRJ45が使われている。10GBASE-Tで使用を推奨されているのはCat6aまたはCat7ケーブルだが、Cat6でも55メートルまでの距離であれば使用可能だ。アダプター・ベンダーはSFP+、10GBASE-T両方のポートを持った10GigEアダプターを開発中である。大部分の10GigEスイッチがサポートしているのは、SFP+コネクターとトランシーバーだが、10GBASE-Tをサポートする10GigEスイッチもそこそこある。10GBASE-T製品はSFP+製品より数年遅れて出てきたが、10GBASE-Tフォームコネクターは、より速く市場に受け入れられるだろうというのが大方の見方だ。いくつかのスイッチはSFP+ポート、10GBASE-Tポートを持つようになってきた。 10GigEは、使用するサーバーのI/Oスロットもケーブルも少ないにもかかわらず、ネットワークに強烈な「パンチ」を与えることが期待されている。10GigEスイッチは、大量の数の1GigEのポートが10GigEポートに集約されるために、全体の帯域を広げながら、なおかつ、ネットワークをよりすっきりした基盤に統合する機会を提供してくれる。

 

 

著者略歴:Dennis Martinは1980年からIT業界で仕事をしてきた。コンピューター業界アナリスト団体兼テスト・ラボでもあるDemartekの、創立者兼会長である。

 

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